飛騨市の「雪事情」とは?【岐阜県内屈指の豪雪地】

自然・気候

こちらのページでは、岐阜県の最北端に位置し、観光でも有名な「飛騨市」について、その「雪事情(雪の降る・積もる傾向など)」を解説していきます。

飛騨市は、富山県(日本海側)と隣接していることもあり、雪雲がまとまって流れ込みやすく、県内でも特に雪が多い地域となっています。

掲載情報は2022年時点のものです。その後の観測状況などにより、データなどが変化していることも考えられますので、その点はご留意下さい。

飛騨市「雪に関する基本データ」

観測地点名平年年間降雪量
(cm)
平年年間最深積雪
(cm)
過去最大の積雪深
(cm)
河合799139279(1981/1/13)
神岡61199165(2005/12/24)
【参考】東京8646(1883/2/8)
【参考】岐阜341558(1936/2/1)
気象庁の平年データ・観測データによる
平年月間降雪量
(cm)
平年月間最深積雪
(cm)
過去最大の積雪深
(cm)
11月9553(1988/11/26)
12月16972239(1980/12/29)
1月289118279(1981/1/13)
2月223139260(1981/2/11)
3月126102232(1981/3/1)
4月1527122(1981/4/1)
観測地点:河合
気象庁の平年データ・観測データによる
積雪量5cm≧10cm≧20cm≧50cm≧100cm≧
平年年間積雪日数99.695.788.267.929.8
観測地点:河合
気象庁の平年データによる
平年月間降雪量
(cm)
平年月間最深積雪
(cm)
過去最大の積雪深
(cm)
11月5332(1983/11/27)
12月12351166(2005/12/24)
1月21780164(2006/1/4)
2月17292150(1984/2/29)
3月9460140(1984/3/1)
4月6562(1984/4/1)
観測地点:神岡
気象庁の平年データ・観測データによる
積雪量5cm≧10cm≧20cm≧50cm≧100cm≧
平年年間積雪日数86.279.870.340.65.6
観測地点:神岡
気象庁の平年データによる

気象庁は飛騨市内の2か所(河合・神岡)で雪に関する観測を実施しています。

いずれも雪の量は多く、特に「河合」アメダスの雪の量は1m以上の積雪が年平均合計1か月程度見られ、積雪が2m以上に達することもあるなど、全国的に見てもかなり多い部類に入り、岐阜県内では「白川」アメダスに次ぐ雪の量となっています。

神岡アメダスの雪も多めで、年間平均で合計3か月程度に渡り積雪が見られるような環境です。

同じ岐阜県でも岐阜市とは全く状況が異なるほか、南隣にあたる高山市の市街地と比べても雪は非常に多いと言えます。

但し、後述する通り「飛騨古川駅」周辺など市中心部に気象庁の積雪計はないほか、河合・神岡アメダス周辺と比べると雪は少ない傾向を持つため、同じ市内でも雪の量には大きな差が見られます。

飛騨市「月別・地域別の降雪・積雪傾向」

飛騨市周辺の「雪事情」について、各月ごとの大まかな傾向・地域ごとの傾向をまとめると以下のような形になります。

雪の傾向
11月・雪はまれ
・大半の年で積もらない
12月・一般的に雪が降るようになる時期
・毎年必ず雪が積もる環境
・多くの年で繰り返し積もる
・50cm以上などまとまった量の雪となるケースもあり
1月・雪が最も多い時期
・連日雪が降ることも
・根雪となる場合も多い
・飛騨古川市街地で1m以上積もる場合は少ない
2月・1月に次いで雪が多い時期
・連日雪が降ることも
・根雪となる場合も多い
・飛騨古川市街地で1m以上積もる場合は少ない
・「南岸低気圧」の影響による大雪となる場合も
3月・雪はまだ一般的
・2月までと比べ降る、積もる頻度は急減傾向
・時に大雪となる場合も
・根雪はどんどん解けていく時期
4月・雪はまれ
・大半の年で積もらない
・飛騨古川市街地で根雪が残っていることはほぼない
飛騨古川市街地周辺を基準とした場合

