九州側よりも沖縄側に近く、気候としては「亜熱帯」に含まれる鹿児島県の奄美大島。こちらでは、奄美大島における「雪」という、余り関係のなさそうなテーマについて、過去に雪が降った記録などを含め解説していきます。
奄美大島では、一般的に雪が降ることはまずありませんが、歴史を見ていくと過去に2回(1901年・2016年)雪が降った記録があり、完全に雪と無縁な地域とまでは言い切れません。
降雪記録は1901年・2016年にあり
奄美大島で「雪」に関する観測を実施している場所は、島の中心にあたる名瀬地域にある「名瀬測候所」です。
こちらでは、明治時代の観測開始から現在に至るまで、過去2回(1901年・2016年)のみ「降雪」を観測した記録が残されています。なお、気象庁の決まりでは、「みぞれ」も含め「雪」と観測している一方、氷の粒として降る「あられ」は「雪」には含まれないものとして扱われています。
降雪状況 | 降雪時間合計 | |
---|---|---|
1901年2月12日 | 不明 | 不明 |
2016年1月24日 | 13時13分~13時15分(みぞれ) 13時18分~13時20分(みぞれ) 14時30分~14時32分(みぞれ) 14時32分~14時34分(雪) 15時48分~15時50分(雪) 19時59分~20時01分(雪) 21時54分~21時57分(雪) | 15分 |
2016年1月25日 | 0時26分~0時39分(みぞれ) | 13分 |
2016年1月24日から翌25日にかけては、ほとんどの時間帯で雨、一部あられが降る中で、ごくわずかな時間のみ「みぞれ」または「雪」が観測されました。降雪が持続する時間は大変短く、最も長いタイミングでも13分間、また2日間の合計で28分間のみ「雪(みぞれ)」が降りました。
降り方としては一瞬で、更にみぞれのケースもあったため、外に出てしっかり見ていない限りわからないくらいの「雪」であったことは否定できません。
積雪記録はなし・山地ではうっすら積もった?
気象庁が行う雪の観測は「降雪」したという記録と、「積雪」したという記録に概ね2分されますが、奄美大島では「積雪」したという記録は過去にありません。
1901年の降雪時、2016年の降雪時も、少なくとも名瀬にある観測地点では「積雪」は一切観測されていません。降った時の気温も積もるには程遠い気温であり、積もるような状況に至ることはありませんでした。
一方で、2016年には奄美大島の中でも標高が高い山地では積雪状態が一部で見られ、SNSなどでメディアや一般の方が「雪の画像・映像」を多く発信する形でその「記録」が残る形になりました。
奄美大島の場合標高500m以上の山地もありますので、海沿いで4~5℃程度であれば、山の上では0~1℃程度まで下がっているケースもありますので、わずかに積雪していたとしてもおかしくない環境です。
但し、そこで積もっていたものが純粋な「雪」によるものなのか、それとも氷の粒にあたる「あられ」によるものなのかは、はっきり判断することは出来ません。
奄美大島における降雪・積雪の状況については、例えば上記のような動画を撮影されている方がおられます。
どういったケースで降る?
奄美大島で雪が降るような状況については、どういったケースで降っているかと言えば、過去2回しか観測がないことからも分かる通り、「100年に1度レベルの大寒波」が襲来するような特殊なケースに限られます。
例えば、「数年に1度の寒波」とか「10年に1度の寒波」と呼ばれるようなケースでは、九州各地や鹿児島市内などでも積雪となるケースが見られますが、こういったレベルの寒波では、奄美大島の平地・海沿いでは気温は概ね6~7℃程度までしか下がらず、雨しか観測されません。
仮にみぞれや雪が降ったとしても、特に標高が高い山地の一部に限られますし、山地であっても雨しか降らないケースも多いと言えます。
100年に一度レベルの大寒波となると、沖縄本島の北部や台湾北部の少し標高が高い場所、香港の山地や中国広東省の平地(広州など)でも雪が降るといった特殊なケースにあたります。
奄美大島は、上記のような地域と比べると「北側」にあたりますが、記録的な寒気が入る際には中国大陸方面に回り込むような寒気の流れ込み方となるため、むしろ台湾北部・中国南部の方が奄美大島より寒くなる形になり、そういった意味でも奄美大島の雪は極めて「レア」な事例と言えます。
奄美大島の「雪」【まとめ】
鹿児島県全体における「雪事情」については、上記の記事で別途解説しております。