日本で最も広い路線網を持つ近鉄電車(近畿日本鉄道)は、特急料金が必要な「近鉄特急」を数多く運行していることで知られています。
近鉄特急は、特急料金不要の列車と比べ「最優先」で運行されるため、基本的に近鉄線では「最も早く移動可能」なアクセス手段です。
こちらでは、近鉄特急について「速さ」というテーマのみを掘り下げて広く解説していきます。
近鉄特急の最高速度は?
名阪特急(大阪〜津〜名古屋) 阪伊特急(大阪〜伊勢志摩方面)の一部 名伊特急(名古屋〜伊勢志摩方面)の一部 京伊特急(京都〜伊勢志摩方面)の一部 観光特急しまかぜ | 130km/h |
阪伊特急(大阪〜伊勢志摩方面)の一部 名伊特急(名古屋〜伊勢志摩方面)の一部 京伊特急(京都〜伊勢志摩方面)の一部 | 120km/h |
阪奈特急(大阪〜奈良) 観光特急「あおによし」 | 105km/h |
京橿特急(京都〜大和西大寺・橿原神宮前方面) 京奈特急(京都〜奈良・京都線内の速度) 吉野特急(南大阪線の特急) 観光特急「青の交響曲」 | 100km/h |
近鉄特急は、路線ごとに最高速度は一部異なります。「看板列車」である「名阪特急ひのとり」など、特に重要度が高い特急は最高速度130km/hとなっており、JR西日本の在来線で言えば「新快速」や「特急サンダーバード」、首都圏の電車で言えば「特急ひたち」や「つくばエクスプレス線」と同じ最高速度となっています。
大阪・京都〜奈良間などについては、必ずしも速さに特化していない路線の環境(通勤通学利用がかなり多い)であるため、最高速度は100km程度に留まります。なお、最高速度が100kmを下回る特急は存在しません。
近鉄特急の所要時間は?
特急・区間 | 距離 | 所要時間の目安 |
---|---|---|
名阪特急(大阪難波〜近鉄名古屋) | 189.7km | 約2時間5分〜 |
阪伊特急(大阪難波〜宇治山田) | 139.2km | 約1時間40分〜 |
名伊特急(近鉄名古屋〜宇治山田) | 107.1km | 約1時間20分〜 |
京伊特急(近鉄京都〜宇治山田) | 157.5km | 約2時間〜 |
京奈特急(近鉄京都〜近鉄奈良) | 39.0km | 約35分〜 |
阪奈特急(大阪難波〜近鉄奈良) | 32.8km | 約35分〜 |
京橿特急(近鉄京都〜橿原神宮前) | 58.4km | 約50分〜 |
吉野特急(大阪阿部野橋〜吉野) | 64.9km | 約1時間15分〜 |
主な特急・区間の距離・所要時間は上記の通りです。所要時間は急行など一般列車と比べると原則として「必ず速い」存在です(奈良線のラッシュ時の特急などは例外が生じる場合あり)。
但し、名阪特急・伊勢志摩方面を結ぶ特急については「最速のパターン」と「停車駅がやや多いパターン」に分かれている場合があります。全く同じルートを走る特急でも、一部で停車駅が異なる場合がある点に注意が必要です。
距離と所要時間の関係を見た場合、名古屋・伊勢志摩方面などを結ぶ特急で距離あたりの所要時間が短く(特に速い)、奈良方面を結ぶ特急ではそれと比べると距離あたりの所要時間がやや長い特徴があります。
他の交通手段と比べると(主要都市間)
区間 | 最高速度 | 所要時間 | 料金 |
---|---|---|---|
大阪〜名古屋 | 【近鉄特急】130km/h 【新幹線】285km/h | 【近鉄特急】約2時間5分〜(大阪難波駅〜近鉄名古屋駅) 【新幹線】約1時間〜(大阪駅〜新大阪駅〜名古屋駅) | 【近鉄特急】4,990円 【新幹線】6,680円 |
名古屋〜伊勢 | 【近鉄特急】130km/h 【JR快速みえ】120km/h | 【近鉄特急】約1時間20分〜 【JR快速みえ】約1時間30分〜 ※いずれも名古屋駅〜伊勢市駅 | 【近鉄特急】3,080円 【JR快速みえ】2,040円 |
京都〜奈良 | 【近鉄特急】100km/h 【JRみやこ路快速】110km/h | 【近鉄特急】約35分〜(京都駅〜近鉄奈良駅) 【JR在来線】約41分〜(京都駅〜JR奈良駅) | 【近鉄特急】1,280円 【JR】720円 |
大阪〜奈良 | 【近鉄特急】105km/h 【JR大和路快速】120km/h | 【近鉄特急】約35分〜(大阪難波駅〜近鉄奈良駅) 【JR大和路快速】約40分〜(JR難波駅〜JR奈良駅) | 【近鉄特急】1,200円 【JR】570円 |
JRと競合する主な区間で見た場合、大阪〜名古屋間では出発地によっては新幹線の倍程度の時間を要しますが、料金は安くなっています。近鉄特急は「難波(ミナミ)」発の場合、乗り換えが不要のため、
利用の多い名古屋〜伊勢間については、近鉄特急の方がやや速い一方、運賃のみで利用可能なJR快速みえがコスト面ではメリットがあります。但し、本数面では近鉄特急が多いため、シェアは近鉄特急が圧倒的です。
京都・大阪〜奈良間については、「特急」は所要時間以上に「必ず座れる」という「着席保証」の側面が強い電車です。座れない場合も問題ない(単に移動するだけ)のであれば、快速急行・急行などの一般列車、JR線の快速電車をご利用頂いても時間面では大きな違いはないと言えます。
速いだけがメリットではない
近鉄特急は、実際のところ「速さ」が最大のメリットとは言えません。
もちろん、急行やJRの在来線電車と比べ「速い」ことも大きな利用上のメリットですが、どちらかと言えば「ちゃんと座れる(着席保証)」点や、「乗り心地のよいグレードの高い座席」を利用出来る点が、より大きなメリットと言っても過言ではありません。
例えば、看板列車である「名阪特急ひのとり」は、いくら130km/hの最高速度を活かしても、大阪〜名古屋間の所要時間は「新幹線」には全くかないません。一方で、新幹線より「割安」な料金水準で「JRのグリーン車並みかそれ以上」の座席が利用出来るという「くつろぎ・快適性」という点では、利用するメリットは非常に大きくなっています。
観光で利用が多い京都・大阪〜奈良間についても概ね同様で、所要時間面では「やや速い」程度ですが、一般列車は混雑が目立つ(座れない)傾向がある中で、「必ず座れる」状況となる点において、利用するメリットは非常に大きいと言えます。
また、「乗ること」そのものが目的になる「観光特急」も複数運行(観光特急「しまかぜ」・観光特急「あおによし」・観光特急「青の交響曲」)されており、特急をご利用になる上でのニーズは多種多様です。
まとめ
・近鉄特急の「最高速度」は路線、区間ごとに異なる場合あり
・名阪特急「ひのとり」など看板となる主な特急列車の最高速度は「130km/h」
・大阪〜名古屋間や伊勢志摩方面を結ぶ特急は距離あたりの所要時間が短い(速い)
・名阪特急は「新幹線」と比べると最高速度は低いため、所要時間は長い
・近鉄特急は「所要時間」だけではなく「快適性」や「着席保証」などのメリットも大きい存在