広島市の「雪事情」とは?【市内の差が大きすぎる?】

自然・気候

中国地方最大の都市であり、広島県の県庁所在地である「広島市」。

こちらでは、広島市における「雪」というテーマについて、どのくらい雪が降る・積もる地域なのかという観点などから「過去の一般的な傾向」に基づいて解説していきます。

広島市は、西日本の日本海側以外では雪が比較的見られやすい都市です。但し、同じ市内でも場所によって極端なくらい雪の頻度・量が異なるため、一概に多い・少ないと言える環境ではありません。

情報は全て2022年時点のものであり、その後状況が変化している場合があります。

データから見る広島市の雪

広島市には、広島管区気象台があり、そちらで雪に関する観測が実施されています。観測機器は上八丁堀の広島合同庁舎そばに設置されており、広島都心の雪の状況がよく反映されたデータと言えます。

観測地点名平年年間降雪量
(cm)
平年年間最深積雪
(cm)
平年年間降雪日数過去最大の積雪深
(cm)
広島8521.831(1893/1/5)
【参考】東京868.546(1883/2/8)
気象庁の平年データ・観測データ(1991年~2020年)による
平年月間降雪量
(cm)
平年月間最深積雪
(cm)
平年月間降雪日数
11月0.2
12月224.6
1月338.5
2月336.5
3月002.3
観測地点:広島
気象庁の平年データ・観測データ(1991年~2020年)による
積雪量0cm≧1cm≧5cm≧10cm≧
平年年間積雪日数5.03.10.80.2
観測地点:広島
気象庁の平年データによる(1991年~2020年)

雪の状況は、降雪量・最深積雪の平年値では東京と大きな差が見られない一方、降雪日数は東京より多くなっています。これは「冬型の気圧配置」に伴い積雪しない場合でも雪が舞うような天気が見られることがある点が要因です。

【広島市】月ごとの雪の傾向(都心の場合)

以下の傾向は、広島市都心部(八丁堀・紙屋町・広島駅周辺などを想定)のものです。
市内でも安佐北区・佐伯区・安佐南区の一部などは都心部と比較して劇的に雪が多い場合がありますので、全体の傾向ではない点にご注意下さい。

12月

年によって差が大きい傾向です。
雪が積もる年もあれば、ほとんど降ることもなく一切積もらない年もあります。
・過去には5~10cm以上のまとまった積雪、大雪となった事例も存在し、寒気の入りやすい年は複数回積もったことがあります。

1月

・年による差が大きい一方、ごくうっすらも含めると一度は積雪を観測する年が多くなっています。
・寒気の入りやすい年は複数回積もることもあります。
・まれに大雪となる場合もあり、2017年の記録的大雪では都心部でも20cm近く積もった異例のケースとなりました。

2月

1月と大きな傾向の違いはありません。
・後半にかけては春の空気が入りやすくなるため、平均的には雪の頻度はやや減る傾向と言えます。

3月

雪の機会は一気に減る時期です。
・平成の半ば以降は都心で積雪となった機会は極めて少ない状況となっています。

【広島市】地域による違いはある?

広島市は、雪の降る頻度や量に「明確な地域差」が存在します。地域差は「山間部」との違いだけではなく、市街化されている地域であっても郊外と都心で大きく違う場合があり、運転その他には十分な注意が必要な場合もあります。

