極端に安い「近鉄の通学定期」とは?割引率・元が取れる回数等を詳しく解説

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近鉄を問わず大手私鉄の通学定期券はどこも割安ですが、近鉄の場合「営業エリア」が広い為、3県にまたがるような移動の場合でも、驚くほどの定期代で済むケースもあります。

こちらでは、とても「お安い」ことで知られる近鉄電車(近畿日本鉄道)の「通学定期」について、その安さについて具体的な価格も交えながら、深堀りして解説していきます。

なお、解説するのは「通勤」ではなく「通学」定期券です。通勤定期の料金は通学定期とは極端な差がありますので、その点はご留意下さい。

大手私鉄の通学定期は安い。近鉄も同様に安い!

中学や高校・大学への通学には不可欠な「通学定期券」。基本的に「通学定期」と言えば通勤定期券と比べると発売額は割安であることが一般的ですが、近鉄電車を含む大手私鉄の通学定期券は、他の交通機関と比べると驚く程に安い傾向があります。

例えば近鉄電車で「近鉄奈良駅~京都駅」の通学定期券、JR線で「奈良駅~京都駅」の通学定期券を買ったとしましょう。定期代は以下の通りになります。

近鉄線の定期代(中高生・大学生共通):1ヶ月5,810円・3ヶ月16,560円・6ヶ月31,380円

JR線の定期代(中学・高校・大学):1か月6,750円~9,650円・3ヶ月19,270円~27,530円・6ヶ月36,500円~52,150円

JR線の場合中学生が安く、大学生が高くなるという別々の料金になっていますが、いずれにしても近鉄線の方がかなり安い事がわかります。特に大学生の場合は半額近い料金になっており、近鉄線の方が相当お得になっています。

これは、上記の奈良~京都間に限らず、近鉄や各大手私鉄とJR線が競合する多くの区間で同様の状況が見られ、単純な価格では、JR線は近鉄や大手私鉄に「通学定期」では太刀打ちできないくらいの差が生まれているのです。

なお、通勤定期では逆に「近鉄の方が高い」というケースが大半です。
近鉄は定期券が全般的に安いのではなく、「通学定期」の安さのみが際立つことが特徴となっています。

長距離区間は極端に安い!元が取れる乗車回数は?

近鉄をはじめとする大手私鉄の定期券については、長距離の区間となると、より一層その「お得感」は強まります。

例えば遠距離通学の典型的ルートとも言える区間として、名張駅~鶴橋駅で見てみましょう。

名張駅から鶴橋駅の「普通(通常)運賃」は1,210円です。

一方、中学・高校・大学生の通学定期券の価格は1ヶ月6,470円・3ヶ月18,440円・6ヶ月34,940円です。

普通に運賃を払えば、往復は2,420円。一方定期券は例えば6か月定期であれば34,940円/6か月、1か月あたり5,820円で乗れることになりますので、ざっくり言えば「1か月に2.5回」往復するだけで、十分に元が取れるという半ば「異常」なコストパフォーマンスを誇ります。

学生の方は「大阪」・「京都」・「名古屋」の都心に郊外から通学し、休みの期間も遊びに行かれる方が少なくありません。そんな時にこのパワフルな「通学定期」をフル活用出来るという訳なのです。

もし、月22日程通学・おでかけに利用するとすれば、本来1,210円の名張駅~鶴橋駅間の運賃は1回150円以下で利用できるということになります。ざっくりとした「割引率」としては、85%以上の割引率と言えるでしょう。

一般論として、近鉄の採算ベースで言えば「通学定期」は収支均衡を前提とした乗車券制度であるようには見えません。むしろ慈善的な事業と言っても差し支えない価格水準と言えるでしょう。

なぜ近鉄・大手私鉄の通学定期は安いのか?

中学・高校・大学の区分がない

近鉄電車や大手私鉄の「通学定期」が安い一つの理由は、学生ごとの区分がないことが挙げられます。

例えばJR線の場合は中学・高校・大学とそれぞれの通学定期料金が設定され、中学こそ近鉄線等との価格差は比較的少なくなりますが、高校・大学とどんどん高額になり、大学の定期は近鉄線の2倍程度の価格になっています。

一方、近鉄線や大手私鉄には区分はなく、中学生も大学生も全て同じ定期料金となっています。

一般に、中学は通学定期を使う人はそれほど多くなく、高校・大学生の利用が多いことから、このような料金設定の差があることが、JR線と比べ極端に「安い」イメージを生み出していると言えるでしょう。

将来のお客様として?

単純な価格としてみれば、近鉄や大手私鉄の通学定期は「価格競争」ではなく「慈善事業」の領域に達しているとすら言える状況ですが、これは通学やおでかけに電車を頻繁に利用してもらう事で、公共交通機関を使う癖を付けて、将来的に「良いお客様」として通常の運賃を払ったり・通勤定期を購入してもらうための伏線である。という考え方もあるようです。

これについては、鉄道会社がそのようなアナウンスをしている訳ではないので、確実な所はわかりませんが、確かに通学定期で「電車に慣れてもらう」と、その後も電車を使いやすい生活スタイルが定着する。ということはあるかもしれません。

純粋な企業サービスとして

もちろん、通学定期の安さは、様々な理由はあっても結局は「純粋な企業サービス」として展開されている側面もあります。

鉄道会社は通学定期の他にも、障害者割引等の各種割引制度を有していますが、国や自治体から損失補填がされる訳ではなく、純粋な企業のサービスの一環として実施されています。

通学定期についても、通学費負担を考慮した一般論として、鉄道会社が「自主的」に安くしている(本来であれば、大人料金である以上は通勤定期料金と同額でもおかしくない訳です)というのが一つの構図であり、そういう意味ではCSR(企業の社会的責任)の一環になっていると解釈することも出来るでしょう。

まとめ

近鉄や大手私鉄の「通学定期券」は、JR線等と比べ極端に割安である事で知られています。

とりわけ遠距離の区間の場合、1か月に3回程往復するだけで「元が取れる」事が多くなります。割引率としては85%以上になり、1000円以上の運賃の区間が、実質1回150円程度で乗れる計算になる場合もあります。

近鉄等の通学定期が特に安い理由は、JR線と異なり「中学・高校・大学」の区別がないことも一つの要因ですが、そもそも割安に設定する理由については「将来のお客様」として厚遇しているという考え方、また企業の社会的責任として一種の慈善的な意味合いで行われていると解釈する事も出来ます。