積雪とはどういった状態?定義・分類など基本を詳しく解説【雪質】

自然・気候

積雪(せきせつ)は、一般的には地面に「積もっている」雪を指す言葉です。

「雪が積もっている状態」とは、風景が雪によって白くなっている状態であり、それがうっすら程度でも、大量の雪であっても「積雪が見られる」状態であることに変わりはありません。高山地帯の万年雪や、究極的には「氷河」についても、性質が変化しているとは言え、元のルーツを見れば結局は「積雪」から生じているものの一種と言えます。

降っているだけの場合は「降雪」と呼びます。積雪と降雪は同時に見られる場合もありますが、どちらか片方のみ見られる場合もあります。

気象用語の「積雪」

気象庁が「積雪」という用語を用いる場合、その意味は「雪またはあられ」によって「地面(観測地点周辺)の半分以上が白くなっている」状態として定義されています。すなわち、ごく一部が白くなっているだけでは積雪には該当しません。また、初夏などに「ひょう」が積もる場合も積雪には該当しません。

ややこしい概念としては、「積雪なし」と「積雪0cm」の違いというものがあります。一見すると両者は同じ意味に見えますが、実際の所は大きく異なります。但し、近年は観測の自動化に伴い、「積雪0cm」を観測する地点は少なくなっています。

積雪なし・言葉の意味通り、積雪が見られない状態とみなされれる場合
積雪0cm地面の半分以上が白くなっている一方、積雪計では計測されない程度の積雪
・すなわち「積雪あり」の状態

積雪0cmという区分を設けることは、一般的にはわかりにくい概念となる一方、積雪計では観測できないような積雪も含め把握出来るため、より実際の気象状況に即した観測データとなるメリットがあります。

うっすら積もった「積雪0cm」の状態でも、朝などに路面が真っ白になることがあるため、雪に慣れていない地域では重大な交通障害を発生させる場合があります。観測がなくなることで、データ(積雪を観測していない)と実態(うっすら積もっている)が乖離しやすい状況が生まれていることは否定できません。とりわけ自動観測により積雪0cmの観測が無くなった京都市などはその傾向が顕著と言えます。

積雪の計測

積雪は通常「〜cm」という形で「深さ(量)」として計測されます。積雪に関する量などを示す表現としては、例えば以下のようなものがあります。

積雪深・計測された積雪の量
最深積雪・ある期間で最も多く積もった際の積雪深
降雪の深さ・雪ある時間で区切った場合の積雪の増加量(降雪量)
・例えば3時間で50→60cmに増えた場合の「3時間の降雪の深さ(降雪量)」は10cm
・積雪深とは意味が異なる点に注意
長期積雪・一般には「根雪」と呼ばれる
・30日以上積雪が計測される場合を基準とする(途中で短期間雪が消えても通算する例外基準あり)

重さ

気象庁の情報など、天気そのものに関する情報では取り扱われることはほぼありませんが、積雪に関しては建物などの損壊など「雪害」を発生させることがあるため、その「重量(重さ)」が重要視される場合があります。

単位面積当たりの積雪の重量は積雪重量計などで計測され、「積雪重量」・「積雪荷重」と呼ばれ「kg/m²」や「kN/m²」の単位で表記されます。建築基準法施行令86条等には積雪荷重に関する定めがあり、地域ごとに耐久しなければならない重さの水準が異なります。

雪質による分類

日本雪氷学会においては、積雪の種類を9つの区分に分けています。なお、積雪を表現する言葉は「季語」などを含めるとより多数存在し、必ずしも明確な区分け・定義が存在するものとは言えません。

名称特徴
新雪降ってきた結晶の形が残っているもの(みぞれやあられの場合を含む)
こしまり雪ほとんど結晶は残っていないものの、下記「しまり雪」には該当しない程度の状態
しまり雪圧縮されて丸みを帯びた氷の粒で構成された状態、粒同士は網目状につながる
ざらめ雪水を含んで大きくなった氷の粒や、解けた水が再凍結して大きくなった氷の粒で構成される
こしもざらめ雪比較的小さな温度変化によって平らな形状(板状・柱状)となった小さな氷の粒で構成される
しもざらめ雪大きな温度変化によって、元々の雪から霜による氷の粒に置き換わった状態
氷板板状の氷になった状態
表面霜積雪表面に放射冷却などにより発生する霜
クラスト積雪表面付近に再凍結によって発生する硬い層

環境への影響

雪が降り、それが積雪という状態を生み出すことにより、地面付近の環境は大きく変化し、結果として環境に大きな影響を与えます。

様々な特徴が挙げられるため全ては記述出来ませんが、長期間雪に覆われる地域では植生が異なることが一般的で、雪の中は地上に野ざらしになるよりも「温度が高い」状態が維持されるため、むしろ耐寒性の弱い植物が、本来生育出来ないような緯度の地域まで分布する要因となっている場合があります。

気候面では、雪が積もると「アルベド(太陽からの放射を反射する割合)」が高まるため、積雪がある場所では昼間の気温上昇が抑えられる場合があります。また、雪の表面は特に新雪では「熱伝導率」が低いため放射冷却が強まりやすく、朝晩の気温低下を引き起こします。すなわち、積雪がある場合はない場合に比べ、1日の気温が低くなる傾向があるということになります。

高緯度地域で温暖化により雪や氷が少なくなると、アルベドの影響で気温が低く抑えられてきた効果が失われ、本来のペースより早く温暖化が進むことになり、気温上昇の悪循環を招く恐れがあります(正のフィードバック)。