JR「大阪近郊区間」の基本を知る【エリア・運賃やきっぷの取り扱いなど】

交通・地理

JRの運賃・きっぷの制度上では、「大都市近郊区間」と呼ばれる一部の大都市圏周辺の路線のみに設定された区分があり、その他のエリアを利用する場合と比べ、一部で各種の「取り扱い」が異なる場合があります。

具体的には、東京・大阪・福岡・仙台・新潟の5都市周辺に設定されており、名古屋・札幌・広島といった大都市近郊への設定はありません。

こちらでは、大都市近郊区間のうち「大阪近郊区間」について、各種の基本的な位置づけを解説していきます。

エリア

大阪近郊区間のエリアは、大阪府のみならず兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県にかけて広がっており、直線距離で150km以上、電車の移動距離では200km以上離れたような区間も含まれています。

一方で、大阪を発着する主要な列車のうち、全ての行き先が「大阪近郊区間」に含まれている訳ではありません。

例えば、「新快速電車」は福井県の敦賀駅まで行くものがありますが、大阪近郊区間は敦賀駅の2駅手前の「近江塩津駅」が北の端にあたります。また、福知山線についても「丹波路快速」は京都府北部の福知山駅方面まで行くものがありますが、大阪近郊区間は兵庫県内の「谷川駅」までとなっており、必ずしも大阪駅を発着する列車の範囲が大阪近郊区間という訳ではありません。

また、JRの路線図で「近畿エリア」として表示されている区間よりも狭く、完全には一致しません。大阪近郊区間というものは、運賃・きっぷの取り扱い上の区分であり、JR西日本が乗客の方に案内する際に用いられる区分ではないため、通常ご利用頂く際に耳にすることはほぼないと言えます。

きっぷの有効期間は「当日限り」

大都市近郊区間で列車を利用する場合、紙のきっぷであっても有効期間(起源)は「当日限り」となります。

そもそも「交通系ICカード(モバイルICOCAなども含む)」は利用した当日以外使うことが出来ませんが、紙のきっぷについては、大都市近郊区間以外であれば距離に応じて翌日なども有効期間に含まれる場合があります(100km〜200km=2日・200km〜400km=3日など)。

例えば、姫路駅から京都駅までは「100km以上」の区間ですので、大都市近郊区間以外を含む移動であればきっぷの有効期間は2日となる所ですが、この区間は大阪近郊区間のみに含まれますので、きっぷは当日に限り有効となります。なお、区間に「大阪近郊区間以外」を含めるときっぷの有効期間は複数の日にまたがる場合があります。例えば「大阪駅〜敦賀駅」間であれば、敦賀駅は大阪近郊区間外で、移動距離は100〜200kmの区分にあたりますので、きっぷの有効期間は2日となります。

ポイントは、「少しでも大阪近郊区間外を含む」と、紙のきっぷの有効期限が伸びる場合がある点と言えるでしょう。

途中下車不可

大都市近郊区間で列車を利用する場合、「当日限り」ルールに加え、「途中下車不可」のルールもあります。

こちらについても、「交通系ICカード(モバイルICOCAなども含む)」ではそもそも途中下車は不可能ですが、「紙のきっぷ」で「大都市近郊区間外を含む移動」かつ、「100kmを上回る距離」であれば、同じ駅に戻らない限り何度でも途中下車が可能です。

例えば、京都駅〜海南駅(和歌山県)のきっぷであれば、一部が大阪近郊区間外に含まれるため、途中下車は自由です。一方で、それほど距離は変わらない京都駅〜和歌山駅間のきっぷは「全て大阪近郊区間内」になってしまうため、途中下車は出来ません。

ポイントは、「少しでも大阪近郊区間外を含む」と、途中下車が可能になる場合がある点と言えるでしょう。

最短ルート以外も利用可

大都市近郊区間内では、路線の数が多いため●●駅〜〇〇駅を移動する際に「複数のルート」が利用出来る場合があります。

典型的な例としては、例えば大阪府八尾市の「JR久宝寺駅」と大阪市都心部の「JR大阪駅」を結ぶ場合が挙げられます。

経由路線ルート
おおさか東線経由久宝寺駅〜(放出・新大阪経由)〜大阪駅(うめきた地下ホーム)
大和路線・大阪環状線(西九条)経由久宝寺駅〜天王寺駅〜(西九条経由)〜大阪駅(地上)
大和路線・大阪環状線(鶴橋)経由久宝寺駅〜天王寺駅〜(鶴橋・京橋経由)〜大阪駅(地上)
おおさか東線・学研都市線・大阪環状線経由久宝寺駅〜放出駅〜京橋駅〜大阪駅(地上)

久宝寺〜大阪間は、少しマニアックなケースも含めた場合、極端に遠回りせずに移動できるルートが4種類もあります。大都市近郊区間内においては、最短ルート以外の経路を利用することが可能ですので、「久宝寺〜大阪」間のきっぷで、距離に関わらずどのルートも利用可能となっています。

なお、この運用上のルールを利用して、初乗りなどごく短い区間のきっぷで、数百キロ単位の移動を行ういわゆる「大回り乗車」という乗車方法を、鉄道ファンの方などがされる場合がありますが、こちらについては利便性を高める移動を目的としたものではなく、趣味的な要素が強い活動ですので、こちらの記事では詳細は取り扱いません。

一部で新幹線を含む

大阪近郊区間内【山陽新幹線】西明石駅〜姫路駅〜相生駅
【東海道新幹線】米原駅〜京都駅〜新大阪駅
大阪近郊区間外【山陽新幹線】新大阪駅〜新神戸駅〜西明石駅

大都市近郊区間は、そのエリア内に新幹線の路線が走っている場合、それを含む場合と含まない場合があります。

東京近郊区間では新幹線は一切含まれていませんが、大阪近郊区間については、山陽新幹線の「新大阪〜西明石」間は大阪近郊区間ではない一方「西明石〜相生」間、また東海道新幹線の「新大阪〜米原」間は含まれるという、やや変則的な取り扱いが見られます。

新幹線を利用する場合であっても、近郊区間の基本的な決まりは同じであり、新幹線で新大阪〜米原間を移動する場合、きっぷは当日限り有効で、中間駅の京都駅で途中下車することは出来ません。これが、新大阪〜名古屋間のきっぷになると、大阪近郊区間外を含むため有効期間は2日間・途中下車可能になります。

まとめ

・大阪近郊区間は運賃やきっぷの取り扱いを区分する「大都市近郊区間」のうちの一つ
・エリアは大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県にまたがる広範囲
区間内のみを利用する「きっぷ」「当日限り」かつ「途中下車不可」
・区間内の移動は「最短ルート」以外も利用可能
一部では新幹線のルートを含む(但し新大阪〜西明石間は含まない点に注意)