1年間で合計平均で4m以上の雪が積もり、年間100日以上は雪に覆われる札幌のまち。
当ページでは、札幌の「雪」に関するテーマの中でも春の訪れを告げる「雪解け」について、その時期や傾向などをデータに基づいて詳しく見て行きたいと思います。
平年データから見る「雪解け」
長期積雪の最終日(平年値) | 4月3日 |
積雪の最終日(平年値) | 4月10日 |
長期積雪の開始日(平年値) | 12月3日 |
積雪の開始日(平年値) | 11月9日 |
根雪期間の平均 | 約122日 |
積雪初日~積雪最終日の平均 | 約150日 |
最も公平なデータと言える気象台の「平年値」データから見た場合、札幌で長期積雪(根雪)が無くなる日の平均は4月3日となっています。
根雪とは概ね雪が積もり続けている期間(※)であり、札幌の場合それが平年データでは4か月程度続いていることになります。日本で一番雪が多い都道府県庁所在地は、札幌ではなく厳密には青森市ですが、札幌市は気温が低いため、根雪期間で見た場合青森よりも更に長くなるなど、降雪量に対し雪がより残りやすい地域となっています。
※根雪の定義としては、観測地点での積雪が30日以上続いた場合を指します。雪が一旦無くなった場合も、その後更に10日以上雪が積もり続けた場合、5日間までは雪がゼロでも根雪とカウントするというルールがあります。 |
なお、雪解けという言葉は、一般的に長期間続く積雪がなくなることを指すものですが、根雪が始まる前や、根雪期間が終わった後に、寒くなって雪が積もることもあります。そういった期間も合わせて考えると、札幌では年間150日、5か月程度の期間「積雪」との関わりがあることになり、日常生活と雪はほぼ一体化した存在とすら言えるでしょう。
近年の「雪解け」状況は?【4月の雪が減った】
平年値で見た場合、雪がなくなる時期が4月にずれこむようになっている札幌の「雪」ですが、体感的には近年雪がなくなるのが早い。と感じられる方も多いかもしれません。
年 | 根雪の最終日 | 年間降雪量合計 | 年間最深積雪 |
---|---|---|---|
1990年 | 3月17日 | 413cm | 93cm |
1991年 | 4月6日 | 637cm | 125cm |
1992年 | 3月28日 | 382cm | 70cm |
1993年 | 4月7日 | 470cm | 95cm |
1994年 | 4月13日 | 571cm | 124cm |
1995年 | 3月28日 | 394cm | 71cm |
1996年 | 4月14日 | 680cm | 145cm |
1997年 | 4月1日 | 378cm | 89cm |
1998年 | 3月29日 | 408cm | 86cm |
1999年 | 4月12日 | 632cm | 100cm |
2000年 | 4月10日 | 630cm | 142cm |
2001年 | 4月1日 | 494cm | 87cm |
2002年 | 3月26日 | 415cm | 83cm |
2003年 | 4月5日 | 465cm | 87cm |
2004年 | 4月4日 | 397cm | 95cm |
2005年 | 4月15日 | 617cm | 123cm |
2006年 | 4月10日 | 574cm | 111cm |
2007年 | 4月3日 | 543cm | 78cm |
2008年 | 3月25日 | 423cm | 106cm |
2009年 | 3月31日 | 492cm | 76cm |
2010年 | 4月4日 | 485cm | 79cm |
2011年 | 4月7日 | 490cm | 92cm |
2012年 | 4月11日 | 399cm | 76cm |
2013年 | 4月12日 | 628cm | 137cm |
2014年 | 4月7日 | 478cm | 113cm |
2015年 | 3月26日 | 367cm | 91cm |
2016年 | 3月28日 | 428cm | 83cm |
2017年 | 4月6日 | 512cm | 96cm |
2018年 | 3月30日 | 465cm | 89cm |
2019年 | 3月19日 | 335cm | 72cm |
2020年 | 3月27日 | 427cm | 80cm |
2021年 | 3月23日 | 331cm | 79cm |
根雪が終わる日は、2015年あたりから急に早くなる傾向が強まり、今まで当たり前であった4月上旬の根雪というものが、むしろまれな状況に変化しています。
雪の量で見ても、2015年以降は冬の最深積雪が1mを越えることはなく、2017年を除いて降雪量合計が5mを越える年もありません。近年の雪解けの早さは、基本的には冬場に降る雪の量自体が減ったことが大きな要因となっています。
一方で、過去に遡ってみた場合、2012年のように、冬場の雪が少ない年でも根雪が長期間続いた年もあれば、2008年のように最深積雪が1m越えのケースで、根雪が3月中に消えているような状況も見られます。これらは、3月下旬に雪の日が続いたであるとか、逆に3月後半に極端な高温が続いた。といった特殊な事例となっており、全体として見ると「その冬の雪の量」で「根雪期間」が決定される要因が大きいものの、「3月(特に後半)の気温・天気」が偏ったものであった場合、雪の量に関わらず雪解けが遅れたり、早まったりすることもあると言えます。
雪解け後に再び雪が降る可能性は?
