【近鉄】「快速急行」と「急行」の違い・基本を詳しく知る【路線・停車駅・位置づけなど】

交通・地理

近鉄電車には「最も速い列車」としては、「特急」がありますが、こちらは「特急料金」が必要です。一方で、「運賃」だけで乗れる「速い列車」としては「快速急行」・「急行」があります。

こちらでは、近鉄線の「快速急行」と「急行」の違いについて、運行路線など基本的な情報をまとめて見ていきます。

運行路線

快速急行広く運行】奈良線
【本数少】大阪線・鳥羽線(線内各停・片方向のみ)
急行広く運行】奈良線・京都線・橿原線・天理線(線内各停)・大阪線・名古屋線・山田線・南大阪線・吉野線(線内各停)
【本数少】長野線(線内各停)・鳥羽線(線内各停)

近鉄線の「快速急行」は、奈良線が主な運行路線であり、それ以外の路線は大阪線系統でわずかに走る以外、運行はありません。

一方で「急行」は、かなり幅広い路線で運行されており、運行がない路線の方が少ないと言えます。但し、ローカル色の強い路線では、線内は各駅に停車し、幹線と言える路線に乗り入れる区間のみ急行運転となる場合が大半です。

大まかに言えば、近鉄で最も利用者の多い奈良線こそ「快速急行」が主役と言えますが、それ以外の路線では「急行」が特急以外の列車の主役となっている場合が多い状況です。

主な路線本数(昼間時)
奈良線【快速急行】1時間4本(平日)・3本(土日祝日)
【急行】1時間2本(平日)・3本(土日祝日)
京都線系統【急行】1時間3本(京都〜大和西大寺)・1時間2本(大和西大寺〜橿原神宮前)
大阪線系統【急行】1時間3本(大阪〜名張)・1時間1本(名張〜伊勢中川)
名古屋線系統【急行】1時間3本(名古屋〜松阪)・1時間1本(松阪〜五十鈴川)

停車駅(特急との比較も)

奈良線

特急快速急行急行
大阪難波
近鉄日本橋
大阪上本町
鶴橋
布施
石切
生駒
学園前
大和西大寺
新大宮
近鉄奈良
※普通・区間準急・準急のみの停車駅は表示なし
※この他東花園駅に臨時停車する場合あり

奈良線の快速急行・急行・特急は、停車駅の差はそれほど大きくありません。但し、「快速急行」は大阪市内の鶴橋から奈良県内の生駒まで「ノンストップ」である一方、「急行」は東大阪市内の布施・石切駅に停車するという違いがあります。布施・石切駅へお越しの場合、快速急行にお乗り間違えのないよう注意が必要です。

快速急行と比べ急行はやや所要時間が長くなりますが、平均的には難波〜奈良間で5分未満の差に留まります。そのため、大阪〜奈良間の移動は先に来た方に乗るのが先着となります。

快速急行と特急は新大宮に停車するかどうかの違いに過ぎず、奈良線内を走る特急は「速さ」ではなく「着席保証」という側面が強い存在になっています。

京都・橿原線方面

特急急行
京都
東寺
竹田
桃山御陵前
丹波橋
大久保
新田辺
新祝園
高の原
大和西大寺
西ノ京
近鉄郡山
平端
田原本
大和八木
八木西口
畝傍御陵前
橿原神宮前
※天理線内運行なし各駅
※普通・準急のみの停車駅は表示なし
※▲は時間帯によっては停車
※この他平城駅に臨時停車するケースあり

京都線・橿原線系統の急行電車は、特急と比べかなり停車駅が多いことが特徴です。西ノ京駅については、観光客の利便性を考慮して昼間時のみ停車となっている点にご注意下さい。

大阪線方面

特急快速急行急行
大阪上本町
鶴橋
布施
河内国分
五位堂
大和高田
大和八木
桜井
大和朝倉
長谷寺
榛原
室生口大野
三本松
赤目口
名張
桔梗が丘
美旗
伊賀神戸
青山町
伊賀上津
西青山
東青山
榊原温泉口
伊勢中川
松阪
伊勢市
宇治山田
五十鈴川
※その他鳥羽線内鳥羽のみ各駅各駅
※普通・区間準急・準急のみの停車駅は表示なし
※▲は停車しない列車あり
※名古屋行きの特急は大和八木を通過の場合あり

