熊本県・熊本市の「雪事情」とは?

自然・気候

こちらでは、九州の中では福岡県に次ぐ人口規模を持つ「熊本県」について、冬の「雪」というテーマから、その基本的な状況(雪事情)を解説していきます。なお、解説する内容は全て「過去の一般的な傾向」です。

熊本県は、一般に雪が少ない地域として知られており、特に熊本市は全国的に見ても雪が少ない地域ですが、阿蘇方面など県内の地域によっては雪がやや積もりやすい場所も見られます。

熊本市の積雪はかなり少ない

熊本県の県庁所在地である熊本市は、わかりやすく言えば「日本でも特に雪が積もらない地域の一つ」にあたります。

熊本市福岡市
年降雪量1cm2cm
年間最深積雪1cm2cm
年降雪日数17.7日15.6日
気象庁の平年データ(2020年まで)による
福岡市・熊本市の年ごとの「最深積雪(1cm以上)」比較

九州最大の都市で、やはり雪が多いとは言えない「福岡市」との比較では、わずかに舞ったりみぞれが降ったりするケースも含めた「降雪日数」の平年値は熊本が上回るものの、グラフを見ても分かる通り、積雪となった際の量は福岡の方が明らかに多い傾向があり、1cm以上の積雪を観測した年数で見ても福岡の方が多くなっています。

熊本以上に雪が積もらない都市は、沖縄を除いた場合九州の県庁所在地では大分市・宮崎市、他の地域では静岡市がありますが、熊本市もほとんど積もらない状況に変わりありませんので、日本全体で見た場合、「最も雪が積もらない地域の一つ」と言ってもよいくらいの環境です。

なお、熊本の場合は「積もらない」傾向が強い割には、「舞うだけ」・「降るだけ」のケースは宮崎などと比べるとずっと多く、そこは大きな違いとなっています。

熊本市の雪が少ない理由は?

熊本市の雪は「積もる」ケースで見た場合かなり少ないですが、その理由はその地理的条件にあります。

冬型の気圧配置・熊本は雪雲が入った場合でも「途切れ途切れ」かつ「弱い」場合が大半
・雪雲が入る側に佐賀県や長崎県があり、雪雲が湧く「対馬海峡沿い」からの距離が離れていることが要因
南岸低気圧・気温が高い熊本市では、ほぼ雪にならない

日本で一般的に雪を降らせる気圧配置(パターン)は、冬型の気圧配置・南岸低気圧という要素が「2大要因」と言えますが、熊本市の場合、まず「南岸低気圧」では市内で雪になることはほぼありません。

そのため、実質的にほぼ全て「冬型の気圧配置」による雪となります。強い冬型の気圧配置の際には、対馬海峡や東シナ海で雲が発達し、結果として九州で雪を降らせることがありますが、熊本市の場合、雲が流れ込んで来る向き(北西など)を見た場合、有明海こそあるものの、その対岸には佐賀県・長崎県の陸地があり、雲が発生する対馬海峡一帯などからは100km程度離れています。

雪雲は陸地に長時間掛かると弱まり、最終的には消えていく傾向があるため、仮に雪雲が湧いた場合でも、雪は佐賀県側・長崎県側で降る量がより多く、熊本市内は雲が掛かっても「途切れ途切れ」に「少し降る」程度が目立ちます。

2016年1月の大寒波のように、風がかなり強めで、かつ雪雲を発達させるような寒気が特に強い場合は、雪雲が消えずに熊本市内までしっかり掛かるケースが「ごくまれ」に見られますが、頻度はかなり少なく、結果として熊本市は「降る」頻度に対し「積もる」頻度がかなり少ない都市となっているのです。

地域ごとに見た場合は?

熊本市だけではなく、山間部も含めた「熊本県内」全域で見た場合、雪事情は大まかには下記のようにまとめられます(あくまでも過去の最も一般的な傾向となります)。

県北(阿蘇以外)・熊本市内と同様に積雪は珍しい地域
・山鹿市の山間部など一部では少しだけ積もる頻度が増える傾向
阿蘇地域・標高が高く熊本県内で見た場合「雪が最も積もりやすい」地域
・寒い年は何度も積雪する場合あり
・「南岸低気圧」で雪が降るケースも
・但し、暖冬年などは雪が積もらないことも
県央・熊本市などは全国的に見ても積雪が少ない地域
・「降る」頻度に対する「積もる」頻度の少なさが特徴
県南(天草以外)・熊本県内では比較的雪が積もりやすい地域
・積もる「頻度」自体はあくまでも少ない(平地では全く積もらない年も)
・人吉など山沿いの内陸部ではまれに「南岸低気圧」で雪が降るケースも
天草地域・平地で見た場合「九州で最も大雪が多い地域」
・陸地を余り通っていない雪雲が発達したまま入る場合あり
・平成以降20cm前後の積雪が複数回見られる
・積もる「頻度」自体はあくまでも少ない(全く積もらない年もあり)
・地域差は大きく特に上天草などは雪が少な目

県内全体で見た場合、「阿蘇地域」と「県南(特に天草地域)」は、熊本市内とは「雪事情」が全く異なる地域です。

阿蘇地域の場合、年の状況にもよりますが、気温も低いためスタッドレスタイヤなどの装備が一般的に望ましい環境で、寒い年には雪が何回か積もることもあります。

また、天草地域は一部の地域に限られますが、本来は非常に温暖な地域である一方、概ね数年に1回程度の「強い冬型の気圧配置」となった際に、長崎市内などをかすめただけの「発達した新鮮な雪雲」が流れ込み、熊本市内ではありえないような大雪(10cm~場合によっては20cm以上のケースも)となることがあります。

天草地域に限って見た場合、平地(特に本渡方面など)では「九州で最も大雪が多い地域」とも言え、熊本市と同じイメージで捉えることは出来ません。

阿蘇地域の「雪事情」については、上記の記事で別途解説しております。

「熊本県・熊本市の雪」ポイント・まとめ

熊本市は、全国的に見ても「雪が積もる」ことが特に少ない地域です。
・雪の少なさは、まれに雪雲が入りこむ場合にも弱まっていることが多いためで、北西側に佐賀県と長崎県の「陸地」があることが大きな要因と言えます。
・県内全体で見ると状況は異なり、阿蘇地域標高が高く雪が積もる頻度は熊本市より多くなります。また天草地域温暖ながらまれに大雪となることもあります。