近年特によく耳にする素朴な「雪」に関する疑問の1つとして、気象庁(気象台)により「初雪」と発表されたはずにも関わらず「雪なんて見ていない、いつ降ったのか?」というものがあります。
これは、一見するとおかしな現象にも思われることですが、実際の所どういった形でこういった「齟齬」が生じてしまうのでしょうか?
こちらでは、初雪を「体感的」に気づきにくい要因を具体的に見ていきます。
起こりうる現象
冬になると、ニュースなどで「〜市で初雪を観測」といった形で初雪が降ったことが報道されることがあります。
但し、初雪のニュースがあったにも関わらず、そこに住んでいる方は「雪など見ていない」と感じられるケースが少なくありません。
大まかに言えば、これは十分に「起こりうる現象」で、むしろ近年はそのパターンが増えていると言えます。場合によっては、発表された「初雪」のうち過半数を大きく上回るケースで、こういった現象が起きているとすら言えるでしょう。
単に気づいていないケース
まず基本的な状況として、一つのパターンとしては降っていてもそれに気づかなかったという単純なケースが考えられます。
初雪というものは、「降雪」と判断される現象が「わずかな時間でも(例えば5分・3分など)」降ればそれは初雪であると観測されるものです。例えば、真夜中に5分だけ降雪が観測されたケースなどは、体感的な意味で気づく人はほとんどいないと言えます。
また、外で作業をされるような方を除き、多くの方は1日で空を見ている時間はかなり限られますので、昼間であっても一瞬の降雪であればほとんどの方は気づかない場合があります。
みぞれ程度のケース
仮に、その「初雪」とみなされる現象を「実際に目にしていた」としても、それでもなお雪とは気づかない場合があります。それは、「降雪」の定義が関係しています。
気象庁が降雪(雪)とみなす現象は、純粋な雪だけではなく「みぞれ」も含まれます。雨の中にごくわずかに雪のかけらが混じっているようなケース、フロントガラスに落ちる際の感触でようやく雨だけではないと分かる程度のケースであっても、みぞれである以上は「降雪」と判断されます。
よほど気象・雪に精通している人でもない限り、ほとんど雨に近いようなみぞれを「初雪」とみなすことはありません。そういった要因で初雪に気づく人がほとんどいないケースもあります。
実感とはかけ離れた「自動観測」
より根本的な要因としては、初雪と気象庁が発表していても、それが本当に雪なのかどうか?という状況を実際には判断出来ないケースも存在します。
近年は気象庁の合理化策・自動化の推進に伴い、ほとんどの気象台などでは「天気」は「自動観測化」されています。自動観測では、何かが降ったことは具体的に観測されますが、そこで「何が降ったのか」は、あくまでも特定の計算式(判別式)に応じ自動的に区分される(この温度・湿度なら雨・みぞれ・雪といったような形)ため、本当に降ったものが何であったのかは、厳密には判断出来ず、実感からはかけ離れた状況が多く見られます。
自動観測化された気象台 | 下記を除く全ての気象台 |
目視観測が残っている気象台 | 各管区気象台、沖縄気象台、新潟・名古屋・広島・高松・鹿児島地方気象台 |
すなわち、目視で観測していた時代には「雨」とされているようなケースを、自動観測の時代には「雪・みぞれ」としてカウントしている場合があります。そのため、各個人が感じる「雪など降っていない」という認識は、勘違い・気づいていない状態ではなく、ほぼ事実である可能性もあります。
まとめ
- 初雪の「発表」と「体感」に違いが生じることは「よくあること」
- 5分程度など「ごく短時間の降雪」でも初雪にカウント
- 目に見えづらい「みぞれ」程度でも初雪にカウント
- 近年は「自動観測化」により、現象を具体的に観測するのではなく「判別式」で雪かどうかを判断