観光のご案内
新薬師寺のそばにある小寺は鑑真が住み、空海が創建したとも
不空院(ふくういん)は奈良町から続く歴史的町並みが広がる「高畑」エリアの東部、「新薬師寺」や「奈良市写真美術館」とほぼ隣接するような場所に位置する小さな寺院です。
その歴史は大変古く、かつてはこの地に鑑真和上が住んでいたとされ、その居宅の跡地に弘法大師(空海)が現在の興福寺南円堂の雛形とも言われる「八角円堂」を建てたことが創建の由来ともされています。また、その時期に祀られた「不空羂索観音」は現在も本尊として安置されています。
近代には「かけこみ寺」として広く知られる存在に
創建後は、鎌倉時代には円晴と呼ばれる僧侶や西大寺の叡尊らが戒律を講じ、戒律復興の拠点の一つとして鎮守社や僧坊も有するようになるほどに伽藍も発展するなど活況を見せますが、近世以降は荒廃し、廃仏毀釈の嵐が吹き荒れる前の1854年には八角円堂が倒壊するなど厳しい時代が続きました。その後、大正時代に現在の本堂が建造されて以降、ようやく復興が進められ、元より「不空院」転じて「福院」と呼ばれてきたこともあり、元林院の芸妓らの「かけこみ寺」としての役割も果たしました。
その「かけこみ寺」、女人救済の寺として有名になった不空院は、現在も「縁結び」「縁切り」の寺として大変有名な存在であり、寺院の中には「えんむすび」の神様として 「市杵嶋姫大神」と「黒竜大神」、また「えんきり」の神様として「法竜大善神」を祀った祠が設けられています。
なお、本尊以外の仏像としては女性を守護する「弁天様」として室町時代作の秘仏「宇賀弁財天女」が安置されている他、境内地には弘法大師の石像や聖武天皇の第一皇女である井上内親王の御霊塚など、小さな空間にも歴史の深さを感じさせる様々な見どころを有しています。
※拝観など各種の情報に関しては、公式サイトや観光協会などの発信する情報を別途ご確認下さい。
・春の特別拝観:4月下旬~5月上旬ごろ ・秋の特別拝観:10月下旬~11月半ばごろ
リンク 不空院公式ホームページ
不空院の風景
山門

山門は、新薬師寺の東側に伸びる小道沿いにあります。周辺は高畑エリアの町並みの東端部にあたり、静かな風景が広がっています。


本堂

山門を入るとすぐに、ご本尊である三目八臂の不空羂索観音菩薩坐像、また弁天様として信仰を集めて来た「宇賀弁財天女」像を安置する「本堂」があります。
縁きりさん・縁結びさん

本堂の手前には、「かけこみ寺」として知られてきた歴史を物語るように、「縁きりさん」・「縁結びさん」と呼ばれる2つの祠があり、それぞれ「縁切り」・「縁結び」にご利益のある神さまをお祀りしています。
御霊塚

本堂裏手、境内の南東端には「御霊塚」と呼ばれる空間があります。こちらは聖武天皇の第一皇女に生まれ、光仁天皇の皇后になりながらも、夫光仁天皇やその親族に呪いをかけたとして皇后の座から退けられ、皇族から庶民の地位に落とされた上で宇智郡(現在の奈良県五條市内)に幽閉され、そのまま亡くなった「井上内親王」の御霊をお祀りするものであり、かつてこの周辺に井上内親王の邸宅があったことに由来するものとなっています。その悲劇の人生は、不運の女性を匿う「かけこみ寺」としての不空院の歴史とも重なるものであり、この御霊塚もそのような女性をお守りしてくださる存在として信仰を集めてきました。
なお、御霊塚の石の隣には、小さな如意輪観音もお祀りされています。
弘法大師像

本堂の正面には、現在のご本尊を不空院に持ち込み、興福寺南円堂の雛形としての「本堂」の建立にも関わった事実上の不空院の開祖とも言える弘法大師空海の石像も設けられています。
その他風景





次項では、交通アクセスについてご案内致します。
アクセス(電車・バス)
近鉄・JR線各駅からのアクセス
・JR、近鉄奈良駅から「市内循環外回り」「山村町」「藤原台」「鹿野園町」「奈良佐保短期大学」行き乗車、「破石町」下車、東に徒歩10分
周辺のみどころ・観光スポット
新薬師寺から北に徒歩2分、鏡神社から北東に徒歩2分、奈良市写真美術館から北東に徒歩4分、志賀直哉旧居から南東に徒歩5分、白毫寺から北西に徒歩15分、春日大社本殿から南に徒歩12分