高い所へ行くと気温は下がる?基本を知る

自然・気候

気温というものは、一般的には「高い所ほど下がる」ものとされていますが、気温の下がるペースや気温の高低の度合いなどは、その時々の気象状況やその地域の地理的特徴に応じ様々です。

こちらでは、「高い所へ行くと気温が下がる」ということを前提としつつ、標高・高度と気温の関係性に関する「基本」をまとめて解説していきます。

どうして気温は下がっていくの?

気温というものは、基本的に人々が「天気」と呼ぶ各種の現象(雨・雪・雲の発生など)が発生する場所(対流圏と呼ぶ)では、「高度が上がる」ほど「気温が下がる」という特徴を持ちます。

要素高い場所低い場所
気圧低い高い
密度小さい大きい
温度低い高い

高い所へ行くと、一般に「空気が薄くなる」ということは有名ですが、空気が薄くなるという状態は、空気の圧力である気圧が低くなる、空気の集まり具合である密度が低くなる状況を意味します。

気圧・密度が低い空気の塊は、地上付近と比べると単純に言えば「大きく」なります

空気の塊が小さくなれば気温が上がり、大きくなれば気温は下がります。これは、空気が膨張する際に熱がエネルギーとして使用され、空気が冷やされるためです。逆に言えば、上空にある空気を地上付近へ下ろしたと仮定すれば、空気は小さくなり圧縮されるため、今度は熱エネルギーが発生して気温が上昇します。

100mで0.65℃下がるという「一般論」

気温というものは、一般論として見た場合、概ね100mにつき平均0.65℃程度のペースで下がるものとされています。

これを単純に当てはめれば、1000mの場所は0mの場所と比べ6.5℃、2000mの場所は13℃、3000mの場所は19.5℃気温が下がるということになります。

但し、これはあくまでも理論的な「平均値」のようなものですので、必ず0.65℃のペースで下がるというものではありません。実際には後述する通り0.5℃未満のペースで下がることもあれば、1℃程度のペースで下がることもあるなど、その度合いには大きな差があります。

気象状況に応じ気温変化は異なる

気温の度合いは、雲が生じるか生じないか(雨が降るか降らないか)、湿度がどの程度かなどによって、その下がるペースが大きく異なります。

気象学的に見た場合、ある空気の塊が上へ移動していくと仮定した場合、以下の2パターンの「気温減率」に従って気温は下がっていきます。

パターン気温の動き
乾燥断熱減率雲が発生しない状況では、100mにつき約1℃低下
湿潤断熱減率雲が発生するような状況では、100mにつき約0.5℃低下
※標高が低いほど気温低下のペースは遅く、高いほど早くなる

乾燥断熱減率は、雲が発生しない乾燥した空気(凝結していない空気)の状態で気温が下がっていく場合で、理論上は100m上がると約1℃下がるとされています。

湿潤断熱減率は、雲が発生するような湿った空気(凝結している空気)の状態で気温が下がっていく場合で、理論上は100m上がると約0.5℃下がるとされています。但し、この場合は低い場所では0.4℃程度など気温低下は抑えられ、逆に高い場所では1℃に近づいていくなど気温低下のペースが加速するため、標高に応じ差は大きくなります。

乾燥した空気と湿った空気で気温低下のペースに違いが出る要因は、湿って雲が発生するような空気では、水蒸気が雲の粒に変わる時に「潜熱」と呼ばれる熱を空気中に放出し、その結果気温の低下が抑えられることが要因となっています。

高い所の方が気温が高いケースもある?(逆転層)

気温は通常であれば「高い所ほど低い」ものですが、その時々の大気の動き次第では、部分的に「高い所の方が高い」ケースも生じます。

パターン気温の動き
接地逆転層・地面付近が最も冷え込みが強く、少し上の層と比べ気温が逆転する
・内陸部の「放射冷却」による冷え込みで一般的に出現
沈降逆転層・高気圧の中で生じる「下降気流」によって気温が上昇し、より下の層よりも気温が高くなる
前線性逆転・前線面に沿って暖かい空気が冷たい空気の上を上るように進むことで、気温が逆転する

なお、通常「天気」と呼ぶ様々な現象が発生するのは最大で高度16km程度までの間に広がる「対流圏」です。

パターン高さ気温の動き
対流圏6〜16km程度平均100m上がるごとに0.65℃気温が低下する
大気の状況に応じて気温低下の度合いは様々
成層圏対流圏の上端〜50km程度までオゾンの影響により「高度が上がるほど気温も上がる」
中間圏50〜80km程度まで対流圏と同様に高度が上がると気温が下がる領域
熱圏80km以上成層圏と同様に高度が上がるほど気温が上がる領域

この対流圏を超え、更に高い所へ進むと「成層圏」と呼ばれる領域に入りますが、この成層圏では高度が上がると気温も上がる特徴があり、対流圏とは逆の現象が生じています。成層圏の更に上には対流圏と同様高度が上がると気温が下がる「中間圏」、更にその上には高度が上がると気温も上がる「熱圏」があります。

すなわち、地球を覆う大気の層には高度とともに気温が下がる層と、上がる層の2種類があるのです。

具体的な地点の気温を比較する

地点高度年平均気温
東京25m15.8℃
河口湖860m11.0℃
大阪23m17.1℃
高野山801m11.1℃
気象庁の平年データによる(1991年〜2020年)

具体的な地点の気温から高度による気温差を見てみると、東京と河口湖、大阪と高野山という組み合わせがわかりやすい事例の1つと言えます。

東京・大阪は「都市化」による影響が大きいためそれらを考慮する必要もありますが、概ね800m前後の標高差で、気温は5〜6℃程度の違いがあります。100mにつき1℃下がるペースではなく、100mにつき0.65℃と言われる一般的な気温低下率に近い気温差となっていることが分かります。

まとめ

気温は高度が上がると基本的に下がります。下がるペースは平均すれば100mごとに約0.65℃とされていますが、大気の状況などに応じ実際は様々です。

基本的には、空気が乾燥して雲を作っていない状態(乾燥断熱減率)では100mごとに1℃程度空気が雲を作っている状態(湿潤断熱減率)では100mごとに0.5℃程度気温が下がるとされています。

大気中には、一部では上空の方が空気が温かい「逆転層」が生じる場合があります。逆転層は「放射冷却」・「高気圧」・「前線」といった要素が関係しています。また、天気と呼ぶ現象が通常発生しないような上空高い所(成層圏など)では高度とともに気温が上がる領域が存在します。