稚内市の「気候の特徴」とは?季節ごとの傾向などを解説【国内最北端】

自然・気候

当記事では、北海道のみならず「日本国内」の最北端にあたる「稚内市」の気候について、季節ごとの傾向や札幌市との比較などを詳しく解説していきます。

稚内市の気候「全体的な特徴」

稚内地方気象台の雨温図
降水量平均気温日照時間平均風速降雪量最深積雪降雪日数
年間平年値1109.2mm7.0℃1446.9時間4.6m/s477cm72cm147.9日

稚内市は、北海道・日本国内の最北端に位置し、緯度は北緯45度付近と、赤道から北極までの長さで見た場合ちょうど真ん中付近にあたる地域です。

気候としては、海に突き出したような地域であるため海からの気流の影響を強く受けた気候となります。その影響で、沿岸部は緯度の割にはずいぶん温暖とも言えますが、最も北側ということで寒気が流れ込みやすい地域であり、道南方面と比べると気温はどの季節も総じて低めで、特に春から夏にかけての気温の低さが目立ちます。

また、海沿いということで風がかなり強く、特に秋から冬は冬型の気圧配置が強まる度に強風・暴風になるなど、比較的厳しい気象条件になりやすい地域でもあります。

世界的な気候区分(ケッペン)としては亜寒帯の「亜寒帯湿潤気候(Df)」と、北海道内のほとんどの地域と同じ区分に当てはまります。

なお、市内は市街地と市内東部の宗谷岬が25kmほど離れているなど比較的広くなっており、市内でも沼川地区などは内陸型の気候的特徴を強く持つなど、地理的条件は同じではありません。時には10~15℃程度の気温差が生じることもあるなど、海沿いとやや内陸側の気温差の大きさは特筆すべき気候面での特徴と言えるでしょう。

稚内市「季節ごとの気候」

【春の気候】非常に鈍い気温の上昇・但し天気は良い

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
3月-0.6℃1.6℃-3.1℃55.1mm137.5時間68cm58cm24.3日
4月4.5℃7.4℃1.8℃50.3mm173.5時間9cm17cm12.6日
5月9.1℃12.4℃6.3℃68.1mm181.6時間なしなし2.1日
いずれも平年値(1991年~2020年)
稚内市の桜(平年値)
開花日5月13日
満開日5月 16日
品種は「エゾヤマザクラ」
時期稚内の平均気温旭川の平均気温
3月上旬-2.6℃-3.6℃
3月中旬-0.4℃-1.2℃
3月下旬1.0℃0.6℃
4月上旬2.9℃3.2℃
4月中旬4.3℃5.4℃
4月下旬6.1℃8.2℃
5月上旬7.4℃10.1℃
5月中旬9.1℃12.1℃
5月下旬10.8℃14.5℃

稚内市の春は、春といっても決して暖かい日々が続く訳ではなく「比較的寒冷な季節」となります。

気温は冬よりは大幅に上がるとは言え、まだまだ冷たい海水温の影響を受けるため上昇が非常に鈍く、道内の内陸部などと比較し、逆に気温が低い状態となります。

対照的な気温の変化は、旭川との比較が最もわかりやすく、3月の段階では旭川が稚内より寒かった状態が4月以降急速に逆転し、5月には稚内が3℃ほど低い大幅な低温となる状況が見られます。

雪については、3月までは一定の量が降る可能性がある時期で、4月以降雪が急速に少なくなります。但し、みぞれなどが降るだけであれば、5月に入ってから観測されることもそれほど珍しくはありません。

天気については、気温の低さとは関わりなく春は1年で最もよく晴れる時期で、4月・5月は特に安定した空模様の日が多くなります。但し、5月についてはオホーツク海側からの冷たい気流の影響で、後半ほどすっきりしない空模様になりやすい年もあります。

桜については、釧路に次いで日本で2番目に遅く咲く地点となっており、見頃は5月半ば頃と本州の桜とは全く違う時期がシーズンとなります。但し、近年はやや早くなりつつあり、大型連休中から咲く年も一部で見られます。

【夏の気候】暑い日が少ない・オホーツク海からの冷気に左右される

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間
6月13.0℃16.1℃10.4℃65.8mm154.6時間
7月17.2℃20.1℃14.9℃100.9mm142.7時間
8月19.5℃22.3℃17.2℃123.1mm150.7時間
いずれも平年値(1991年~2020年)

夏の稚内は、一言で言えば「冷涼」・「やや晴れにくい」・「風はやや弱まる」季節と言えます。

気温については、海水温が高くない海からの気流を受け続けるため、夏に気温が30℃以上の「真夏日」となることは極めてまれでほとんどなく、最高気温が25℃を超える「夏日」も年間数日程度と、札幌や旭川と違い「夏がほぼない」と言ってよいくらいの涼しさとなります。

具体的には、6月には最高気温が10℃以下の日が、8月でも最高気温が20℃以下の日も時折見られ、朝の気温というよりは昼間の気温の低さが特に際立ちます。

天気については「梅雨」こそ存在しませんが、冷たく湿った気流をもたらす「オホーツク海高気圧」の勢力次第で空模様は大きく変わり、高気圧から風が吹き込む場合、曇り・小雨・霧雨といった天気が一定期間続き日照時間が少なくなります。但し、年ごとの差が大きいため、よく晴れる年もあれば、天気がすっきりしないまま夏が終わる年もあるなど、状況は様々です。

