【気候面】9月は「夏」それとも「秋」?【気温データなどから考える】

自然・気候

9月は、一般的な「季節」の感覚、言語上の定義からは「秋」の一部として取り扱われる時期です。

一方で、9月を実際の「気温」として見た場合、その「秋」らしさというものが、余り感じられないと思われる方も多いかもしれません。

こちらでは、言語上の意味ではなく「気温データ」として見た場合に、9月が「夏」と言うべきなのか、それとも「秋」と言うべきなのかを一般論の範疇ではありますが、具体的に考察していきたいと思います。

※記事の内容は、全て気象庁が観測した過去の気温データ・過去の気温の傾向に基づくものです。

9月は6月より暑い

9月の気温は、定義上は「夏」の一部とされる6月と比べれば、そもそも「暑い」時期です。

都市6月平均気温9月平均気温
札幌17.0℃18.6℃
東京21.9℃23.3℃
大阪23.6℃25.2℃
福岡23.3℃24.7℃
那覇27.2℃27.9℃
気象庁の平年データ(1991年〜2020年)による

全国の主な地点について、6月の平均気温と9月の平均気温を比べると、いずれも9月の方が「高く」なっています。最高気温・最低気温の傾向として見た場合も概ね同様です。

単純に数字だけで見た場合、実際に暑いのか・涼しいのかはともかくも、「6月を夏とするのであれば、9月も夏と言える」ということになります。

一部の年は7月より暑い?

9月の気温は、本来は7月と比べれば低いですが、状況次第では本格的な夏の時期に入る「7月」よりも暑い場合があります。

要因は、9月の気温が高くなる状況にあるだけではなく、7月に湿った気流の影響を大きく受けるケースで、気温が逆転しているという状況が目立ちます。

気温が逆転した年7月平均気温9月平均気温
1989年24.1℃25.2℃
1993年22.5℃22.9℃
1999年25.9℃26.2℃
2007年24.4℃25.2℃
2019年24.1℃25.1℃
東京の観測データ(気象庁)

東京で見た場合、平成以降(2023年までのデータに基づく)では5回、7月の平均気温よりも9月の平均気温が高くなっています。

7月については、梅雨前線や湿った気流の影響を受け、晴れる日が少なかった(暑くなりにくかった)年について、9月との気温が逆転しやすい傾向があるため、この気温逆転は単に9月が暑くなったからそうなる。というものではありません。

しかしながら、いくら気温が低めの7月があると言っても、9月の方が気温が高くなるケースがあるということは、9月が特段涼しい季節とは言えないということになります。

なお、7月は8月よりも暑くなる年が一部で見られますので、7月は年ごとの気温差が大きくなりやすい時期と言えるでしょう。

8月より暑い場合はある?

9月の平均気温が、8月を上回るケースは「同じ年」では基本的にありませんあくまでも8月が気温のピークとなっています。

但し、年をまたいで見た場合ある年の9月の平均気温が、ある年の8月の平均気温を上回るというケースは少ないながらも見られます。

なお、猛暑の8月から2〜3℃くらい下がったとしても、相変わらず「十分暑い」状況と言えますので、気温差があればすなわち「秋らしくなる」とは限りません。

東京の9月平均気温(1990年〜2023年)
気象庁のデータによる

上記のグラフは東京の8・9月平均気温を1990年〜2023年の間について見たものです。同じ年で8月より9月の平均気温が高かったケースは一度もありません。

年をまたいで見た場合、記録的な高温となった2023年の平均気温(27.4℃)が、過去の8月の平均気温を上回ったケースが複数回あります。

一部のケースを除いては、8月がかなりの猛暑であった場合、9月にも高温傾向が波及して続く年が目立ちます。多少気温が低下したとしても、暑さは余り緩和されたように感じない年もあると言えるでしょう。

地方(拠点都市)ごとに考える

地域「特に暑い」年の状況(過去の状況に基づく)
北海道(札幌)・一部の日で真夏日などが見られる
・あくまでも涼しい日が多い
東北(仙台)・真夏日が比較的一般的に見られる
・熱帯夜はまれ
・涼しい期間も見られる
北陸(金沢)・真夏日となる日が多い
・まれに猛暑日、熱帯夜も見られる
関東(東京)
近畿(大阪)
中部(名古屋)
四国(高松)
中国(広島)
九州(福岡)
・連日のように真夏日が見られる
・熱帯夜となる場合も
・猛暑日はまれ
南西諸島(那覇)・8月と気温にほぼ変わりがない
※あくまでも中心となる都市の気温を基準としたものです。
※基本的に各地方で最も気温が高めの傾向となっている場合が多く、それ以外の地域ではより涼しい場合もあります。
上記は「暑い年」の場合であり、気温がより低めの年は上記と比べ涼しい傾向がはっきり見られます。

「特に暑くなった年の9月」を基準に、各地方の拠点となる都市の気温の傾向を見ると、北海道などでは暑い年であっても全体的には「涼しさ」が先行しますが、関東〜九州などにかけては真夏と余り変わらないくらいの気温となる場合があるなど、気温の観点からはほぼ「夏の一部」とみなすのが適切な状況となっています。

2023年9月は記録的な高温となり、これまでの記録を大きく塗り替えることになりましたが、東北や北陸などでも下旬に入るまでは真夏日が数多く見られるなど、異常とも言える状況となりました。

なお、8月と9月の気温差は、基本的に北側の地域ほどやや大きくなりやすい特徴があります。九州南部〜南西諸島(沖縄)方面では差が小さくなっています。沖縄で9月の気温が高い場合、その前の8月とほとんど差がないケースが目立ちます。

温暖化時代の気温変化は?

地球温暖化の進行に伴い、9月の気温も着実に上昇の傾向が見られます。

各年ごとに気温差はありますが、平均的な傾向は大幅に上昇しており、とりわけ2023年9月は、統計的に見ると極端すぎるような、異常気象の中でも特に異常とも言えるような高温となりました。

出典:気象庁公式サイト(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/sep_jpn.html)

過去の傾向を見ると、20世紀は1920年代〜1980年代までは平均的な傾向は上昇することなく推移しましたが、1990年代後半以降上昇傾向がはっきり見られるようになっています。

2023年9月の気温は、1991年〜2020年の平年値と比べ2.66℃も高く、過去最も暑かった2012年9月を更に1℃以上上回りました。

ポイント・まとめ

6月より9月は「暑い」時期
7月の気温より9月の気温が高くなるケース一部あり
8月より9月が暑い年は基本ない一方、別の年の気温で比較すると逆転するケースあり
「暑い9月」の年は、秋ではなく実質的に夏と同じような気温となる
長期的にも9月の気温は上昇傾向2023年は記録的な異常高温