世界一の経済大国である「アメリカ合衆国」は、世界的に見ても広大な国土を有する国であり、地理的特徴も多種多様であるため、地域ごとにかなり大きな気候の違いも見られます。
こちらでは、アメリカの気候のうち「雪」というテーマのみに絞って、その基本的な状況を見ていきます。
基本
アメリカ国内は、多様な気候を持つため、地域によって豪雪地帯と言える地域・雪が降りやすい地域・雪が降りにくい地域・雪が全く降らない地域に分けられます。
すなわち、ロシア・カナダ・北欧諸国などのように、実質的に「どこであっても雪が降る」ことがある国とは言えません。降る場所もあれば、降らない場所もあります。
日本も日本海側のような豪雪地もあれば、南西諸島などのように雪が全く降らない地域もありますので、降るメカニズム・気候自体は異なるものの、「その多様性」という点のみでは、共通した特徴を持つと言えるでしょう。
雪が降りやすい地域は?
雪が降りやすい地域は、例外は一部あるものの「緯度が高い」地域や「標高が高い地域」です。
例えば、カナダに近い州であれば、西海岸沿いのワシントン州の一部を除き、どこであってもある程度は雪が降りやすいと言えます。
寒い地域の場合、雪が降る期間が10月〜4月頃など、長い期間に渡って見られやすいことも特徴です。
なお、モンタナ州・ノースダコタ州・ミネソタ州・ウィスコンシン州などは、大まかに言えば「北海道より寒い」場合もあるくらいに、冬は「極寒の地」と言えますが、雪は降りやすいと言っても、山地の一部などを除き「降雪量」は日本の豪雪地よりは少なく、せいぜい日本で例えれば宮城県の一部・長野県の中南部レベルと言えます。「降りやすい」ことが「豪雪」を直ちに意味しない場合がある点がポイントです。
緯度が高い場合でも、西海岸側については平地の雪は少なめです。例えば、シアトルの降雪量はワシントン・ニューヨークを大きく下回ります。例外がある点も確認しておく必要があります。
標高が高い地域の場合、緯度が高くなくても雪が降りやすい場合があります。例えば高地に位置する大都市の典型であるソルト・レーク・シティ、デンバーでは、降雪量が日本で例えると金沢・鳥取並みと多めですが、アメリカ国内の位置関係では「北でも南でもない」環境、すなわち「真ん中」くらいにあたります。
豪雪地帯は?
アメリカ国内の「豪雪地帯」を大きく分けると、3エリアに分けられます。
五大湖周辺(スノーベルト) | ・平地でも広範囲で雪が多くなるアメリカ唯一の地域 ・都市部でも1日30〜50cm程度の大雪(ドカ雪)」が見られる場合あり ・雪が降るメカニズムは日本の「冬型の気圧配置」と同じ(湖水効果雪) |
カスケード山脈周辺 | ・海からの湿った気流が標高の高い山脈にぶつかり、大量の雪を降らせる ・豪雪となる場所に都市部は含まれない ・山地の積雪は世界でも特に多いレベル ・日本の日本海側山岳地帯と同等か、それを上回るスケールで積もる |
アラスカ州の南側(一部) | ・海からの湿った気流、低気圧の影響でアラスカ湾側の山地を中心に豪雪に ・山地の積雪は世界でも特に多いレベル ・夏の一部を除き、長い期間雪の影響を受けやすい ・「バルディーズ」など人がある程度住む環境でも、2m以上積もる場合あり |
「人が一般的に住む都市・集落」単位で見た場合、日本の豪雪地帯に近い場所は一部あっても、アメリカ国内にそれを上回る場所はありません。但し、人が住まない山岳地帯については、日本の日本海側山岳地帯で積もる雪と同等か、それを場合によっては上回るスケールになっている場合もあります。
雪が降らない地域は?
アメリカ国内で雪が降らない地域は、基本的に「緯度が低い」地域です。
フロリダ州・アラバマ州・ミシシッピ州・ルイジアナ州・テキサス州の特に南側は、雪が全く降らないか、降っても歴史的なレベルで「まれ」な環境で、雪とはほぼ無縁の地域です。
また、ある程度緯度があっても、西海岸沿い(カリフォルニア州の一部)は、海からの温暖な気流が入るため、やはり雪は降らない地域が広範囲に渡り見られます。沿岸部の場合、サンフランシスコ・ロサンゼルス周辺では、雪が降ることは数十年に一度レベルの現象と言え、事実上雪とは無縁です。
他方で、平地で雪が降らない地域であっても、標高が高い場合、雪が見られる場合もあります。例えばロサンゼルス近郊の山々では、雪が当たり前に積もる環境となっています。
ニューヨークなど大都市の雪は?
アメリカ国内には多数の大都市がありますが、10大都市圏の「雪」の基本的な特徴はどうなっているのでしょうか?
都市 | 大まかな雪の傾向 | 年間降雪量 |
---|---|---|
ニューヨーク | ・雪は時折積もる(降雪量は日本で例えると仙台より少し多い程度) ・まれに20cm以上など大雪のケースも | 68cm |
ロサンゼルス | ・市街地での雪は、数十年に一度レベルでほぼ降らない ・都市圏周辺の山地では雪の場合あり | なし |
シカゴ | ・かなり寒い気候、湖が凍ることも ・雪はある程度積もるが、20cm以上積もるケースはまれ ・日本で例えると長野県の松本に相当する降雪量 | 99cm |
ダラス | ・年1回程度わずかに積もる程度の気候 ・日本で例えると東京より積もる頻度が少なく、大阪よりはやや頻度が多い | 4cm |
ヒューストン | ・10年に1度積もるかどうかの気候 ・すなわち、雪とは完全に無縁ではないが「ほぼ無縁」 | 0cm |
ワシントン | ・ニューヨークほどではないが、時に積もる場合あり | 35cm |
フィラデルフィア | ・時にまとまって積もる地域(降雪量は日本で例えると仙台並み) ・ニューヨークより少し頻度が少なく、ワシントンより少し頻度が多い | 59cm |
マイアミ | ・温暖で雪とは無縁の気候 | なし |
アトランタ | ・雪はまれな現象 ・日本で例えると東京に近い降雪量 | 6cm |
ボストン | ・ある程度雪が積もりやすい(日本で例えると新潟市並みの降雪量) ・時に20〜30cm以上の積雪も | 125cm |
地域差が大きいですが、ニューヨーク・ボストン・シカゴなどの主要都市でも、ある程度雪が積もる点が特徴です。但し、札幌のような典型的な豪雪地帯は、アメリカの大都市には存在しませねん。