風については、冬場と異なり等圧線が狭い間隔で並ぶようなことが少ないため、1年の中では強風となることが最も少ない時期となります。

【秋の気候】急速に晴れ間が減る・雪は比較的早くから

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
9月17.2℃20.1℃14.4℃136.7mm172.1時間なしなしなし
10月11.3℃14.1℃8.4℃129.7mm134.6時間1cm1cm3.8日
11月3.8℃6.3℃1.3℃121.4mm55.9時間41cm15cm20.5日
いずれも平年値(1991年~2020年)
初霜初氷初雪初積雪(1cm以上)
平年日平年値なし11月5日10月19日11月12日

秋の稚内は、季節の進行とともに天候の変化がかなり極端となる特徴があります。

9月は秋雨前線の影響を受けるため降水量がやや多く、雷の確率が1年で最も高い月である一方、移動性の高気圧に広く覆われやすく、時に200時間程度の日照時間となるため4・5月と並ぶ「1年で最もよく晴れる時期」でもあります。

一方で、10月以降は急速に日照時間が減っていきます。11月の日照時間は9月の3分の1以下と、昼間の長さが短くなることを考慮しても極端に晴れ間が短くなり、晴天はかなり貴重な存在に変わります。

これは、「冬型の気圧配置」が増えるに従って季節風・シベリアからの寒気の影響を受けて雲が広がりやすくなるためで、稚内の場合雨や雪が「降る量(降水量)」の合計は特段多くならないものの、風向きを問わず雲が流れ込む環境にあることから、一定の雨や雪・曇りが長時間続くことで日照時間の急減をもたらしています。

気温については、春とは違い比較的暖かい海水温の影響を受け、緯度の割には温暖ですが、寒気は北から流れ込むため雪が降る時期は道内でも早めであり、10月中に初雪となることが大半です。積雪は11月から見られるようになり、年によっては30cm程度のまとまった雪になることがあります。

【冬の気候】風が強く雪もやや多い・寒いが緯度の割には温暖

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
12月-2.1℃0.0℃-4.2℃112.9mm28.4時間122cm39cm28.5日
1月-4.3℃-2.4℃-6.4℃84.6mm40.6時間129cm59cm30.4日
2月-4.3℃-2.0℃-6.7℃60.6mm74.7時間105cm64cm26.0日
いずれも平年値(1991年~2020年)
積雪深日降雪量年間降雪量
観測史上最大の値199cm(1970年2月9日)61cm(1991年12月4日)705cm(2010年)

冬の稚内は、道南地方や札幌と比べると寒い地域ですが、旭川などと比べると海からの気流の影響で気温は高く、最北の地であるという「緯度の高さ」の割には温暖な環境と言えます。但し、温暖というのはあくまでも相対的な話・比較した場合の話ですので、実際は1か月間のうち最高気温がプラスになるのは数日だけ。というような極寒の環境です。

雪については、北海道内では平均~やや多い雪の量と言える状況で、特別に雪が多い訳ではないものの、年によっては積雪が1mを越えるようなこともあります。積雪は市内では南側の沼川方面では市街地より多く、宗谷岬方面など東側の海沿いでは市街地よりも少ない傾向が見られます。

雪は稚内沖で雪雲が渦を巻いたり、巨大な帯になったものが陸地を直撃する場合にまとまって降るほか、弱い雪がずっと降り続くようなことも多く、気温が低いため少し降るだけも雪が解けずに「積み増し」され、次第に積雪の量が多くなる傾向が見られます。

なお、海に突き出した地理的条件を持つ稚内市は、どのような風向きであっても雲がかかりやすく、冬場の日照時間・晴れ間は1月までは極度に少なくなり、特に12月は日差しがほとんどない期間が続きます。1週間以上、ひたすら雪と曇りが続くようなやや過酷な気象条件となることも珍しくありません。

冬場は風も非常に強く、強い冬型の気圧配置となる際には台風並みの暴風(最大瞬間風速25~30m/s程度)が吹くことも一般的です。暴風は雪を伴うことが多く、市内の風景は「ホワイトアウト」状態となり、外出や車の走行に危険が生じるようなこともあります。

この他の特徴としては、稚内市では「流氷」が接岸することがあります。但し、網走のように基本的に毎年接岸する地域とは異なり、接岸しない年も半数程度あり、接岸した場合も最短1日で離岸するようなケースもあるなど、観光資源として大いに活用されるほどの規模ではありません。

札幌と比較する

札幌と稚内「月間降水量」の比較
札幌と稚内「月間平均気温」の比較
年間平均気温冬の平均気温年間降水量年間降雪量年間最深積雪年間日照時間
札幌管区気象台9.2℃-2.3℃1146.1mm479cm97cm1718.0時間
稚内地方気象台7.0℃(-2.2℃)-3.5℃(-1.2℃)1109.2mm(-36.8mm)477cm(-2cm)72cm(-25cm)1446.9時間(-271.1時間)
いずれも平年値、括弧内は札幌との比較

稚内市の気候を札幌市と比較した場合、年間の平均気温では稚内市は札幌より2℃以上低いなど冷涼な傾向がより強まります。季節ごとでは、海水温の影響から春・夏の気温差がかなり目立っており、逆に秋はその差がかなり小さくなっています。

降水量については、年間で見た場合ほとんど変わりなく、秋は稚内が、冬は札幌が多くなる構図が見て取れます。これは、真冬になると海水温が特に下がる稚内付近では、札幌ほど雪雲が発達しなくなることに由来します。

雪は年間降雪量ベースではほぼ同じですが、最深積雪ベースでは稚内が少なくなっています。札幌の場合まとまった雪が降る頻度が稚内よりやや多く、他方で冬晴れの日も多いことから、雪の量の割に日照時間が少ない稚内と比べるとメリハリのある冬の天候が特徴と言えるでしょう。日照時間は年間でも270時間程度の差が生じていますが、この差は基本的に冬場の日照時間の差によるところが大きくなっています。

稚内市のある「宗谷地方」の気候については、上記の記事で別途解説しております。