春の後半に位置づけられる「5月」は一年で「最も過ごしやすい時期」とされることも多い時期で、晴れる日も目立ちます。
一方で「温暖化傾向」もあり、「暑さ」を感じやすいケースも近年は多くなっていると言え、「本当に春なのか」という疑問を持たれることもあるかもしれません。
こちらでは、気候という観点から見て5月は「春」と言えるのか、それとも「夏」と呼んで差し支えない時期なのかを考えていきます。
基本の定義上は「春」
大前提として、5月はどのような区分・定義においても「春の一部」です。
気象庁は3〜5月を「春」と区分していますし、辞典などを見ても5月を夏としているケースは当然ながらありません。
言葉の意味として「5月はどの季節」と問われる場合は、「春」としか言いようがない時期です。
「夏日」が多い時期
5月は、気温の区分上で最高気温25℃以上となる「夏日」となる日が比較的多い時期です。
都市 | 平年夏日日数(平年値) |
---|---|
東京 | 12.4日 |
名古屋 | 15.4日 |
大阪 | 16.1日 |
福岡 | 13.4日 |
大阪など一部では夏日となる比率が平均して半分を上回っており、「春」でありながら「夏日」の方が多い事態となっています。
夏日となる場合は、既に「熱中症リスク」が注意レベルを上回っていることが多く、5月は春だからまだ大丈夫。ということにななりません。
その意味では、5月=「春」らしいイメージを持ちすぎず、気温の面では「夏に近い状況」となる点に留意しておく必要があります。
真夏日は少ないが時折見られる
夏日ではなく最高気温30℃以上の「真夏日」で見た場合、その日数はまだ多くありません。
都市 | 平年真夏日日数(平年値) |
---|---|
東京 | 0.6日 |
名古屋 | 1.6日 |
大阪 | 1.1日 |
福岡 | 0.9日 |
日数は多くても5日程度で、観測されない年も一部見られます。真夏日が続くと一般的には「夏本番」のイメージがありますので、その意味では5月は「夏」とまだ距離がある時期と言えるでしょう。
但し、少ないといっても観測されることはあるため、一部の日では夏と余り変わらない暑さ対策が求められることになります。
北海道で過酷な暑さも?
5月に「猛暑」となるケースは国内全体で見るとほとんどありません。
しかしながら、北海道の道東地方では、真夏でも見られないくらいの過酷な記録的暑さに見舞われた事例があります。
地点 | 観測史上最高気温 | 観測日 |
---|---|---|
北見 | 38.1℃ | 2019年5月26日 |
紋別 | 37.0℃ | 2019年5月26日 |
網走 | 35.4℃ | 2019年5月26日 |
頻度としてはかなりまれな現象で、広く猛暑日となったようなケースは上記の2019年の事例のみですが、中国大陸方面から非常に暖かい空気が流れ込み、加えて「フェーン現象」の影響でより地上付近の気温を高める効果が生じた場合に、このような特殊な事例が生じることがあります。
東京や大阪などで、これほどの暑さを5月に観測したことはありません。道東地方は5月に雪が降るケースもあるような環境ですので、冬の天気と真夏以上の暑さが同居することがあり得るという点で、日本全国で見てもかなり特殊な環境と言えるでしょう。
沖縄の5月は「夏」?
日本国内で最も温暖な沖縄(南西諸島)地方については、暖かい季節を常に「先取り」した特徴が見られますが、5月は「夏」に含まれるかと言えば、非常に微妙な所です。
確かに気温はその他地域と比べ高く、30℃程度の最高気温となるケースも見られる一方、気候面では「梅雨」真っ只中と言える状況です。年によってはかなり雨が多く、日照時間が少ない場合もあります。
一方で、梅雨の状況は年ごとに極めて差が大きく、全くもって梅雨らしくない沖縄の5月というケースも存在します。
時にはかなり夏らしい雰囲気が見られることもあれば、天候不順で夏らしさを感じにくい場合も多いというのが、沖縄の5月の状況と言えるでしょう。
広く気候を見た場合は「春」の途中・延長線上
気温の数字ではなく広い意味で気候全体を見た場合、5月は「春」の途中・延長線上に位置づけられます。
ポイント | 5月 | 真夏 |
---|---|---|
影響を受ける高気圧 | ・移動性高気圧が主 ・一部オホーツク海高気圧 | ・太平洋高気圧 ・オホーツク海高気圧 |
雨の要因 | ・主に周期的に通過する低気圧 ・梅雨前線が北上する場合「梅雨のはしり」に | ・南からの暖かく湿った気流 ・北東からの冷たく湿った気流 ・秋雨前線(梅雨前線) ・台風 |
5月の天気は基本的に「周期的」に変わりやすく、その要因は西から東に高気圧・低気圧が移動しやすい状況に見られます。
一方で、真夏は広く太平洋高気圧に覆われ、長期間晴れが続くこともあれば、海からの湿った気流の影響で天候が悪化するケースもあり、その気圧配置のパターンは大きく異なります。
ポイント
・総合的に見た場合、5月はまだ「夏」とは距離がある時期です。
・但し、一部地域で時に猛暑となるケースがあります。また、熱中症リスクが高まる「夏日」となることも多く、状況に応じ「夏に準ずる」イメージは持っておく必要があります。