曇りになっても「蒸し暑い」のはどうして?

自然・気候

暑い日と言えば、よく晴れた天気というイメージが一般的かもしれませんが、実際のところは「曇り」であっても十分に暑さを感じられる場合があります。

また、曇っている場合は暑さといってもカラリとした暑さではなく、むしろ「蒸し暑さ」として体感されることも多く、夜間などはかえって寝苦しさをもたらす場合もあります。

こちらでは、曇りの場合に「蒸し暑さ」を感じる状況について、生活に関わる気象現象として見た場合の基本的な知識をまとめて解説していきます。

昼間の気温上昇はやや抑えられる

曇る場合については、特殊なケースを除いては「気温上昇」自体は抑えられます。

例えば、晴れた場合には都市部などで最高気温が35℃以上(猛暑日)まで上がるケースは珍しくない時代ですが、曇りの日に当たり前に猛暑日となるかと言えば、そういったケースはほぼありません。

むしろ、30℃を大きく上回らないようなケースも一般的に見られ、30℃未満の最高気温となるケースもあります。

気温が上がりづらい要因はシンプルで、雲に覆われれば「太陽の熱」が地上に直接及ぼす影響が少なくなるため、晴れた日ほどには気温が急上昇しないことによります。

但し、後述の通り「気温上昇」が抑えられても「湿度」の影響で「蒸し暑さ」を感じやすくなる場合があります。

夜間は逆に気温低下しづらくなる

曇った日の昼間は気温上昇の度合いが抑えられる傾向がありますが、「夜間(朝晩)」は「気温が下がりにくい」という逆の現象が生じ、かえって蒸し暑さを感じやすくなります。

すなわち、最低気温25℃以上の「熱帯夜」に特になりやすい状態となり、突出して気温が下がらないケースでは、最低気温が30℃近い気温となるケースも見られます。

気温が下がりにくい要因は、雲に覆われると「上空に熱を逃がせない」状態となり、温室のような環境となってしまうためです。

「放射冷却」というキーワードは「冬の冷え込み」に関するニュースなどでよく聞くものですが、同じようなメカニズムで夏の夜間にも気温は下がっており、昼間に熱を溜め込んだ場所から熱を逃がすことで、特に都市部以外の場所では夏でも20℃前後まで下がることがあります(ヒートアイランド現象が目立つ都市部では効果が弱め)。曇ってしまうと、その効果が無くなってしまうため、気温が下がり切らないまま次の日の昼間を迎えてしまうことになります。

雲の影響で「湿度が下がらない」

天気が「曇り」となる場合にも蒸し暑さを感じる大きな要因は「湿度が下がらない・下がりにくい」という点が挙げられます。

後述する通り、風の吹き方や曇る前などの気象状況にも大きく左右されますが、特に変わった状況がない場合として見ると、「晴れている場合」と比べ、「曇っている場合」は「湿度が高め」の傾向となります。

曇ることで湿度が高くなる要因は、概ね下記の2つの要素が関係しています。

飽和水蒸気量が低下・曇ることで気温上昇が抑えられると、より高い気温の場合と比べ「同じ水蒸気量でも湿度は上がる」
・空気中の水蒸気量は、気温が高ければ高いほど「多く含む」ことが可能
そもそも湿っている・雨の後に晴れない場合などは、十分に空気が湿った状態が維持される

直前の気象状況なども重要

単に「曇りの天気」と言っても、その前にどういった気象状況であったのかも重要です。例えば、下記のような気象状況の場合であれば、それぞれの状況に応じた特徴が見られます。

雨の後の「曇り」・湿度がかなり高くなりやすい
・気温の程度は状況に応じ様々で、蒸し暑さも気温次第(比較的高い気温で雨となった場合、かなりの蒸し暑さを後にもたらす)
猛暑の後の「曇り」・熱されたまま「雲で蓋」をしてしまうため、夜間にかなりの高温をもたらす
・ひどい場合は日付が変わる時点で30℃程度の場合も
フェーン現象時の「曇り」・曇っていても比較的乾燥した空気に覆われ、代わりに30℃以上など「かなりの高温」となる場合あり
・但し、基本的には晴れることが多め

寝苦しい「蒸し暑さ」という観点では、猛暑の後に雨が降らずに単に曇ってしまうようなケースが、最もその度合いが強まりやすいと言えるでしょう。

蒸し暑さ・熱中症リスクは「気温の高さ」だけの判断不可

曇りの場合には、一般に「晴れた日と比べ暑くならない」イメージが強く、熱中症リスクも高くないと「勘違い」される方がいらっしゃいます。

しかしながら、熱中症リスク(蒸し暑さの度合い)は、「気温」だけでなく「湿度」も大きく関係しています。

気温暑さ指数に基づく
「熱中症リスク」注意レベル
暑さ指数に基づく
「熱中症リスク」警戒レベル
暑さ指数に基づく
「熱中症リスク」厳重警戒レベル
35℃全ての状況概ね全ての状況湿度55%以上
30℃概ね全ての状況湿度45%以上湿度85%以上
25℃湿度45%以上湿度75%以上該当なし

大まかに言えば、気温が5℃違っても、湿度の高低によっては「同じ熱中症リスク」とされるケースがあります。

夏としては気温が低い場合であっても、湿度がかなり高いような場合は、油断せずに熱中症対策を行っていくことが重要です。

まとめ

  • 曇った場合は「昼間の気温が上がりにくい」ものの、「蒸し暑さ」はもたらしやすい
  • 曇った場合は「夜間の気温が下がりにくい」ため、むしろ寝苦しさを感じやすい場合あり
  • 雲に覆われると「湿度」が上がりやすい
  • その時点の「曇り空」だけではなく、曇る前の気象状況なども重要
  • 熱中症リスク曇った日でも十分に高い場合あり