【大阪難波駅】阪神〜近鉄線(直通)「運賃(きっぷ)の仕組み」とは?

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阪神電車と近鉄電車は、大阪難波駅を境として「阪神なんば線」と「近鉄奈良(難波)線」が直通運転しています。大阪府内のみならず、奈良県内〜兵庫県内も「快速急行」などで直接結ばれており、利便性は高くなっています。

こちらでは、阪神〜近鉄線を大阪難波駅を通過して直通利用する場合について「運賃(きっぷ)」の基本的な仕組み・特徴を解説していきます。

運賃は「それぞれ」に掛かる

大阪難波駅を境に、阪神〜近鉄線をご利用になる場合、直通の電車に乗れば「乗り換え」は不要です。また、ICカード・きっぷをご利用の場合は当然ながら分けることなく精算可能(ICカードの場合は乗車駅・降車駅で改札にタッチするだけ、きっぷの場合は乗車駅で連絡きっぷを購入)なため、ストレスなくご利用頂けます。

但し、「運賃」自体は厳密に見た場合、「阪神線」と「近鉄線」のそれぞれに掛かっています。例えば、神戸三宮駅〜近鉄奈良駅でご利用になる場合は、「神戸三宮駅〜近鉄奈良駅間」という運賃の区分があるのではなく、「神戸三宮駅〜大阪難波駅(阪神線)」と「大阪難波駅〜近鉄奈良駅(近鉄線)」の運賃がそれぞれ別々に掛かっており、意識しなくてもその合計を支払っている形になっています。

他社では直通利用した際に「割引運賃」が適用されるケースもありますが、阪神・近鉄線に関しては、大阪難波駅をまたぐ際に運賃が割引となる制度は一切ありません。

割高感のあるケース

阪神・近鉄線の運賃が別々になっているため、一部の区間では、運賃がかなり割高に感じることがあります。

最もわかりやすい例としては、大阪難波駅を挟んで「近い」区間で、大阪メトロでの移動も可能な九条・ドーム前・桜川駅〜日本橋・大阪上本町・鶴橋駅間が挙げられます。この区間では、初乗り周辺の運賃額が、短い距離ごとに必要となる結果、運賃は割高となります。

各駅〜鶴橋駅間の大人運賃は下記の通りです。

区間運賃(阪神〜近鉄)運賃(大阪メトロ)
桜川〜鶴橋460円(距離3.9km)240円
ドーム前(大阪メトロドーム前千代崎)〜鶴橋460円(距離5.0km)240円
九条〜鶴橋460円(距離5.6km)290円

わずか4〜5km程度の距離で460円という運賃額は、阪神電車だけで大阪難波〜神戸三宮間を移動(距離30km以上)する運賃よりも高い水準にあたります。

桜川駅を除き、大阪メトロ線利用時は「乗り換え」が必要ですが、阪神・近鉄線経由の運賃額は1.5倍以上となっており、大阪メトロを使う方が合理的な運賃水準と言えます。

先述の通り、直通した場合の「割引運賃」は阪神・近鉄線には存在しないため、初乗りに近い区間を割引して割高感を抑える救済策はありません。また、阪神なんば線の建設費分に充てるために、西九条〜大阪難波駅間を発着する場合には「60円(4kmまでの区間)・90円(4kmを上回る区間)」の加算運賃が通常の運賃額に加えて必要となっています。制度上不可避な現象として、5km程度の区間で500円近い運賃が発生する状況となっています。

それほど高く感じないケース

阪神・近鉄それぞれの運賃が掛かっていても、割高感を感じにくい区間もあります。基本的に「長い距離」ほどその傾向が大きく、阪神線の運賃は距離に対して比較的安い水準となっているため、JR線と比較した場合はむしろ直通運賃が安くなるケースも見られます。

区間運賃(阪神〜近鉄)運賃(JR)
三宮〜鶴橋660円660円
三宮〜奈良1,100円1,280円

神戸三宮と鶴橋間では運賃はJRと同じで、神戸三宮〜奈良間ではむしろ阪神・近鉄線経由が1割以上安くなります。JRの場合「乗り換え必須」である点を考慮すると、阪神・近鉄線経由の利便性が特に高い区間の1つと言えるでしょう。

定期券などの扱いは?

阪神・近鉄線を直通で利用される場合で「定期券」を購入される場合、一般的な各鉄道事業者と同様に、阪神〜近鉄線の「連絡定期券」という形(ICカード1枚)で定期券が発行されます。

定期券の発売額については、運賃と同様の仕組みで「阪神線」と「近鉄線」の「それぞれの定期運賃」を合計した額で発売されます。連絡定期限定の割引などは、特に設けられていません。

定期運賃については、各社ごとの割引率があるため、運賃の額と比較した場合の割安・割高感は一致しない場合があります。例えば「三宮〜奈良」間で定期券を購入すると、通勤定期券では阪神・近鉄線経由はJR線と比べ高額になり、通学定期券では阪神・近鉄線経由はJR線と比べ極めて安くなります。先述の通り「運賃」そのものは阪神・近鉄線の方が安いですので、通勤定期券については逆転現象が生じ、複雑な仕組みとなっています。

お得なきっぷはある?

阪神・近鉄線を直通してご利用になる場合については、奈良方面へアクセスする場合のみ「お得なきっぷ」の活用でより割安に利用可能です。

名称奈良・斑鳩1dayチケット
発売期間実質的に通年(年度ごとの発売)
利用期間購入した年度内〜翌年度の4月30日まで
発売額2,000円(阪神版)
子ども用の設定なし
乗り放題区間阪神電車全線(阪神版は神戸高速線内除く)
近鉄電車の難波〜奈良間をはじめ周辺区間
奈良交通バスの奈良エリアの主要区間

奈良・斑鳩1dayチケットは、実質的に「いつでも」利用可能なお得なきっぷであり、2,000円という発売額は「神戸三宮〜近鉄奈良」間の往復運賃(2,200円)より安くなっているため、単なる往復きっぷとしてもお得に活用出来る存在です。

乗り放題区間も広く、近鉄奈良駅近辺のみならず「唐招提寺・薬師寺・法隆寺」などへも足を伸ばしやすく、生駒山観光に活用することも可能です。

なお、これ以外については、お正月などに臨時で発売されるような乗り放題きっぷを除き、運賃そのものが安くなる種類のきっぷは特にありません。

まとめ

・阪神〜近鉄線は直通で利用可能、運賃は「それぞれの会社ごとの運賃」を合計した金額
九条〜桜川〜鶴橋間など、大阪難波駅を挟む「短距離」の区間ではかなり割高感のある運賃
三宮〜鶴橋、三宮〜奈良間など、JRと競合する比較的距離の長い区間では運賃は同水準〜安いケースも
定期券も運賃と同様にそれぞれの区間ごとの定期運賃の合計で計算(1枚の連絡定期で発行)
「奈良・斑鳩1dayチケット」の活用でお得に奈良観光が可能