大阪線は特急が主役と言える路線であり、急行などの停車駅は特急と比べ多くなっています。

特急以外は急行が基本の列車で、快速急行については本数が少なく、青山町より先の区間ではほとんど運行がない点に注意が必要です。

名古屋線方面

特急急行
近鉄名古屋
近鉄蟹江
近鉄弥富
桑名
近鉄富田
近鉄四日市
塩浜
伊勢若松
白子
江戸橋
津新町
南が丘
久居
桃園
伊勢中川
松阪
伊勢市
宇治山田
五十鈴川
鳥羽線内鳥羽のみ各駅
※普通・準急のみの停車駅は表示なし
※▲は停車しない列車あり

名古屋線も大阪線と同様に、特急と急行の停車駅には大きな差があります。

但し、後述の通り車内設備がその他近鉄線内の急行と比べややグレードが高い場合があるため、特急を使わずに長距離を急行で移動される方も少なくありません。

南大阪線方面

特急急行区間急行
大阪阿部野橋
古市
尺土
高田市
浮孔
坊城
橿原神宮西口
橿原神宮前
吉野線内飛鳥・壺阪山・吉野口・福神・下市口・六田・大和上市・吉野各駅普通として各駅に停車
※普通・準急のみの停車駅は表示なし
※▲は停車しない列車あり

南大阪線系統は、例外的に昼間時に「区間急行」と呼ばれる急行より停車駅が多い電車が運行されています。停車駅の違いは尺土〜橿原神宮前の各駅に停車するかどうかのみで、それ以外の停車駅に違いはありません。

快速急行については、通常時の運行はありませんが、吉野山の桜が見頃となる時期には「臨時快速急行」が運行される場合があります。

車両設備

近鉄線の「快速急行」と「急行」は、いずれも特急用ではない一般の「通勤用車両」が用いられます。

但し、路線によって座席の設備・取り扱いはやや異なります。

路線座席トイレ
奈良線概ねロングシート
一部車両のみクロスシート(L/Cカー)
なし
京都・橿原・天理線
南大阪・吉野・長野線
例外なく全てロングシートなし
大阪線・山田線及び鳥羽線(大阪線方面の直通電車)概ねロングシート
一部車両のみクロスシート(L/Cカー)
青山町駅より東側(伊勢中川方面)を結ぶ列車にあり(ダイヤ乱れ時など例外を除く)
名古屋線・山田線(名古屋線方面との直通電車)クロスシートが比較的多め
車両・列車によってはロングシート
あり(ダイヤ乱れ時など例外を除く)

特徴としては、全体的にはロングシート(一般的な通勤電車の座席)が多いですが、都市間の距離が長くJR東海との競合もある三重県内を走る「名古屋線(山田線)」系統では、座席が進行方向を向いた「クロスシート」が比較的多いという点が挙げられます。

また、トイレについても、長距離を走る大阪線系統の一部列車、名古屋線系統の列車には基本的には設備が設けられています。

すなわち、「快速急行・急行」の列車の種類に応じたものではなく、路線の状況に応じた車内設備となっています。

その他備考(運賃など)

近鉄線内の電車は「特急」については「運賃+特急料金」が必要ですが、「快速急行・急行」は「運賃のみ」で利用可能です。

近鉄の場合「座席指定の列車」は特殊な観光列車などを除き「特急」のみですので、快速急行・急行で「必ず座れる」指定席のようなものはありません。「確実に座りたければ特急に」という利用方法が近鉄では基本となっています。

そのため、快速急行・急行では特に大阪・京都・名古屋近郊、奈良市周辺などを中心にしっかりした「混雑」が見られ、通勤ラッシュ時には、周辺の乗客の方と肩や腕が触れるくらいの混雑状況となるケースもあります。

まとめ

・近鉄の「快速急行」は「奈良線」のメインとなる電車
その他主要路線では基本的に「急行」が運行(大阪線系統の一部時間を除く)
停車駅は異なるため注意が必要(奈良線の場合急行のみ布施、石切に停車
車内設備は快速急行、急行の種類による違いはなし(路線により異なる場合あり)
・快速急行と急行は「運賃」のみで乗車可能、代わりに「座れる保証」なし