金沢の「雪が減った」を考える【温暖化?観測場所?】

自然・気候

金沢市は北陸地方を代表する都市であり、気候も典型的な日本海側の気候であり、冬に降水量が多く「雪」も降る地域です。

一方で、金沢で降る・積もる雪の量は、昭和以降どんどん減っており、その減り方は国内のそれ以外の地域と比較してもかなり目立ったものと言えます。

こちらでは、あくまでも「一般論」の範疇ではありますが、金沢でこれほどに「雪が減った」状況はどういった要因が考えられるかについて、いくつかのテーマから考えていきます。

どのくらい雪が減っているのか【データを見る】

金沢【気象台】の降雪量の減り方(推移)

※グラフは1954年〜2023年までのみを表示しています。

金沢の気象台で観測される年間の降雪量は、1990年頃を境に少し異常なくらいの減少傾向が見られます。

大まかには1980年代までの「雪」と、1990年代以降の「雪」で何か根本的に状況が変わっているとも言えるようなグラフとなっています。

金沢【気象台】の最深積雪の減り方(推移)

※グラフは1954年〜2023年までのみを表示しています。

1年間で最も多く雪が積もった際の積雪である「最深積雪」で見た場合も、大きな減少傾向が見て取れます。

とりわけ、平成の半ば以降は最大10cm程度、または10cm未満しか積もらなかった年が一部で見られ、雪国とは言えないような冬も次第に増えてきています。

温暖化の影響

元々北陸では気温が高い?金沢都心

雪のデータで見た期間と同じ1951年から2023年までの「1月」の平均気温のみを北陸3県の県庁所在地でグラフ化してみると、下記のような形となります。

金沢は、少なくとも1960年代頃からは北陸3県の県庁所在地では気温が高めの傾向が見られ、特に平成以降はその差がはっきり見られます。

平成以降の気温上昇は、後述する「気象台移転」の影響がかなり大きいことに違いはありませんが、北陸の中では金沢市の「都市化」が特に著しいこともあり、朝の冷え込みが弱くなる「ヒートアイランド現象」による気温上昇の側面もあるかもしれません。

雪が積もる「ギリギリ」の気温からの気温上昇?

北陸地方の平地は、一般的には「雪国」とされることも多い地域ですが、雪が積もる時の気温は北海道や東北で見られるように氷点下のかなり寒い気温ということはなく、多くは0℃前後、場合によっては0.5℃程度で降るようなことも多い地域です。

雪が積もるかどうか気温0℃〜1℃程度の間のわずか1℃の差において、「しっかり積もる」状況と「ほぼ全く積もらない」状況に変化する特徴を持ちます。

気温0℃で30mmの降水量があれば、30cmくらいの積雪になることもありますが、気温1℃で30mmの降水量があっても、雪は一切積もらない場合があります。0℃と1℃の違いは積雪の有無にとって、極端なくらい重要な気温差です。

金沢の場合、0℃前後・0℃台といった「比較的高めの気温」で元々雪が降ることが多い地域で、かつ北陸3県の県庁所在地で最も気温が高めの地域であるという特徴から、少しだけ気温が上がる(温暖化)だけでも、他の地域以上に「一気に雪が積もらなくなる」傾向が出やすい可能性があると言えます。

例えば、富山と金沢の気象データを見ると、一部のケースでは富山で「積もる雪」になっているにも関わらず、金沢では「みぞれ」程度で済んでいるケースが時折見られます。

気象台移転の影響【その「金沢」はどこ?】

上記のように、温暖化傾向により金沢の雪がそもそも減っているという大前提はありますが、データ上急激に雪が減った理由はそれだけとは言い切れません。

金沢地方気象台は、実のところ1991年に場所が「移転」しています。

※上記出典は「地理院地図」より(地理院地図サイト上の作図機能を用いて一部作図)

かつての気象台は、金沢市の中心市街地(片町)からそれほど遠くない「弥生」地区(北陸鉄道線野町駅などから近い場所)にありましたが、1991年の移転で「金沢駅の西側」にあたる「西念」地区に場所が変わっています。

気象台は「北に4.5km」ほど移転しており、移転に伴い「海からの距離」は7.5km程度から4.5km程度に3km程度短くなりました。

基本的に風・気温・雲の発達状況などの関係上、金沢市内では海沿いほど雪が少なく、内陸側・山に近い地域ほど雪が多い特徴が見られますので、この「3km程度海に近くなった」ことは、思いのほか大きな変化(雪の減少)をもたらしている可能性もあります。

気象台の積雪よりも香林坊・片町などの雪が多いと言われることは決して珍しくなく、金沢市が計測する地域ごとの積雪量でも駅西側と東側で差が生じる場合があります。

また、小立野台地など市街地でもより内陸側、少し標高が高い側へ行くと積雪は急増する場合があります。例えば2018年の豪雪では、気象台の積雪量が最大87cmであったのに対し、小立野の観測地点(金沢市による観測)では1m10cmを越えるなどしたケースがあります。

気象庁の定義では、観測地点の移動距離が5kmを下回るなどの条件を満たす場合「同じ観測データ」とみなせるようですが、金沢の積雪に関しては移転前・移転後で全く同じ構図であると考えるのはやや難があると言えるかもしれません。