近年は、毎年のように厳しい暑さとなることが一般的になり、最高気温が35℃以上となる「猛暑日」を観測したといった情報は、毎日当たり前のように報道されるようになっています。
一方、猛暑日になるといっても、その状況には極端な地域差があり、例えば同じ関東地方・同じ近畿地方の中であっても、猛暑日が連日続くような地点と、全く猛暑日にならない地点が見られます。
こちらでは、猛暑日になりやすい環境とはどういうものか?という観点から、猛暑日を観測しやすい具体的な条件をまとめて見ていきたいと思います。
標高が低め
猛暑日を観測しやすい環境となる上での、最低限の条件としては「標高の高さ」に関する条件が挙げられます。
具体的には、標高が比較的低めの地域ででは、猛暑日になりやすい場合がありますが、標高が高い地域では猛暑日になる可能性は小さくなります。
一般的にもイメージされる通り、標高が高い場所ほど気温が下がる傾向にあります。首都圏近郊であれば河口湖周辺、関西であれば高野山周辺などは、時に暑くなることはありますが、標高が場所によっては1,000mに近い環境ということもあり、猛暑日になることはまずありません。
なお、「標高が低め」という条件については猛暑日になりやすい「必須の条件」に過ぎません。後述する通り、海の真横では逆に涼しい場合があるなど、標高が低くても猛暑日が観測されにくい条件というものも存在します。
海からの風が入りにくい
猛暑日になりやすい条件としては、「海からの風が入りにくい」という点も大きなポイントです。
例えば、あくまでもイメージに過ぎませんが、海水温と、陸地でも特に「内陸部」の気温を比較すると、下記のように大きな違いがあります。
夏の暑い日 | 海水温(イメージ) | 沿岸部の気温(イメージ) | 内陸部の気温(イメージ) |
---|---|---|---|
昼間 | 27〜30℃ | 28〜33℃ | 35℃以上 |
夜間 | 27〜30℃ | 23〜28℃ | 20〜25℃ |
上記の数字は必ずしも「全てに当てはまる」訳ではありませんが、夏の比較的暑い日の温度をイメージして示したものです。
海水温は、昼間も夜間も実質的に大きな違いはありません。一方で、陸地は太陽の熱によって昼間に熱くなり、夜間はやや気温が下がる特徴があります。海からの風が入り込む沿岸部の場合、陸地ではあっても、内陸部と比べれば海水温の影響を強く受けやすい特徴があり、結果として猛暑日になるような気温にはならないケースが目立ちます。
但し、これも後述する通り「日本海側」の場合は「フェーン現象」の影響を受ける場合があるため、海の真横であっても過酷な猛暑となるケースがあります。「海沿いで猛暑日が少なくなる」イメージとしては、太平洋沿岸部を中心として捉えて頂くのが無難でしょう。
内陸の平野・盆地
先述した「海からの風が入りにくい」場所の典型的なパターンとしては、「内陸の平野・盆地」という環境が挙げられます。
具体的な場所で言えば「京都盆地」や「関東平野北部」など、海からの風が入りにくい上、比較的平坦で地面が熱されやすい場所では、海沿いの地域と比べ、気温がかなり高くなります。
都市化による「ヒートアイランド現象」
猛暑日の多さは、地形などの自然環境だけではなく、人工的な環境も大きな影響を及ぼしている場合があります。
典型的なケースとしては、都市化により熱が溜まりやすくなる「ヒートアイランド現象」の影響で、東京・大阪周辺の都市部を中心に、気温がより高くなりやすくなっており、結果として猛暑日の増加につながっています。
ヒートアイランド現象は、例えば以下のような形で気温の上昇をもたらします。
熱が発生する | 自動車、産業活動などによって人工的に「熱」が発生し、排出される |
熱が溜まる | アスファルト、建材などは熱を溜め込むため気温上昇につながる |
風が弱まる | 建物によって風が遮られ、風下の気温上昇につながる |
熱が逃げない | 建物によって地面からの放射冷却効果が抑えられ、気温が下がらない |
湿度が上がりにくい | 土の地面、植物が少なく保水性が低く、水の蒸発による冷却効果が少ない |
端的に言えば、都市部は気温が上がりやすく、下がりにくい特徴を全て兼ね備えた場所と言えます。
もっとも、このヒートアイランド現象の効果は「朝晩」に特に強く見られやすい傾向がありますが、昼間の気温上昇にもつながっていますので、猛暑日を増やす条件の1つとなっています。
フェーン現象の影響
日本国内では特に「日本海側」の地域は、その場所ではなく、山を越えて吹き下ろす風が高温となって発生する「フェーン現象」が、猛暑日を増やす大きな条件となっている場合があります。
フェーン現象は、台風が日本の南海上、少し離れた場所を通っているような時に特に発生しやすい特徴があり、大まかに言えば比較的強い「南寄りの風」などが、本州などの山岳地帯を南側から北側に向けて吹き(風向きは状況により異なる場合もあり)、風下側にあたる日本海側で高温をもたらす形となります。
気温の高さはかなりのものとなる場合があり、最高気温35℃以上の猛暑日というだけでなく、時には39℃以上などの熾烈な暑さとなり、過去には新潟県などで40℃以上の気温を観測したこともあります。