東南アジア一帯は、気候としては「熱帯=常夏」の環境・雨も多い「多湿」な環境で、そもそも「冬」がイメージされにくい地域です。一方で、詳細に気候を見ていくと、「雪」との関係がある地域もわずかながら存在することがわかります。
こちらでは、通常想定されにくい「東南アジアと雪」というテーマについて、基本的な状況を見ていきます。
基本
東南アジア諸国において「雪」は、ごく一部の地域のみで見られる非常に特殊な現象です。
全ての国において、一般的な平地は「完全に雪とは無縁」であり、後述する「雪が降る場所」についても、一部の山岳地帯・高山地帯のみが該当します。
ベトナム北部山間部(一部)
南部の平地は事実上常夏の国である「ベトナム」ですが、中国国境に近い北部ほど平地でも冬場はやや気温が下がります。例えば、ハノイ・ラオカイのような主要都市であっても、真冬に寒波がやって来ると、最低気温が10℃未満になることがあります。
そのような環境では、平地と比べ気温が10℃以上低くなるような「標高が高い山岳地帯」では、あくまでもまれなケースですが、雪が降るケースもあります。
人が住む主な地域で、最も雪が降りやすい場所の一つは、ラオカイ州の「サパ」という小さな町で、こちらはベトナム最高峰「ファンシーパン山」の山麓に位置し、標高が1,500m程度あります。
ミャンマーカチン州山間部(一部)
ミャンマー北部の「カチン州」については、その北端部はヒマラヤ山脈の延長線上にあたり、標高4,000m以上などの高山地帯(最高峰カカボ・ラジ=標高5,881m)が存在するため、年間を通して雪が見られるような、本格的な「雪山」が見られます。もっとも、このような山岳地帯には、麓へアクセスすることも困難です。
また、ヒマラヤ山脈沿いでない場所についても、中国国境沿い(州の東側)の標高が高い山間部については、冬を中心に雪が降ることはそれほど珍しくありません。例えば州の南東側に位置する中国国境の町「パンワー」なども、積雪しやすい環境と言えます。
ラオス北部山間部(一部)
ベトナム北部と同様「ラオス」北部についても、特に標高が高い山岳地帯においては、冬に大きく気温が下がることはあるため、雪が降る事例は可能性の水準としてはあり得ます。
但し、寒気の流れ込み方の関係上、ベトナム北部で雪が降るケースと比べ、更に大きく頻度が少なくなるため、そう一般的な現象とは言えないでしょう。
プンチャック・ジャヤ(インドネシア最高峰)
インドネシアは、赤道付近に位置するまさに「常夏の国」です。
一方で、パプア島の中央部には高山地帯(スディルマン山脈)があり、最高峰である「プンチャック・ジャヤ(標高4,884m)」の山頂付近では雪が降るケースがあり、現時点ではまだ氷河が残っています。
雪が全く降らない・完全に無縁な国
東南アジアにおいて、山岳地帯も含め雪が降ることがない国としては、カンボジア・タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ・フィリピン・東ティモールが挙げられます。
もっとも、タイについては北部の気温が下がるケースがあり、山地において「世紀単位」の極端にまれな現象として見た場合、絶対に何があっても雪が降らないと断言出来るかはやや難しい側面はあります。但し、それ以外の国については、どれほどの山地であったとしても、雪が降ることはありません。