近鉄電車の運賃は高い?安い?他社との比較等から考える

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奈良・三重を中心に大阪・京都・名古屋へも足を延ばす日本最大の私鉄「近鉄電車(近畿日本鉄道)」。

近鉄電車については、その運賃が高いという感想を持つ人が比較的多いようですが、こちらのページでは他社の同じ距離の区間等と比較しながら、その運賃水準について見ていきたいと思います。

ざっくりと言えば、近鉄電車は2023年4月の値上げを受けて、大手私鉄の中でも運賃は最も高い方ですが、JR線よりは長距離区間ではやや安い傾向があり、通学定期等の場合は一層割安になります。

※こちらの記事では、2023年4月の値上げ後の状況を解説していくものです。

近鉄電車の普通運賃について

比較をしていく前に、まずは2023年4月の運賃値上げ以降の近鉄の普通運賃を一覧表でご紹介します。

キロ程運賃キロ程運賃キロ程運賃
初乗り3km180円56~60km1,070円141~150km2,310円
4~6km240円61~65km1,140円151~160km2,430円
7~10km300円66~70km1,210円161~170km2,560円
11~14km360円71~75km1,290円171~180km2,710円
15~18km430円76~80km1,370円181~190km2,860円
19~22km490円81~85km1,450円191~200km3,000円
23~26km530円86~90km1,530円201~210km3,130円
27~30km590円91~95km1,600円211~220km3,280円
31~35km680円96~100km1,670円221~230km3,410円
36~40km760円101~110km1,740円231~240km3,560円
41~45km830円111~120km1,880円241~250km3,690円
46~50km910円121~130km2,040円
51~55km1,000円131~140km2,170円

上記が近鉄電車の普通運賃です。この他けいはんな線や鳥羽線、吉野線・湯の山線・志摩線を利用する場合加算運賃が20円~130円程度適用されます。

初乗り運賃・近距離の場合

高いと言われがちな近鉄電車の運賃ですが、具体的に各社と比較する場合はどうなっているのでしょうか。まずは初乗り運賃や近い距離の区間から見てみましょう。

近鉄の初乗り運賃は2023年4月現在「180円」です。これは各大手私鉄、JRの中では高い部類に入り、例えばJR西日本の大阪周辺の初乗り運賃「140円」と比べ40円も高くなっています。

初乗り運賃が近鉄よりも大幅に高いのは京都市営地下鉄(220円)等一部に限られます。

また、初乗りではなく数駅程度の「近距離」区間では、とりわけ近距離が安い傾向にあるJRと比べると運賃差は大きくなり、他の私鉄と比べてもほとんどのケースで近鉄が割高になります。

例えば、近鉄線の場合では近鉄奈良駅~東生駒駅は運賃360円・距離11.3キロですが、JR西日本であればほぼ同じ距離の奈良駅~法隆寺駅間は運賃220円・距離11.8キロとなっています。

近鉄よりも運賃が高くなる主要な鉄道会社は、大手鉄道会社では存在せず収益基盤が弱い山陽電鉄や神戸電鉄、また建設費の都合で極端に運賃が高いつくばエクスプレス・北総鉄道・東葉高速鉄道等に限られます。

運賃が高いとされがちな近鉄電車については、確かに近距離区間を中心に実際に割高感があることは否定できません。

中距離(30キロ程度~)の場合

都市間の移動で一般的な中距離(概ね30キロ程度)の場合はどのような運賃水準になっているのでしょうか。

これについては、特別な区間を除いてはJR線と比べやや割高な運賃ですが、関西・首都圏の大手私鉄の中で比べるとかなりな高額な運賃にあたります。

但し、JR線と近鉄線がやや競合している区間で、JRが特別に安い運賃を設定している場所では、JRが大幅に安い場合もあります。2023年の近鉄線値上げではその差が一気に広がりました。
例えば近鉄奈良駅~近鉄大阪難波駅の運賃は680円、JR奈良駅~JR難波駅の運賃はそれより安い580円ですが、距離自体はJR線経由がかなり長めです。また、JR奈良駅~JR天王寺駅間は500円と割安な運賃となっています。

他の比較的運賃が高い大手鉄道会社と比べると、名古屋鉄道・西日本鉄道(西鉄)より少し高く、南海電気鉄道とはあまり変わりない運賃水準です。近鉄より高額な運賃を持つ規模の大きな鉄道会社は、JR北海道くらいしか存在しません。

もっとも、それ以外の運賃が比較的安い大手私鉄と比べると、近鉄の運賃は更に高めです。阪急電車のようにローカル線区を持たない鉄道会社の場合、30キロ乗っても運賃は330円ですので、近鉄はその2倍弱の運賃ということになります。首都圏の大手私鉄で近鉄より高い会社はなく、東急・京王・小田急・西武などと比べても阪急電車と状況はほぼ同じです。

距離が長くなって行くと、近鉄線とJR線の運賃差は少しづつ縮小します。例えば50キロ乗る場合、近鉄線は910円・JR線は860円、75キロ乗る場合、近鉄線は1,290円・JR線は1,340円と、次第に近鉄線との差が小さくなり、途中で近鉄線の方が安くなります。

遠距離(100キロ以上等)の場合

遠距離・長距離の区間の場合、そもそも運行距離の短い一部の鉄道会社とは比較はできませんが、近鉄線の場合、概ねJR線よりは割安な水準となっています。

例えば120キロの区間は、近鉄線は1,880円・JR線は1,980円、150キロの区間は近鉄線は2,310円、JR線は2640円とある程度の運賃差が出て来ます。

名古屋へ行くルートとしては、新幹線よりも近鉄特急アーバンライナーが安いことで知られていますが、これは特急料金の差だけではなく、普通運賃も含めて割安なことも一つの要因です。

定期運賃について

近鉄線は普通運賃で乗車する場合、JRより高いことが多い。という状況の運賃ですが、定期券をご利用の場合は「通学定期」に限って見ればかなり割安となります(特に大学生)。

やや距離が長い区間であれば、月3往復で元が取れることすらある程で、学生には非常に優しいのが近鉄線の特徴となっています。

近鉄線の通学定期の特徴については、上記の記事で詳しくご紹介しています。

なお、通勤定期については特に近距離~中距離などは区間によってJR線よりかなり高くなる場合もあり、長い距離を利用するような一部のケースを除き、特段の価格面でのメリットはありません。

まとめ

近鉄電車の運賃は、2023年の値上げ後は、大手私鉄・一部を除くJR各社と比べ運賃が高額な特徴が目立つようになっており、近鉄より運賃水準が高い会社は山陽電鉄・神戸電鉄(いずれも近距離〜中距離に限る)・JR北海道などを除き見られない状況です。とりわけ比較的短い距離~中距離では、競合するJR線などとの運賃差が目立っており、かつては同額であった大阪難波~奈良間の運賃も現在はJR線に「安さ」の軍配があがっています。

運賃の高さについては、近鉄が奈良県・三重県という大都市ではないエリアを主な営業区域としており、吉野線や鳥羽・志摩線系統、各支線系統などローカル線も多く、奈良線など利用の多い路線の収益で全体を下支えする必要があるという切羽詰まった理由があります。

2023年の値上げによって全国的に見ても高額な運賃水準となったことは否定できませんが、比較的運行本数も多く、地方部にしては使いやすい公共交通機関を維持しているという社会的使命・沿線人口の状況などと考慮すると、決して高額な運賃とは言えない側面も見えてきます。