「ひょう」の降る時期はいつ?夏に降ることはある?【積乱雲】

自然・気候

様々な気象現象がある中で、特にインパクトが大きく、被害も大きい存在としては大きな氷の塊が降り注ぐ「ひょう」が挙げられます。

「ひょう」は、基本的にいわゆる「ゲリラ豪雨」と呼ばれるような現象に合わせてまれに降るケースがある存在ですが、降りやすい時期は一体いつ頃なのでしょうか?また、夏でも降ることはあるのでしょうか?こちらでは、「ひょう」の「降る時期」というテーマについて、基本と言える知識を解説していきます。

こちらで解説する内容は、ごく一般的な傾向です。異例の気象状況が発生した場合には、全ての内容が当てはまらないケースもありますので、その点はご了承下さい。

「ひょう」は春〜初夏・秋に比較的降りやすい

「ひょう」が降りやすい時期は、春〜初夏にかけて、とりわけ5月・6月頃となっています。また、10月頃など秋にも比較的降りやすい場合があります。

なぜこの時期に多くなるかと言うと、大きくは2つの理由があります。

1.真夏と比べれば気温が低く、上空から降ってきたひょうが完全には解けないため

2.上空だけに比較的強い寒気が流れ込むことが比較的多く、ひょうを発生させる積乱雲が発達する場合があるため(大気の状態が非常に不安定になる)

ひょうは、上空で発生すれば必ず地上に降るとは限りません。後述する通り、暑い時期であれば、地上に落ちる前に雨粒に変わってしまうことが多く、ひょうとして降りにくくなります。

その点、春・初夏・秋の時期では、猛暑日となるような日は少なく、地域によりますが15〜25℃程度、場合によってはそれ以下の気温という場合もあります。結果として、上空でひょうが発生した場合は、それがしっかり地上へ降り注ぎ、ひょうが観測されることになる訳です。

夏の「ひょう」もあり得る

真夏のシーズン、すなわち7〜8月の期間についても、「ひょう」は降る可能性があります。7月と8月で比較すると、より地上の気温が高い・上空に寒気が入りにくい8月の方がひょうは降りにくくなっています。

但し、特に暑い時期ということで、気温が高い=氷が解けやすい状況にあるため、春〜初夏のシーズンと比べ、上空の高い所でひょうが発生しても、途中で解けて雨として降って来るケースがかなり多くなります。また、上空の高い所まで気温が高い空気に覆われている場合は、そもそも雲の全体で「氷の粒」が存在しない=完全な雨粒というケース(気象用語では「暖かい雨」と呼ぶ)もあります。

パターン状況
暖かい雨どれだけ高い場所であっても、雲の中には「雨粒」しかない(ひょうは発生しない)
冷たい雨(ひょうが降らない)雲の高い部分には「ひょう」があっても、途中で気温が高いため「雨粒」に変化
※全ての雲の中でひょうが出来る訳ではない
冷たい雨(ひょうが降る)雲の中で生じた「ひょう」が、途中で全て解けるほどの状況にならず地上へ落下

冬に「ひょう」は降る?

「ひょう」は氷の塊・大きな粒ですので、季節としては「冬」にも降りやすいイメージが持たれるかもしれません。

確かに、「ひょう」は冬に降ることもあります。日本海側については、「冬型の気圧配置」で強い寒気が流れ込むケースで、特に積乱雲が発達する場合などは、雪やあられではなく、氷の粒が大きくなって「ひょう」として降る場合があります。

但し、冬にひょうが降る頻度が目立って多いことはなく、大きなひょうが降りやすいというような状況にもありません。理由としては以下のような要因が挙げられます。

1.暖かい季節と比べ、雲が発達しても「高さ」が抑えられる(低くなる)

2.ひょうは雲の中を何度も上下に移動して成長するため、雲の高さが限定される場合は、ひょうの大きさも成長しづらい

ニュースで取り上げられるような、ビー玉よりも大きいような「ひょう」は、基本的に雲の高さがかなり高い積乱雲でのみ発生します。冬場はいくら雲が発達しても、それ以外の季節のような高さにはなりませんので、ひょうの巨大化は抑えられ、基本的には降ってもあられが少し大きくなった程度のサイズとなります。

「あられ」が暑い時期に降ることはない

氷の粒が降る現象は、直径5mm以上の大きさで降る「ひょう」に加え、直径5mm未満の大きさで降る「あられ」も存在します。

しかしながら、「あられ」はその小ささゆえに、気温がある程度高ければ、途中で必ず雨に変わってしまいます。すなわち、暑い時期に降ることはありません。5mm未満の大きさでは、しっかりとした氷の粒であっても、上空数千mといった高さから落下する間に途中で0℃を上回っていくことで、最終的には単なる雨粒になってしまいます。

あられについては、雪と同じタイミングで降ることもありますが、11月・3月など、気温が低くなるけれども、雪やみぞれが降るほどではないような気温の際に、上空に寒気が入った場合に降ることも一般的です。

なお、あられが降るようなケースでも、生じた氷の粒があられのサイズよりも大きい5mm以上となった場合は、ひょうとして観測されます。すなわち、同じ日に「あられ」と「ひょう」の両方が観測されるケースも有り得ます。

まとめ

「ひょう」は、降る事例が見られやすい時期は春〜初夏・秋の一部の時期で、特に5〜6月頃に降るケースが目立ちます。この時期は寒気の影響で「大気の状態が非常に不安定」になりやすい上、「夏ほど暑くない」ため、雷雨とともに地上に大粒のひょうが見られる場合があります。

日本では夏に「ひょう」が降るケースもあります。但し、8月の暑い時期などは「雲全体が雨粒である」・「ひょうが途中で解ける」といった状況が生じやすく、頻度としては少なめです。

冬も「ひょう」が降る場合があります。但し、冬は雲の発達する高さがそれ以外の時期と比べ低く、「ひょう」が十分な大きさに成長しづらい特徴があるため、大粒のひょうは降りにくい状況です。