【雪雲】Lモード・Tモードの雲とは?パターンを知る

自然・気候

日本海上などに現れる雪雲は、一般に「筋状の雲」と呼ばれますが、実際には様々な雲の形(パターン)があり、一概に同じような種類に区分できるものではありません。

こちらでは、その中でも典型的なものの一つである「Lモード」と「Tモード」について、基本を解説していきます。

Lモードの雲とは?

概要

Lモードの雲は、日本付近で「冬型の気圧配置」となる際に海上で生じ流れ込む雲のパターンのうち、最も典型的なもので、「風が吹く向き」と「雲の向き(形)」が同じ方向(平行)となっています(平行型筋状雲・平行型ロール状対流などと呼ばれる場合あり)。

一般に「筋状の雲」と呼ばれるものは、このLモードの雲を指すものです。

発生要因・構造

Lモードの雲は、「ベナール型対流」と呼ばれる海上で寒気の影響を受けて発生する雲にあたります。海上での空気の動きは下記の2要素によって決定されます。

対流活動(鉛直方向)温暖な海面と上空の非常に冷たい空気の温度差で生じる(上昇気流)
季節風(平行方向)シベリア高気圧とアリューシャン低気圧の気圧差により生じる主に北西からの風

これらが「合わさる」と、形態としては「らせん状」に吹く風が発生します。らせん上の風は、大まかに言えば風の進行方向右側寄りへ向けて回転するものと、左側寄りに向けて回転するものがセットになっており、両方の風がぶつかるような形になる場所で上昇気流が強まり、筋状の雲が発生します。

この雲・らせん状の風は、大きくは季節風の吹く向きに沿って流されていく形になるため、結果として季節風の向きに沿って直線上に並ぶ「筋状の雲」として現れることになります。

衛星画像で見た場合

出典:気象庁ホームページ
https://www.jma.go.jp/bosai/map.html
衛星画像(2023年11月25日9時30分)

Lモードの雲は、衛星画像で非常に容易に判別が可能です。

筋状の雲という名の通り、海上を覆う形で比較的直線的に列を成して並ぶ雲が見られれば、それはLモードの雲です。比較的低緯度の地域(沖縄周辺など)や冬型の気圧配置が弱まるタイミングでは風が弱まる結果、列を成す雲ではなく潰れた雲の塊のようになる場合も多く、そういったケースでは「Lモード」と呼ばないことが通常です。

なお、発生要因であるベナール型対流は、寒気が入る場所であれば全世界の海上で発生しますので、日本周辺以外の場所でも風が比較的強く吹く場合は似たような現象が見られることもあります。

雪の状況

Lモードの雲は、「冬型の気圧配置」となる際に日本海側に雪や雨を降らせる最も基本的な要因です。

どの程度の雪になるかは状況次第であり、寒気が強く雲が発達する場合は大雪となる場合もありますが、断続的な雪に留まり気温が低い場合を除き余り積雪を増やさない場合もあります。一般にJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)に伴う雲、Tモードの雲と呼ばれる雲パターンと比較した場合は、大雪の発生割合は下がります。

範囲としては、Lモードの雲は内陸側に深く入り込んで山沿いを中心に大雪を降らせやすい傾向(山雪型の気圧配置で顕著)があり、少なくとも山陰〜北陸の日本海側では、「沿岸部」の雪をもたらす主要因とは言えません。

Tモードの雲とは?

概要

Tモードの雲は、日本付近で「冬型の気圧配置」となる際に日本海上で生じ流れ込む雲のパターンの一種で、「季節風と直交する向き」に雲が向くことが特徴です(直交型筋状雲・直交型ロール状対流などと呼ばれる場合あり)。

北陸〜東北地方にかけて大雪をもたらす主な要因の1つとなっています。

発生要因・構造

Tモードの雲は、大雪の要因としてニュースなどでも時に解説されることがある「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」と呼ばれる風の収束帯に沿って発生する「帯状対流雲」と呼ばれる雲のまとまりの一部です。

具体的には、JPCZのライン周辺には塊状の積乱雲などが次々に連なっていますが、Tモードの雲は概ねその北東側(風の吹く方向から見た場合左側)にある程度の幅を持って連なるように存在します。

雲の構造については全て把握されるほどに研究が進んでいるとは言えませんが、JPCZによる発達した積乱雲の上部から主に南西の風によって吹き出す層状の雲(上層)と、日本海の海水温と寒気の影響で生じる対流性の雲(下層)の両方が関係した雲であると考えられます。

衛星画像で見た場合

出典:気象庁ホームページ
https://www.jma.go.jp/bosai/map.html
衛星画像(2023年11月30日9時30分)

Tモードの雲は、衛星画像で比較的容易に判別が可能です。

Tモードの雲は、大まかに言えば雲の向きが陸地に概ね平行な向きの雲であり、陸地の側を向いているその他の雲とは異なる姿をしています。衛星画像のコマ送りをすると、陸地に概ね平行な向きの雲が、そのまま陸地の方角へ進んでいく状態を確認することが出来ます。

上記の画像では、山陰沖〜東北南部付近にかけて広範囲にTモードの雲が見られます。

雪の状況

Tモードの雲は、日本海側に大雪をもたらす主な要因の1つです。強い冬型の気圧配置となる場合、JPCZ周辺の巨大な雲の塊が直撃することによって大雪となるケースも多いですが、実際には特に富山県・新潟県・山形県・秋田県などにかけては、JPCZそのものから離れていてもかなりの大雪となる場合があります。

そのような場合、Tモードの雲が長時間掛かることにより、止み間のほとんどない雪が続いている場合が少なからず見られます。

なお、特に富山県東部〜新潟県内の雪の降り方については、完全には判明しきってはいない複雑なメカニズムが重なり合っている場合があるため、一概にTモードの雲だけが要因と言うことは出来ない点も確認しておく必要はあります。