雪マークが付く予報は、体感的には「外れやすい」イメージを持ちやすい存在です。
こちらでは、雪の予報が外れやすいと感じてしまう要因について、具体的なポイントをまとめて解説していきます。
雲の動きが局地的
主に日本海側などで「冬型の気圧配置(西高東低)」になる際に雪の予報が外れやすいと感じる場合、基本的にその地域における「雪雲の動き」がかなり局地的になっていることが要因です。
一例として、日本海側に大雪をもたらす「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」による雲の帯は、ある地域に全体的な影響を与えることもありますが、比較的多くのケースで、強い雪雲が掛かるエリアが比較的狭い範囲に留まる場合もあります。確かに雪は積もったけれども、ある場所では半日で30〜50cm程度、ある場所では10cm未満など、かなりの差が生じることが珍しくありません。また、わずかな風向きの変化で雪が降る、降らない地域に分かれることもあります。
後述の通り、予想モデルには限界があるため、実際に雲が掛かってみなければわからない面もあります。太平洋側の雪予報と比べると降る・降らないの精度は高いと言えますが、「雪の降る量」について局地的な状況を完全に予測することは容易ではありません。
わずかな気温差・ルートの違いで急変
主に太平洋側などでまれな雪をもたらす「南岸低気圧」の場合、わずかな気温差・わずかなルートの違いで全く異なる気象状況となりやすく、雪の予報が外れやすいと感じることがあります。
気温については、雲が掛かる際の「寒気」の強さも重要ですが、南岸低気圧の影響を受ける前の「冷え込み」次第で雪の降りやすさ・雨への変わりやすさが左右されやすく、これは予想以前に「実際の状況」にならないと分からない点が多々あります。
ルートについては、わずかに北寄りのルートを通ると雨になり、わずかに南寄りのルートを通ると何も降らないようなケースがあり、直前まで判断しづらいことが多々あります。
当たっていても外れた状態?
そもそも気象庁が発表する基本的な天気予報(府県天気予報)は、その地域の全体的な状況(平均的状況・確率が高い現象)を示すものです。
「〜県南部の予報」と言う場合、実際にはその地域の中で天気が大きく異なる場合も、全体的な状況に基づくものとなるため、「その場所の予報としては当たっている」場合でも、「ある場所では外れているように感じる」という状況になりがちです。予報文には「山地は雪」、「時々雪」といった形で「含み」を持たせることも可能ですが、多くの人は「お天気マーク」のみで判断するため、実際の状況との乖離を感じやすくなっています。但し、これはあくまでも予報区分の問題で、予報自体に問題がある訳ではありません。
典型的なケースは「京都府南部」・「滋賀県南部」・「三重県北部」で、北側の山沿いではかなり雪が多くなりやすい地域がある一方、平地の雪はまれであるため、地域によっては天気予報のマークのみに頼りすぎると状況判断を誤りやすくなっています。
予報モデルには限界あり
気象庁は、スーパーコンピューターを活用し気象予報の精度を高めて来ています。近年は特に大きなスケールの現象は予測がかなり正確になってきていますが、雪の予想は局地的な雲の動きや、局地的な気温の状況、局地的な風の状況、地形に大きく左右されるため、予測を行う数値予報モデルの性能には限界が生じます。
数値予報モデル | 格子点間隔 | 予報に適したスケール |
---|---|---|
GSM | 20km | 100km以上 |
MSM | 5km | 25km以上 |
LFM | 2km | 10km以上 |
気象予測を行う上での基本的な数値予報モデルとしては、概ね上記の3種類があります。このうちGSMは広いスケールを予測するもので、局地的な雪雲の発生は予測しづらい存在です。MSM・LFMについては局地的なスケールを対象としていますが、ある場所で集中的に発生するような雪雲や、その微妙な動きまでは完全に把握出来ません。また、モデルの特性に応じて「誤差」が存在し、南岸低気圧通過時などには雲の範囲を過大に見積もったりするケースがあるなど、実際の状況を予測することは容易ではありません。