夏の天気と言えば、本州各地、とりわけ北関東や内陸部の山地といった地域では夕方に積乱雲(入道雲)が発達し短時間で豪雨をもたらす「夕立」が一つの風物詩とも言えるほど一般的な存在です。
一方で、北の大地・北海道について見ると、余り「夕立」と言われてもピンと来ない。夕立があるのかよくわからない。という方もいらっしゃるかもしれません。
こちらでは、札幌(北海道)における夕立の有無・周辺との違いといった基本的な状況について解説していきたいと思います。
夕立のメカニズム
北海道のみならず、本州で一般に「夕立」と呼ばれるあの「にわか雨(短時間の豪雨)」は、非常にシンプルに言えば、以下のようなメカニズムで生じます。
段階1 | 晴れて地上付近の空気が熱せられる |
段階2 | 熱くなった空気は、冷たい空気より軽いため地上付近から上空へと上昇を始める |
段階3 | 上空に上がって空気の温度が下がると、空気が持つことが出来る湿気が減り、雲や水の粒が出来始める |
段階4 | 水の粒が増え続け、雨として降り注ぐようになる 雨が降るのと前後して、水や氷の粒がぶつかり合うことで電気が生じ、「雷」を引き起こす |
段階5 | 地上付近が冷やされて雲の発達が止まり、雷や雨が止む |
上記のメカニズムを引き起こす上では、以下のような「夕立を起こしやすい条件」が必要です。
・晴れて地上付近の空気がしっかり暖められること
・比較的湿った空気であること
例えば、カラカラに乾いた猛暑の日には、ほとんど雲は発生せず、夕立は見られないことが一般的です。また、気温がさほど高くない時期には、夕立のような現象が起こることは極めてまれです。
これに加え、
・上空に冷たい空気が流れ込んでいる
状況があると、気温差が大きくなり上昇気流が激しくなりやすく、雨雲はどんどん発達しやすくなります。
また、上昇気流はどこでも起きやすいという訳ではなく、地形による影響がかなり大きくなっています。
・斜面に向かって風が吹くような場所
・吹く風が強制的に向きを変え上昇気流へとなってしまう深い山地(ざっくり言えば山深い場所)
・風向きに面する形で山脈、山地が近くにある平野部
など、「山地(斜面)」の影響を受ける場所=上昇気流を起こしやすくする地形のある場所で、夕立が起きる頻度は一気に上がります。
なお、「夕立」は天気予報でもよく用いられるキーワードですが、必ずしもそういった「気象用語」があるという訳ではありません。上記のメカニズムは、あくまでも「夏の晴れた日の午後に発生するにわか雨・雷雨」の発生原理を示したものです。
北海道全体で見ると「夕立」は起こり得る現象
札幌の議論をする前に、「北海道全体」で見た場合、「夕立」と同じような現象は一般的にあり得る現象です。
夕立と呼ばれる現象は、先述したように「山地・斜面」に関わる地域で生じやすいものです。
すなわち、北海道でも同様の状況が生じることはあります。例えば大雪山地は北海道におけるもっとも大規模な山地ですが、やはり周辺地域では一定数「夕立」と言ってよい現象が生じます。
北海道であっても、夏場は平地で30℃前後の比較的暑い気温になることがあります。また、元より山地は多い地域ですので、山沿いで雷雲が発達し「夕立」を降らせる。これ自体は起こることは極めて自然な話で、特段驚くようなことではありません。
但し、そこまでの高温になりにくいといった状況もありますので、北関東・中国山地・紀伊山地・中部地方の山地・奥羽山脈一帯のような頻度で夕立が見られるかと言えば、平均すればそこまでの多さにはならないかもしれません。
札幌市内での「ザ・夕立」は稀な現象?
一方で、札幌市内だけに目を向けると、とりわけ市街地で夏の典型的な「夕立」に見舞われる頻度は、ほとんどない・あっても極めて少ない頻度と言えます。
札幌周辺には手稲山・札幌岳・空沼岳・余市岳・恵庭岳といった比較的標高の高い山々があり、その一帯では夏の暑い日に稀に雨雲が湧くことがありますが、その頻度は大雪山地方面と比較すると少な目です。また、それが札幌市街地まではっきり「降りてくる」ことは少ない状況です。
但し、次項で解説する通り「夕立」という言葉の持つイメージに縛られ過ぎると、「ゲリラ豪雨」への備えがおそろかになる危険があるため、その点は十分な注意も必要です。
夕立は少なくても「ゲリラ豪雨」は十分あり得る
夏の晴れた日の午後、天気が良かったのに突然にわか雨・雷雨に見舞われる夏の風物詩「夕立」。
この「夕立」という言葉を重視した場合、確かに札幌など北海道の都市部では「夕立」に見舞われる頻度は極めて少ない状況です。
しかしながら、突然豪雨に見舞われたり、激しい雷に見舞われるということは、何も夏の「典型的な夕立」に限られる話ではありません。
・上空に非常に強い寒気が入っている
・南から非常に暖かく湿った空気が流れ込み続けている
こういった理由があれば、ゲリラ的豪雨をもたらす雨雲(雷雲)は真夏の暑い日でなくても、よく晴れた日の午後でなくても発生します。
例えば2014年9月11日は大気の状態が不安定になり、千歳市の特に支笏湖周辺を中心にゲリラ的な豪雨が続き特別警報が発令され、札幌市内でも南区の山間部で土砂災害が発生しています。
また、札幌管区気象台では近年1時間30mmを越える激しい雨が観測される頻度がやや増えており、毎年ではないにせよ短時間の強雨を観測することがありますが、これは必ずしも「夕立」が主な要因という訳ではありません。
夏の午後に晴天から急に雨になる典型的な夕立は少ないですが、それ以外の要因で生じる大雨・豪雨には一定の注意が必要です。
札幌における「大雨」については、上記の記事で別途解説しております。