宮古市の「雪事情」とは?【低気圧の影響による雪・山間部は雪が多い】

自然・気候

岩手県の三陸海岸沿い(太平洋側)に位置する「宮古市」。市内は山地が多く、沿岸部もリアス式海岸の入り組んだ地形が目立つなど、平地が少ない地理的特徴を持っています。

こちらでは、宮古市における冬場を中心とした「雪事情(雪の降る・積もる傾向など)」を解説していきます。なお、掲載情報は全て過去の状況に基づく一般的な傾向です。

宮古市は太平洋側のため雪が目立って多い訳ではないものの、積雪は比較的一般的に見られます。また、市内でも沿岸部・山間部では雪の状況が大きく異なる場合があります。

データから見る宮古市の雪

観測地点名平年年間降雪量
(cm)
平年年間最深積雪
(cm)
過去最大の積雪深
(cm)
宮古9126101(1944/3/12)
区界57191138(2018/2/14)
【参考】東京8646(1883/2/8)
【参考】盛岡2093681(1938/2/19)
気象庁の平年データ・観測データによる
平年月間降雪量
(cm)
平年月間最深積雪
(cm)
平年月間降雪日数過去最大の積雪深
(cm)
11月002.88(1886/11/19)
12月9610.553(1926/12/24)
1月201213.877(1908/1/21)
2月332014.192(1923/2/18)
3月281712.6101(1944/3/12)
4月222.842(1887/4/3)
観測地点:宮古
気象庁の平年データ・観測データによる
積雪量1cm≧5cm≧10cm≧20cm≧50cm≧
平年年間積雪日数34.322.113.24.10.1
観測地点:宮古
気象庁の平年データによる
平年月間降雪量
(cm)
平年月間最深積雪
(cm)
過去最大の積雪深
(cm)
10月002(1997/10/27)
11月21938(2021/11/26)
12月11437126(2010/12/31)
1月14268120(2011/1/1)
2月13583138(2018/2/14)
3月12585136(2003/3/8)
4月333882(2006/4/1)
観測地点:区界
気象庁の平年データ・観測データによる
積雪量5cm≧10cm≧20cm≧50cm≧100cm≧
平年年間積雪日数123.4114.599.757.32.6
観測地点:区界
気象庁の平年データによる
年間降雪量の変化(推移)

◆宮古

気象庁の観測データ(1954~2022年)
一部年はデータが不完全な可能性あり

※区界のデータはノイズが大きいためグラフ化しておりません。

年間最深積雪の変化(推移)

◆宮古

気象庁の観測データ(1954~2022年)
一部年はデータが不完全な可能性あり

◆区界

気象庁の観測データ(1986~2022年)
一部年はデータが不完全な可能性あり

宮古市では、宮古港のすぐそばの高台にある「宮古特別気象観測所(宮古市鍬ケ崎下町・旧宮古測候所)」、および市西端の「区界アメダス」で雪に関する観測が実施されています。

雪の量は「宮古」については北日本・東北の中で見た場合比較的少ない区分に入り、特段目立って雪がよく積もる訳ではありません。但し、東京や仙台などと比べると雪が積もる量はかなり多く、雪はそれなりに身近な存在と言えます。

一方、「区界」については雪が絶対値としてもかなり多く、積雪1m以上の記録も一般的に見られるなど状況は大きく異なる「豪雪地」です。

長期的な変化を見ると、「宮古」は降雪量・最深積雪ともに減少の傾向が見られ、近年は最大30cm以上の積雪を観測する年が珍しくなってきていますが、「区界」については最深積雪は変化の傾向はないか、むしろ増加基調であるようにも捉えられます。

【宮古市】月ごとの雪の傾向(市街地の場合)

以下の傾向は、宮古市街地の状況を前提としたものです。内陸部・標高が高い地域では雪がより多くなる傾向がありますので、その点はご留意下さい。

11月

・雪はほぼ降らない時期です。
・近年では2017年に1cmの積雪記録がありますが、極めてまれなケースと言えます。

12月

雪が降る頻度はそれほど多くありません。
一度は積雪する年が多めですが、全く雪が積もらない年もあります。
・20cm以上などの大雪は滅多に観測されず、積もる場合うっすら~数cm程度が最も多くなっています。

1月

晴れる日が多めですが、低気圧通過時などに雪となる場合があります。
・基本的に過去全ての年で一度は積雪を観測しています。
・近年は半数程度の年で最大10cm以上の積雪を観測しており、まれに20cm以上の大雪となる年もあります。

2月

・晴れる日が多めですが、低気圧の影響をやや受けやすく、雪の頻度が少し増える時期です。
・基本的に過去全ての年で一度は積雪を観測しています。
比較的多くの年で最大10cm以上の積雪を観測しており、時に30~40cm以上などの大雪となる年もあります。

