札幌の「湿度」は?年間の傾向や首都圏との比較などを解説

自然・気候

冬は寒く夏は涼しいとされる北海道・札幌。気候という面では、気温の上下や雪の状況などは大きくクローズアップされやすいテーマですが、札幌の「湿度」というテーマは、余り話題に上ることはありません。

こちらでは、手肌のケアやのどの調子などに直結する札幌の「湿度」について、1年間の変化・傾向などを気象観測データに基づいて見ていきたいと思います。

湿度とは何か

空気中に含まれる「水蒸気」の割合

湿度というのは、非常に簡単に言えば、空気(大気)の中に含まれる水蒸気の量を、パーセンテージで表したものです。

これは厳密には「相対湿度」という形で使われる場合がほとんどで、相対湿度が100%だとそれ以上その空気の中には水蒸気が含めない(水滴になってしまう)状況で、100%未満だとまだ空気中に水蒸気を含むことが出来る。そういった意味を持ちます。

水蒸気とは目に見えないものですので、湿度というのは何も100%に近づいたら水で満たされる。とかそういったものではありません。もちろん、雨が降ると空気中の水蒸気量もどんどん増えますので湿度は上がりますが、目に見える雨粒自体が湿度そのものを直接決定している。という訳ではないのが少しややこしい所です。

同じ湿度でも水蒸気量は全く違う?湿度の数字より季節が重要

湿度は、気温の変化や天気の変化、日差しの有無などによっていつも変化しています。また、気温の高さ・低さによって「空気中が含むことが出来る水蒸気の量」は大きく異なります。

熱帯地域で豪雨や台風が発生しやすく、寒い地域では雨が少ないイメージからもなんとなく想像できるかもしれませんが、気温が高い時には空気中には大量の水蒸気が含むことが出来る一方、気温が低いときに含むことが出来る水蒸気の量が少なくなります。

例えば気温0℃で1立方メートルの空気が含むことが出来る水蒸気の量はおよそ4.8g未満。気温30℃で1立方メートルの空気が含むことが出来る水蒸気の量はおよそ30.3g未満。なんと6倍以上もの水蒸気量の差があるのです。

要は、気温30℃の湿度60%と、気温0℃の湿度60%は、空気中に含むことが出来る水蒸気量の「割合」では同じ数字であっても、「実際の水蒸気の量(絶対値)」では天と地の差というくらいの違いがある訳です。

つまり、例えば1年間全体で見た場合、沖縄と北海道(札幌)では、空気中に含まれている水蒸気量は「湿度」に関わらずかなりの差(北海道が少ない)が生じることになります。

季節・月ごとの平均湿度は?

湿度について、全国の主要な都市(気象台)の「月間平均湿度」を一覧にすると以下の通りです。

札幌仙台新潟東京大阪福岡那覇
1月69%66%72%51%61%63%66%
2月68%64%74%52%60%62%69%
3月65%61%68%57%59%63%71%
4月61%63%66%62%58%64%75%
5月65%70%69%68%61%67%78%
6月72%79%74%75%68%75%83%
7月75%83%79%76%70%75%78%
8月75%81%75%74%66%72%78%
9月71%78%73%75%67%73%75%
10月67%72%72%71%65%68%72%
11月67%68%74%64%64%66%69%
12月68%68%74%56%62%63%67%
69%71%72%65%63%68%73%

単純に湿度というデータだけで見れば、札幌は湿度が高くもなく低くもない、中間的な環境であることがわかります。

最も全国的に特徴が出やすいのは冬場の湿度であり、乾いた季節風が吹きつける関東平野で下がりやすく、東京の湿度は12~3月に50%台、天候が安定しやすい大阪も春にかけて50%台の数字が見られます。一方で冬場に晴れ間が少なく雪や雨が多い新潟では高くなりやすくなっています。

札幌は雪の日も多い一方で晴れるタイミングもあるため、冬場の湿度は60%台平均となっています。

夏場については雨の量が増えやすく、海からの湿った気流も入りやすいためどの地域でも比較的上がりやすい傾向で、札幌も70%台平均と、東京などと数字上は大差ありません。

これだけ見ると、札幌はさほど乾燥した場所ではないように見えます。但し、先述したように気温が低ければ水分が空気に含まれる量が減りますので、同じ湿度でも実際の乾燥度合いは大きく異なります。札幌=それほど湿度が低くないということと、札幌=乾燥していないということは、必ずしも全て一致する訳ではない点に注意が必要です。

