東京の「暑さ」とは?知っておきたい基本を知る【気象庁のデータを見る】

自然・気候

日本の首都である「東京」。気候という観点から見た場合に気になるのは夏の「暑さ」。

東京は、一般的にも知られている通り、基本的に「暑い」地域です。こちらでは、東京の暑さに関していくつかのテーマから、知っておきたい基本的な知識をまとめて解説していきます。

※データは2023年夏までのものを前提としています。それ以降のデータは反映されていませんので、その点はご注意下さい。

日常生活上は十分に「暑い」地域

東京は、日常的に生活する意味では「十分に暑い地域」であり、夏はほぼ常時「暑さ対策」が求められます。

項目7月8月
平均気温25.7℃26.9℃
最高気温平均29.9℃31.3℃
最低気温平均22.4℃23.4℃
気象庁「東京」の平年データ(1991年〜2020年)
項目年間日数
夏日118.5日
真夏日52.1日
猛暑日4.8日
熱帯夜17.8日
気象庁「東京」の平年データ(1991年〜2020年)
気象データの注意点

気象庁が「東京」で観測しているデータは、2014年12月以降「大手町のビル街」から「北の丸公園」へ移転しています。移転後の気温は「低め」に出やすいため、上記の平年データも「低め」に補正されています。あくまでも気象庁の「東京」の気温は、自然あふれる公園内の気温であり、ビル街の気温を前提とした場合、上記の気温より更に高い傾向がある点に注意が必要です。

最高気温が30℃以上の「真夏日」はごく一般的で、多い年には年間70日以上観測されるケースもあります。最高気温が35℃以上の「猛暑日」は、真夏日と比べれば観測頻度は減るものの、年によっては連日観測される期間もあり、過去最多であった2023年には観測日数が20日を上回りました。

また、都市部で熱が溜まりやすい環境ですので、「暑さ」は昼間のみならず「朝晩」にも注目が必要です。具体的には、最低気温が25℃以上の「熱帯夜」も多く、多い年には年間50日以上観測されるケースがあります。

適切なエアコンの使用、水分や塩分の補給、気温や湿度が特に高い場合は屋外活動を適宜取りやめるなど、全国で一般的に行われている各種「暑さ対策」は、東京でも同様に不可欠な存在です。

昔と比べ暑くなった東京

東京は、古い時代と比べると気温が明らかに高くなっており、より「暑くなった」と言えます。

気象庁の観測データによる(1887年〜2023年の間で見た場合)
2015年以降の「東京」のデータは観測地点の移転に伴い気温がやや低く出るようになっている点に注意

暑くなった理由は、もちろん「地球温暖化」の影響も大きくなっており、近年では8月の平均気温が29℃以上となる年もあります。

但し、必ずしも温暖化の影響だけかと言えば、それだけではありません。世界最大の都市である東京は、高層ビルが林立し、自然環境は少なく、常に大量の熱が放出されているため「ヒートアイランド現象」の特徴が最も強く現れやすい地域です。

結果として、地域環境による影響が少ないような地域と比べ、気温上昇の度合いは著しくなっています。上記のグラフでは、温暖化のみの影響が出やすい銚子と都市化の影響が大きい東京を比べていますが、東京が大都市化していった20世紀以降、とりわけ昭和の戦後の時代に両都市の気温差が拡大していることがわかります。

なお、2015年以降のデータは自然豊かな「北の丸公園」での観測のため、2014年以前と比べるとヒートアイランド現象による影響が少しだけ緩和されたものとなっているため、比較には注意が必要です。

日本国内で「最も暑い」地域とは言えない

東京は、十分に暑い地域ですが、日本国内を見れば「東京より暑い場所」は他にも多数存在します。

都市7月平均気温8月平均気温
東京25.7℃26.9℃
名古屋26.9℃28.2℃
京都27.3℃28.5℃
大阪27.7℃29.0℃
神戸27.1℃28.6℃
広島27.2℃28.5℃
福岡27.4℃28.4℃
那覇29.1℃29.0℃
気象庁の平年データ(1991年〜2020年)

具体的には、名古屋・京都・大阪・福岡などより西側地域は、夏の平均気温で見た場合東京よりも「更に暑い」傾向が見られます。「北の丸公園」にある東京の観測地点の気温がビル街より低めに出やすい側面を考慮しても、なお西側の各都市の気温が高いことに違いはありません。

また、最高気温で見た場合、ニュースなどでも有名な「熊谷・館林・伊勢崎」など関東の内陸側の暑さが際立つため、東京の暑さは突出したものにはなりません。

大まかに言えば、「十分過ぎるくらい暑いけれども、暑さの全国記録でランキング入りするようなことはほぼない」というのが、東京の暑さの状況と言えるでしょう。

地域差あり【その「東京」とはいったいどこ?】

東京の暑さと言っても、その「東京」は一体どこなのか?という点も重要です。地域によって、体感的にも、データの面からも「暑さ」の状況は異なる場合があります。

内陸側・海風の影響が小さく気温が高くなりやすい
・最高気温35℃以上の「猛暑日」が多め
・朝晩の気温は地域の環境に応じ大きく変化の場合あり(市街地・公園など)
臨海部・海風の影響で昼間の気温上昇が抑制
・最高気温35℃以上の「猛暑日」はかなり少ない
・最低気温25℃以上の「熱帯夜」は多い
地点猛暑日日数熱帯夜日数
練馬14.9日22.4日
東京4.8日17.8日
江戸川臨海0.9日22.0日
羽田2.8日26.8日

23区内の場合であれば、基本的に海から遠いエリアで「最高気温」が高くなりやすく、海のすぐそばのエリアでは「最高気温」が抑えられやすい特徴がはっきり見られます。

例えば「江戸川臨海(葛西臨海公園周辺)」と「練馬」の昼間の気温であれば、ほとんどの場合練馬側の気温が高くなっています。猛暑日は海沿いにあたる江戸川臨海の観測地点では、ほとんど観測がない年もあるなど、かなり少なくなっています。

なお、朝晩の気温・最低気温については、基本的に「海水温」の影響を受ける沿岸部で高くなりやすいですが、内陸側でも「ヒートアイランド現象」の影響が大きいため、自然豊かな場所を除いては気温は下がりにくい場合も多いと言えます。

なお、海沿いで気温が下がりやすい効果は、必ずしもそれほど広範囲に強く波及するものとは言えません。とりわけ高層ビルが林立しているような場所では海風が遮られやすく、それより内陸側の気温が高くなることは少なくありません。

ポイント・まとめ

  • 東京は体感的にも十分に「暑い」地域(十分な暑さ対策が必要)
  • 温暖化のみならず「ヒートアイランド現象」の影響が大きく過去からの気温上昇傾向が顕著
  • 国内には東京よりも更に暑い地域も多い
  • 東京といっても、地域による気温差あり
  • 気象庁の観測する「東京の気温」は観測地点移転の影響があり(やや低めに出る傾向・解釈にはやや注意が必要)