雪の上を歩いていると、その時々の状況に応じて様々な「歩き心地」を感じる場合があります。
体感的な面ではなく、実際の性質として雪の状態に応じて「滑りやすい・滑りにくい」雪は存在するのでしょうか?
雪質は様々
雪が積もる場合、その「雪質」は多種多様です。積もってすぐの新雪・踏み固められた圧雪・水を含んで解けかけた雪・再度凍結した締り雪など、気温・経過時間に応じて積雪は姿を変化させます。
滑りやすさは摩擦の度合い(摩擦係数の低下)が大きく関係しており、雪質の変化によってその度合いは大きく変化しますので、滑りやすさも特に滑りやすいものから、それほど滑りやすいとは言えないものまで様々です。
なお、雪質や積雪の状態を考える場合、歩道などを「歩く」場合を前提とするのか、自動車が「走る」路面を前提とするのか、スキー場のような特殊な環境を前提とするのかにより特徴・状況は異なります。こちらでは、歩道など一般的な積雪している空間を「歩く」場合を前提としています。
どのような雪も「雪がない」状態より滑りやすい
雨が降った時にも言えることですが、通常の何も異常がない地面と比較した場合、雪が積もっていれば必ず滑りやすさは増すと言えます。
雪質によって滑りやすさの度合いに差が生じることは確かですが、この状態の雪質ならば「滑らない」という状態はありません。積雪している場所を移動する場合、とりわけ雪にそれほど慣れていない場合であれば、雪質を問わず慎重に動くのが無難です。
単なる「新雪だけ」は比較的滑りにくい
積もってすぐの「新雪」だけの場合、雪は柔らかい上に、まだ固まった状態にはないため、比較的滑りにくい雪質となっています。摩擦係数は通常の地面よりは小さく滑りやすいですが、ツルツルの状態となった雪と比べると足場を固めやすくなっています。
但し、新雪に隠れてその下に「圧雪」や「氷の板」が存在する場合は、むしろ滑りやすい場所を覆い隠す「トラップ」になる場合があるため、注意が必要です。
シャーベット状の雪は雨に近い状態
気温が高い場合や、雨に変わった場合など、積雪が水を含んでシャーベット状になった状態となることも多くなっています。
こちらは、もちろん水を含んでいるため、通常の地面よりは滑りやすいですが、凍っている訳ではないため、その滑りやすさは雨天時に比較的近いと言えます。
固まった「圧雪」は特に滑りやすい
雪が積もった後、踏み固められられるなどして固まった「圧雪」は、新雪とは全く異なる雪質となり、摩擦係数がより小さくなるため滑りやすくなります。
圧雪の中にも、新雪が踏み固められた状態に近い圧雪と、しばらく経過してより固くなったタイプの圧雪があり、基本的には固ければ固いほどツルツルと滑りやすくなり、最終的には次項で述べる「氷板・氷塊」に変わることもあります。
とりわけ段差がある場所で圧雪状態となっている場合、十分な注意を払って移動する必要があります。
「氷板(氷塊)」になってしまうと極端に滑りやすい
圧雪という状態を越え、気温上昇・低下により何度も「解けて、凍って」を繰り返したような状況では、実質的に積雪というよりは「氷板(氷の板)」または「氷塊」となる状況が生じます。
この場合、スケートリンクは言い過ぎかもしれませんが、それに近い状況となるため、極端に滑りやすくなります。氷板・氷塊は、道路上などにとどまらず歩道でも生じることがあり、ある程度の「凸凹」が発生する場合は、それによってバランスを崩して滑りやすさが増す場合があり、危険度が高まります。
坂道・段差があるような場所で氷板・氷塊状態になっていると、実質的にそこを歩くことは難しくなり、迂回が必要となる場合もあります。