概ね3月下旬~4月上旬頃に根雪期間の終わりを迎えることが多く、ここ数年は急速に早まる傾向もみられる札幌の雪解け。一方で、寒冷な札幌のまちでは、雪融けで春の訪れが実感されるようになった後にも、もう一度雪が積もったり・降ったりすることもあります。
根雪期間終了後に「わずかでも雪が積もった」年 | 2019年・2018年・2017年・2016年・2014年・2013年・2011年・2010年・2009年・2008年・2007年・2006年・2005年・2004年・2003年・2001年・2000年 |
根雪期間終了後に「雪が積もらないが降った」年 | 2021年・2020年・2015年・2012年・2006年・2002年 |
根雪期間終了後に「雪が一切見られなかった」年 | なし |
例えば2000年以降に限って見てみれば、多くの年で根雪期間が終了した後に、積雪が改めて観測されています。但し、降る雪の量は極めて少ない場合がほとんどで、うっすら白くなっただけでセンチ単位で測る程ではないような積雪が、かなりの割合を占めています。そのため、生活に大きな支障が生じるようなことはほぼないと言ってよいかもしれません。
また、積もらない場合も含めると、過去基本的に全ての期間で「根雪終了後」に雪が降っています。4月中は雪が舞ったり、みぞれが降ったり(みぞれも気象庁の定義では降雪に含まれる)することは決して珍しいことではなく、雪が完全に解けたから、直ちに冬の名残が全て無くなる。という訳ではありません。
札幌の桜の見頃は4月末~5月上旬頃、新緑の季節は5月の末頃がピークとなり、雪解けからは更に1か月~2か月程度を要します。雪解けは、北海道・札幌に春が訪れる上で最も象徴的なタイミングとも言えますが、気温はまだ寒さを感じることも多く、体感的にはっきりと暖かくなるのはもう少し先であるとも言えるでしょう。
雪解けを象徴する風景
春先に雪解けが進む時期には、雪解けを象徴する独特の風景が、雪の周りで見られるようになっています。
根開き(ねびらき・ねあき)
雪解けシーズンにはあちこちで見られる風景としては、雪が積もっている場合に「木の周り」だけ雪が先に解ける・減る状況が見られる「根開き(ねびらき・ねあき)」というものがあります。
この現象は、雪の表面が太陽光の多くを反射してしまうのに対し、木の幹(樹幹・特に黒色に近いもの)は木の表面に太陽光を受けた際にその熱を吸収し、その結果他の場所と比べ比較的温度が高くなることから、周囲の雪を早く解かしてしまう。というメカニズムとなっています。
また、色の薄い木であっても、木に当たった太陽光が反射し、周囲の雪をやはり解かしやすくする傾向があると考えられている他、木は地下水を吸い上げて生きていることから、雪よりも温度が高い地下水の影響で木がやや暖まり、雪を解かしやすくする状況もあると考えられています。
雪えくぼ
雪解けが進む際には、雪の積もっている表面に無数の小さなくぼみが見られる「雪えくぼ」という現象も生じます。
こちらは、雪が解けて雪解け水がまだ積もっている雪の下へと流れていく際に、その雪解け水が集まる場所に生じるとされており、斜面のような水が流れやすい場所では、くぼみというよりは小さな溝のような形で「流れえくぼ」と呼ばれる形になることもあります。
雪解けシーズンには、このような特徴的な風景が見られますので、散策時などにはぜひ雪の中からも「春の兆し」を見つけてみてはいかがでしょうか。
札幌における雪の降る・積もる量一般に関しては、上記の記事で別途解説しております。