3月

低気圧の影響をやや受けやすく平均的な降雪量は1月より多い時期です。
年ごとの差がかなり大きく、大雪が観測される年、一度も積もらない年など様々です。
降ると大雪になる割合が高い時期で、40~50cm以上の積雪となったケースもあります。

4月

・低気圧と寒気の影響などで、年によってはまれに雪が降ることがあります。
・1cm以上の積雪は平均すると数年に1回程度で、積雪頻度は少なくなっています。

【宮古市】地域ごとの雪の傾向

市内の各地域大まかな雪の傾向
山間部西側ほど雪が多い傾向(気圧配置によっては例外あり)
標高が高くなると雪が一気に増えやすい
市の西端部へ近づくと「冬型の気圧配置」でやや雪が降りやすい環境
区界地域周辺はかなり雪が多く「1m以上」積もる場合
・海に近い山地では低気圧通過時(三陸沖を通る低気圧の場合)に特に雪が増えやすい
沿岸部(市街地周辺)・大まかな傾向は先に解説した通り
「冬型の気圧配置」では雪が降りにくい
・低気圧通過時(三陸沖を通る低気圧の場合)「降水量」は多め、気温が低い場合大雪になりやすい

宮古市内の「雪事情」は、沿岸部と山間部では場所によっては大きな違いがあります。

山間部は特に市の西側ほど雪が増えやすく、区界地域・早池峰山周辺など市の西端部周辺は日本海側から流れ込む雪雲(冬型の気圧配置)で積雪しやすい特徴を持ちます(JR川井駅周辺までは冬型の気圧配置による雪は目立たない)。

一方で沿岸部は、主に雪が積もる場合は「低気圧」の通過によるパターンが大半で、「冬型の気圧配置」で雪がまとまることはほぼありません。

なお、三陸沖を低気圧が発達しながら通過する際の「降水量」は沿岸部寄りの方が多くなる傾向があり、とりわけ「海に近い山地」では斜面の影響で雲が発達しやすいため、集中的な大雪に見舞われやすい環境です。

【宮古市】雪が降る要因・パターン

宮古市に雪をもたらす典型的な気圧配置(三陸沖を発達しながら通る低気圧)
出典:気象庁「日々の天気図」(https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/hibiten/index.html)※トリミングの上利用

宮古市で雪が降るケースは、沿岸部など大半の地域で「低気圧」の影響による場合が最も一般的です。

沿岸部では影響は少ない一方、市の西端部に近い地域では「冬型の気圧配置」による雪が降りやすくなります。

低気圧は日本海→太平洋に向けて東北を縦断する低気圧三陸沖を発達しながら進む低気圧のいずれかで雪となる場合が大半です。

大雪となるケースは多くが関東周辺から太平洋を北寄りに進む「三陸沖を発達しながら進む低気圧」が要因で、過去には1日で50cm前後の「ドカ雪」が降ったこともあります。

関東・首都圏で雪をもたらす「南岸低気圧」は、その進路が三陸沖へ向いた場合は宮古市で大雪となる可能性がある一方、関東の南海上を東に真っすぐ進むルートでは、何も降らないことが多くなっています。

【宮古市の雪】その他知っておきたいポイント

スタッドレスタイヤは基本装備

宮古市は「北日本基準」では雪は少な目の地域ですが、沿岸部といっても冬はしっかり寒い地域であり、積雪も一般的に見られます。
冬場はスタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)の利用は事実上「必須」の地域であり、関東方面など雪がより少ない地域から車で訪れる場合にも、ノーマルタイヤでの移動は危険を伴いますので避ける必要があります。

盛岡・仙台と比べると?

宮古市の市街地で降る雪の量は「仙台市」よりはかなり雪が多めですが、「盛岡市」よりはかなり少な目となっています。仙台市よりも宮古市は寒気が入りやすく雪が多い一方、盛岡市の場合「冬型の気圧配置」で雪が降りやすい一方、宮古市街地ではその影響を受けにくいことがその「差」につながっています。
なお、低気圧通過時の「大雪(1日30cm前後~など)」に限ってみると盛岡市よりも宮古市で多めです。

北海道より寒い?区界地域の雪

宮古市の西端部付近にあたる「区界」地域は、内陸部の標高が高い環境ということで、沿岸部とは全く気候が異なります。
平均気温は札幌より低く、最低気温が-20℃台を観測することもあるなど「極寒」の地で、雪が一度積もるとかなり解けにくい特徴を持ちます。
積雪は少ない年でも概ね最大50cm以上、近年の多い年は1m30cm以上の記録があり、日本海側の山間部には及ばないものの「豪雪地」と言える環境となっています。