猛暑日になりやすい条件とは?【標高・地形・海との位置関係・ヒートアイランド】

自然・気候

近年は、毎年のように厳しい暑さとなることが一般的になり、最高気温が35℃以上となる「猛暑日」を観測したといった情報は、毎日当たり前のように報道されるようになっています。

一方、猛暑日になるといっても、その状況には極端な地域差があり、例えば同じ関東地方・同じ近畿地方の中であっても、猛暑日が連日続くような地点と、全く猛暑日にならない地点が見られます。

こちらでは、猛暑日になりやすい環境とはどういうものか?という観点から、猛暑日を観測しやすい具体的な条件をまとめて見ていきたいと思います。

情報は2023年時点の基本的な内容です。状況がその後変化する場合も考えられますので、あらかじめご留意下さい。

こちらの記事で示していく「条件」は、必ずしもその1つを満たしていれば、必ず猛暑になるという訳ではありません。条件によっては、複数の要素が関連しあって猛暑となっているケースがあります。

標高が低め

猛暑日を観測しやすい環境となる上での、最低限の条件としては「標高の高さ」に関する条件が挙げられます。

具体的には、標高が比較的低めの地域ででは、猛暑日になりやすい場合がありますが、標高が高い地域では猛暑日になる可能性は小さくなります。

一般的にもイメージされる通り、標高が高い場所ほど気温が下がる傾向にあります。首都圏近郊であれば河口湖周辺、関西であれば高野山周辺などは、時に暑くなることはありますが、標高が場所によっては1,000mに近い環境ということもあり、猛暑日になることはまずありません。

具体的な標高の目安は?

猛暑日の発生と標高の高さを具体的に見ていくと、暑さが目立つ地域であっても、概ね標高500m以上の地域では、猛暑日の発生が大幅に少なくなります。但し、長野県のように内陸部で海からの気候的な影響を受けにくい地域では、標高が500m以上でも猛暑日が比較的見られやすい地域があります。

なお、「標高が低め」という条件については猛暑日になりやすい「必須の条件」に過ぎません。後述する通り、海の真横では逆に涼しい場合があるなど、標高が低くても猛暑日が観測されにくい条件というものも存在します。

海からの風が入りにくい

猛暑日になりやすい条件としては、「海からの風が入りにくい」という点も大きなポイントです。

例えば、あくまでもイメージに過ぎませんが、海水温と、陸地でも特に「内陸部」の気温を比較すると、下記のように大きな違いがあります。

夏の暑い日海水温(イメージ)沿岸部の気温(イメージ)内陸部の気温(イメージ)
昼間27〜30℃28〜33℃35℃以上
夜間27〜30℃23〜28℃20〜25℃
あくまでもイメージであり、必ずこの温度となる訳ではありません。

上記の数字は必ずしも「全てに当てはまる」訳ではありませんが、夏の比較的暑い日の温度をイメージして示したものです。

海水温は、昼間も夜間も実質的に大きな違いはありません。一方で、陸地は太陽の熱によって昼間に熱くなり、夜間はやや気温が下がる特徴があります。海からの風が入り込む沿岸部の場合、陸地ではあっても、内陸部と比べれば海水温の影響を強く受けやすい特徴があり、結果として猛暑日になるような気温にはならないケースが目立ちます。

但し、これも後述する通り「日本海側」の場合は「フェーン現象」の影響を受ける場合があるため、海の真横であっても過酷な猛暑となるケースがあります。「海沿いで猛暑日が少なくなる」イメージとしては、太平洋沿岸部を中心として捉えて頂くのが無難でしょう。

内陸の平野・盆地

先述した「海からの風が入りにくい」場所の典型的なパターンとしては、「内陸の平野・盆地」という環境が挙げられます。

具体的な場所で言えば「京都盆地」「関東平野北部」など、海からの風が入りにくい上、比較的平坦で地面が熱されやすい場所では、海沿いの地域と比べ、気温がかなり高くなります。

長野県も意外と暑い

内陸の盆地地形は、標高が比較的高い場所であっても「山に囲まれている」といった条件を満たす場合、気温上昇をもたらす場合があります。例えば、長野県の平地(長野・松本市方面など)は、とりわけ松本盆地周辺は標高500m以上と本来は涼しいはずの地域ですが、四方を山に囲まれて地面付近に熱が溜まりやすいため、時折猛暑日になるケースも見られるなど、思いのほか暑さが目立つ環境です。

都市化による「ヒートアイランド現象」

猛暑日の多さは、地形などの自然環境だけではなく、人工的な環境も大きな影響を及ぼしている場合があります。

典型的なケースとしては、都市化により熱が溜まりやすくなる「ヒートアイランド現象」の影響で、東京・大阪周辺の都市部を中心に、気温がより高くなりやすくなっており、結果として猛暑日の増加につながっています。

ヒートアイランド現象は、例えば以下のような形で気温の上昇をもたらします。

熱が発生する自動車、産業活動などによって人工的に「熱」が発生し、排出される
熱が溜まるアスファルト、建材などは熱を溜め込むため気温上昇につながる
風が弱まる建物によって風が遮られ、風下の気温上昇につながる
熱が逃げない建物によって地面からの放射冷却効果が抑えられ、気温が下がらない
湿度が上がりにくい土の地面、植物が少なく保水性が低く、水の蒸発による冷却効果が少ない

端的に言えば、都市部は気温が上がりやすく、下がりにくい特徴を全て兼ね備えた場所と言えます。

もっとも、このヒートアイランド現象の効果は「朝晩」に特に強く見られやすい傾向がありますが、昼間の気温上昇にもつながっていますので、猛暑日を増やす条件の1つとなっています。

フェーン現象の影響

日本国内では特に「日本海側」の地域は、その場所ではなく、山を越えて吹き下ろす風が高温となって発生する「フェーン現象」が、猛暑日を増やす大きな条件となっている場合があります。

フェーン現象は、台風が日本の南海上、少し離れた場所を通っているような時に特に発生しやすい特徴があり、大まかに言えば比較的強い「南寄りの風」などが、本州などの山岳地帯を南側から北側に向けて吹き(風向きは状況により異なる場合もあり)、風下側にあたる日本海側で高温をもたらす形となります。

気温の高さはかなりのものとなる場合があり、最高気温35℃以上の猛暑日というだけでなく、時には39℃以上などの熾烈な暑さとなり、過去には新潟県などで40℃以上の気温を観測したこともあります。

日本海側以外では?

フェーン現象は、特に発生しやすい場所は本州の日本海側ですが、要は「風が吹き下ろす」側に比較的高い山がある地域であれば、どこでも発生する可能性はあります。例えば、関東で猛暑となる場合、関東山地一帯から風が吹き下ろすフェーン現象の効果で気温が上がっているケースもあります。また、頻度が多いケースとしては、北海道の十勝地方を中心とした道東の一部でも、日高山脈の影響などで典型的なフェーン現象が見られます。

まとめ

猛暑日になりやすい条件は、「標高が低め」「海からの風が入りにくい(内陸の盆地や平野)」「都市化によるヒートアイランド現象の影響を受ける」「フェーン現象の影響を受ける」などが挙げられます。

上記の条件は、1つを満たすだけでは必ずしも猛暑日になりやすいとは限りません。また、海の近くでもフェーン現象の影響を受けやすい場合気温が高くなる傾向があるなど、地域・地形によって大きな違いが生じることもあります。