上記の傾向は、市内で比較した場合は雪が最も少ない傾向を持つ「飛騨古川市街地」一帯を基準としたものです。

地域雪の傾向
古川地域・古川市街地は上記の通り
・黒川地区は雪がかなり多い傾向
河合地域・市内で特に雪が多い環境
・古川市街地の2倍以上~雪が降る場合も
・1m以上の積雪が一般的
・時に人が住む地域を含め2m以上の積雪も
・根雪が4月まで残るケースも
宮川地域・雪はかなり多い地域
・古川市街地の倍程度雪が積もることも
・1m以上の積雪が一般的
神岡地域・古川市街地より雪が多め
・神岡地域の中心部の場合、概ね1m前後の雪が一般的
・山之村牧場周辺は標高が特に高いためより雪が多く、長期間残りやすい

飛騨市内は、古川市街地以外の地域は原則として「より雪が多い」傾向を持ちます。特に河合地域・宮川地域・神岡町山之村地域の雪が非常に多く、1m以上の積雪がごく一般的な状況です。

雪の量の変化は?

河合アメダスにおける年間最深積雪の推移(1981~2022年)
神岡アメダスにおける年間最深積雪の推移(1984~2022年)

気象庁の飛騨市内における雪の観測地点について、比較可能な期間の「年間最深積雪(1年で最も多く積もった雪の量)」の変化を見ていくと、上記のようなグラフに表せます。

1980年代以降については、大きな減少・増加の傾向は特に読み取れず、近年の大暖冬(2020年)で雪が一部極端に少ないケースがあるものの、それ以外の年ではある程度の量の雪が積もっています。

国内の平地で積もる雪の量は長期的に大幅な減少傾向にありますが、飛騨市の場合は標高が比較的高く気温が低いため、雪の量が減る傾向はある程度抑えられていると言えるでしょう。

なお、観測がされていないより古い時代を考慮した場合、飛騨市でも雪の量は減少傾向となっている可能性があります。

飛騨市の雪事情「ここがポイント」

岐阜県内・東海屈指の豪雪地

飛騨市は、岐阜県内では白川村に次いで雪が多い地域と言える環境です。

市内で雪が最も少ない古川市街地であっても、50cm以上の雪が当たり前のように積もり、長期間雪が残る「根雪」が一般的であるほか、市内の周辺地域では1~2m程度の積雪となる場合もあるような環境で、特に河合地域・宮川地域・神岡地域のうち山之村方面などはかなりの豪雪地となっています。

岐阜県の北部(飛騨地方)では「高山市」も比較的雪が多い地域ですが、それぞれの市の「市街地」で比較した場合、高山市街地よりも古川市街地の方が雪がより多い傾向で、高山駅で「積雪ゼロ」の場合に飛騨古川駅では「まとまった積雪」というケースも少なからず見られます。

日本海側からの雪雲が入りやすい

飛騨市で雪が増えやすい要因は、岐阜県の中では最も北側に位置し「日本海」からの距離がそれほど遠くない点が最大の要因です。

「冬型の気圧配置」の際に日本海から流れ込み、石川県内・富山県内の山地などで発達した雪雲は、山を越えると弱まる傾向にありますが、飛騨市の場合は富山県と隣接しており、雪雲がまだ勢いを保ったまま流れ込みやすい環境で、高山市街地などより内陸側と比べ雪の頻度・量が増えることになります。

とりわけ、河合地域・宮川地域などは富山側からの距離が近く、山地で発達した雪雲が長時間掛かりやすいため、周辺地域の中でも雪がかなり多い豪雪地の一つとなっています。

なお、雪は「冬型の気圧配置」のみならず太平洋側を通る「南岸低気圧」でもまとまって降ることがあります。

雪はいつまで残る?

飛騨市では、ほとんどの年で長期間積雪が残る「根雪」が見られます。市内は比較的標高が高い場所も多いため、雪が残る期間は比較的長めです。

根雪の期間は年ごとの差が非常に大きいため一概には言えませんが、河合地域など雪が特に多い場所では4月まで残雪が見られる場合があります。また、雪が市内では少な目の古川市街地でも3月まで雪が残る場合があります。

平地と比べ気温が低く、新しい雪が3月以降に積もるケースもありますので、スタッドレスタイヤなどの使用は春になってからもしばらくの間続けることが無難です。

飛騨市の雪事情【まとめ】

  • 岐阜県内屈指の豪雪地
  • 飛騨古川市街地も含め「根雪」が見られやすい環境
  • 12月~2月に雪が多く、3月の雪も一般的
  • 市内では河合地域・宮川地域・神岡地域のうち山之村方面などで特に雪が多い
  • 雪が多い場所では積雪1m以上も珍しくない環境
  • 雪の多さは「日本海側(富山県)」から近いことが大きな要因

隣接する「高山市」の「雪事情」については、上記の記事で解説しております。