冬の湿度は?かなり乾燥する札幌の冬

一見すると湿度が東京よりも高いため、さほど乾燥していないように見える札幌の冬。しかしながら、実際のところは冬の札幌はカラカラに乾燥していることが多いと言っても過言ではありません。

先に解説したように、そもそも冬場・気温が低いときには空気中に含むことが出来る水蒸気の量は大幅に減ります。つまり、同じ湿度でも、夏場と冬場では数倍水蒸気の量に違いが出るということになり、肌の表面では水分に触れる量が減ることにもつながるため、肌荒れやのどの調子が悪くなるといった状況が起きやすくなります。

季節ごとの水蒸気量の推移(単位はg/m3・気温及び湿度の平年値から試算)

水蒸気量を概算したグラフを見ると、全ての季節で札幌の平均的な水蒸気量は東京よりも少なくなり、冬場は夏の東京の8分の1くらいの水蒸気量しかありません。

更に、札幌の冬の天気は「雪ばかり」とは限りません。雪が降り続く天気もよくあることですが、少なくともそれと同じくらいに雪が降らない=場合によってはよく晴れる天気になることもあります。

冬に晴れ間が出ると、昼間の場合急速に湿度は下がっていきます。日本海側の冬というと、湿度100%に近いイメージを持たれがちですが、そのような条件は北陸の一部で時折見られる程度で、札幌では湿度50%以下になることも少なくありません。湿度が低い時の水蒸気量はより少なくなり、日本海側・雪国というイメージとは裏腹にかなりの乾燥状態となります。

乾燥しているのは屋外だけではありません。札幌市内の建物は、本州よりも強い暖房を効かせており、室温はむしろ高くなりがち(20度以上)です。空気中に含むことが出来る水蒸気量は気温が上がるほど増えますので、極めて少ない冬の空気の水蒸気量がそのまま室内に持ち込まれると、湿度10%台などもありうる状況です。

もちろん、加湿をしていたり、生活に伴う湿気の排出などもありますので、必ず部屋がカラカラになる訳ではありませんが、冬の札幌では十分な「室内の乾燥対策」を心がける必要があります。

どこのまちでも湿度は下がる?札幌も例外ではない

湿度のデータについて、季節ごとの傾向ではなく札幌の「年間平均湿度」を明治時代以降観測が途切れず行われている期間について見てみると、以下のような状況となります。

気象庁の観測データによる

このグラフから分かるように、ちょうど第二次世界大戦が終わるくらいの時期から、湿度が次第に下がっていく傾向が見られます。2000年以降は大きな変化は見られませんが、年によっては平均湿度が60%台まで下がるなど、戦前のように80%程度~70%台後半のような数字は一切見られなくなりました。

この原因は、非常にシンプルで「都市化」が進んだことが大きな要因です。そのため、札幌に関わらず東京・大阪・名古屋・福岡など規模の大きなまちでは各地でこういった現象がはっきり確認されています。都市化により湿度が下がる要因は大きくは2つ挙げられます。

・都市化で気温が上がることで、空気中に含むことができる水蒸気の量が増え、同じ水蒸気の量でも湿度が下がった形になる。
・都市化で水蒸気を放つ植物などが少なくなり、空気中の水蒸気量そのものが減る。

札幌の場合もこの両者が関係していると考えられますが、とりわけ気温上昇により湿度が下がったように見える。というのが大きな要因と言えるでしょう。札幌の朝の最低気温は、戦前と現在では状況によりますが6~7℃程度の違いが生じています。これほどの気温差があると、空気中に含むことが出来る水蒸気量自体も大きく変わりますので、仮に同じ量の水蒸気であっても、気温が高い方がより多く含める以上、その割合は下がる=湿度が下がる形になります。

札幌の都市化は既に市街地の拡大という意味では完成形といってもよい段階になっており、今後のマンション・高層ビル建設などにより都市化の影響が更に強まるかどうかははっきりしませんが、地球温暖化などの気候変動の影響も考慮すると、今後も観測される湿度が下がっていく傾向は続くかもしれません。

札幌市における「ヒートアイランド現象」については、上記の記事で別途解説しております。