こちらでは「雪」というテーマに注力する形で、気象用語の一つである「シアーライン」という言葉の持つ意味合いについて見ていきます。
概要
シアーラインとは、気象において「風向」または「風速」が急に変化しているところ(シアー)を結んだ線を指す用語です。こういった変化は大きなスケール(総観スケール)でも生じますが、シアーラインという用語を使う場合は、通常はメソスケール(最大2,000km程度まで、多くのシアーラインは概ね数百km程度まで)で発生する現象を指します。
上記の定義に当てはまる状況はかなり多く、様々なパターンが挙げられますが、特に「異なる風向がぶつかる」ような形となっている場合、空気の逃げ場がなくなって上昇気流となるため、雲が発生・発達する場合があり、悪天候をもたらす要因になります。
雪雲の発生
シアーラインは、どの季節でも、また必ずしも悪天候に直結しない形でも発生することがありますが、冬場の場合「雪の少ない地域での降雪」をもたらす場合があるなど、頻度に関わらず特徴的な存在となっています。
「シアーラインによる雪」としてクローズアップされやすい事例は、冬型の気圧配置になるタイミングなどで関東平野周辺でまれに生じるシアーラインに伴う雪雲です。関東平野の雪は「南岸低気圧」が主ですが、東京なども含めシアーラインに伴う雪で積雪した事例が過去には存在します。
シアーラインによる雲は、どの程度の範囲でどの程度の時間掛かるかはは予測が難しく、積もる雪になる前に止んでしまうことも多々あるため、南岸低気圧と同様に実際に「実況(その時)」の段階になってみないと分からない点が多々あります。
JPCZはシアーライン?
シアーラインの定義は「風向」または「風速」が急に変化しているところですので、冬型の気圧配置となる際に、異なる風向きの風がぶつかって発生する「収束帯」もまた、似たような意味に含まれます。
典型的な事例であるJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)も、風の流れという意味で見た場合、シアーラインに含まれる存在です。但し、天気予報・メディアなどで解説される場合、JPCZという表現の方が頻出と言え、あえてシアーラインという表現は用いられない場合が目立ちます(気象庁の予報資料などではシアーラインと呼ばれる場合も多い)。なお、定義を突き詰めれば、寒冷前線・温暖前線なども風向が変化する以上はシアーラインの一種ということになります。
一般向けの表現としては、巨大な収束帯や、前線などに該当しないようなケースにおいて、すなわちそれ以外の呼称が特にない事例について「シアーライン」という用語が使用されるのが基本です。