なお、以下の傾向は一般的な過去の傾向であり、例外的なケースが生じる可能性もあります。

中区・雪が時に積もることはあるものの、基本的に市内では雪が少ない地域
・気象台の雪のデータが参考になりやすい
・海沿いに近づくほど雪がより減りやすい傾向
南区・雪は市内では最も少ない地域の一つ
・状況によっては気象台のデータよりも雪が少な目の場合あり
西区・都心に近い地域は雪が少な目の傾向
・山に近いエリアは雪の頻度や積雪量が都心よりは多め
東区・広島駅前や矢賀駅周辺は雪が少なめの傾向
・北側へ行くと雪の頻度や量は都心よりは多め、但し可部方面と比べると少ないことが多い
安佐南区・概ね「北または西」へ行くほど雪の頻度や量が増える傾向
・西風新都は都心と比べると雪は明らかに降りやすい
・戸山方面など10cm以上の雪がそれほど珍しくない地域もあり
安佐北区・概ね「北または西」へ行くほど雪の頻度や量が急増する傾向
・気温が低くなりやすく、降ると積もりやすい
・同じ山間部では西側で雪が多い傾向(芸備線沿いよりは中国道沿いなど)
・可部周辺でも時に20cm前後の大雪が見られる場合あり(毎年ではない)
・高陽団地周辺は区内では雪は多くない一方、都心よりは多め
・飯室、鈴張方面などは雪が比較的頻繁に降るため「瀬戸内側の気候」とは単純には言い切れない地域
安芸区・市内では雪が少ない地域
・瀬野方面より矢野方面で雪が特に少ない傾向
・矢野方面は市内で「最も雪が降りにくい傾向」を持つ
佐伯区・概ね「北または西」へ行くほど雪の頻度や量が急増する傾向
・湯来方面は特に積雪が増えやすく、市街地とは環境が大きく異なる点に注意
・市街化された地域でも彩が丘、藤の木台、石内北など山に近い地域は雪の頻度がやや多くなりやすい
・五日市市街地周辺はそれほど雪が多くない(都心よりは多い場合あり)

【広島市】雪が降る要因・パターン

広島市で雪が降るケースは、多くが「冬型の気圧配置」によるものです。

広島市は「瀬戸内側」の地域ですが、島根県側の日本海からの距離が都心部からでも60km台程度とそれほど遠くなく、市の北西側ほど雲は比較的流れ込みやすい環境です。

雲の入り方は風向きにより様々ですが、よく見られるケースは西北西~北西方向からの雪雲が入り込み、雪を降らせるケースとなっています。

微妙な風向きの違い・雲の強さなどによって、「積もる雪」となるエリアは大きく変化します。都心でほぼ積雪なし、大町で少し積雪あり、可部でまとまった雪。というケースも比較的一般的です。

過去に都心部で大雪となったケースには、毎回ではないものの、各地で集中的な雪をもたらす「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」の影響によるものもあります。JPCZの雪雲は「強い」場合が多く、都心周辺までしっかり流れ込みやすいと言えます。

九州・四国沖を通る「南岸低気圧」によって雪が降る場合もまれにあります。特に安佐北区をはじめ内陸側では、都心部が雨やみぞれでも南岸低気圧で雪となるケースがあり、まれにまとまった雪も見られます。

【広島市】その他知っておきたいポイント

日本海側以外の都市では西日本屈指の雪の多さ?

広島市は、先述の通り瀬戸内側の都市ですが、日本海からの距離は特段遠くはないため、雲が入り込みやすい特徴を持ちます。市内の地域にもよりますが、都心部を基準として見た場合でも、雪の積もる頻度・量は日本海側を除く「西日本屈指」となっており、山口市・京都市には及びませんが、それらに次ぐ水準となっています。

市内でも全く違う雪へのイメージ

広島市は山沿いにも団地などが次々に開発された歴史を持つため、市街化された地域であっても山間部と同じような気候を持つ場合があります。
例えば「あさひが丘・くすの木台・桐陽台・勝木台」などは積雪が珍しくない地域で、10cm以上積もるようなケースも一般的に見られます。一方で、都心周辺のデルタ地帯は雪の頻度は減り、特に宇品方面は雪が少ない傾向が顕著であり、住む場所によって「雪のイメージ」が極端に違う場合があります。

どこで雪雲が消えるのか?

広島市内へ流れ込む雪雲は、ちょうど広島市街地に入り込むあたりから弱まる傾向を持っており、風向きや雲の強さなどに応じ、どこまで雪雲が入り込む・どこで雪雲が消えるのかが大きく変化し、その都度積雪となる地域に違いが生じます。都心まで「積もる雪」が来るのか、安佐南区や佐伯区の一部まで来るのか、可部方面の一部に留まるのか。その都度の状況に応じ、交通などへの影響範囲も大きく変化します。

呉・福山とは全く異なる

広島市以外の広島県内の主要都市である呉市、福山市との比較では広島市の雪の降りやすさははっきりしています。
呉・福山はいずれも日本海からの距離が遠く、市内に雲が届く前に消えやすく、広島都心でまとまった積雪となる場合でも、積雪がないようなケースが多くを占めます。