JR線「障害者割引」の基礎知識【割引対象・割引額など】

交通・地理

全国の交通機関の多くでは、障害をお持ちの方を対象とする各種割引制度・割引運賃(料金)の設定が行われています。

こちらでは、最も利用の機会が多い交通手段の一つである「JR線」について、障害者割引に関する各種の基本的な知識(割引の対象・割引額など)を詳しく解説していきます。

情報は2023年現在のものです。その後状況が変化している場合があります。

障害者割引の対象となるケースは?

対象

各自治体が発行する「身体障害者手帳」または「療育手帳」をお持ちの方(条件により介護者も含む)

上記手帳をお持ちの場合、手帳の「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額欄」に「第1種」もしくは「第2種」の記載があり、そちらが割引の対象である証明となっています。

記載が「第1種」であるか「第2種」であるかにより、割引となる内容には差があります。

また、介護者の有無で割引の内容が大きく違っている部分があり、その点も注意が必要です。

大まかに言えば、100kmを超える区間のきっぷは全てのケースで割引になり、1種障害者の方が介護者の方と利用する場合、短距離のきっぷも割り引かれます。

JR各社で定められた割引の制度を表で表すと、以下のような形になります。

区分割引対象割引額
第1種障害者の方と介護者普通乗車券(全ての距離)
定期乗車券
回数乗車券
普通急行券
運賃・料金の50%
第1種障害者の方が単独で利用普通乗車券(100kmを超える区間のみ)運賃・料金の50%
12歳未満の第2種障害者の方と介護者定期乗車券※定期については介護者のみ割引(小児定期運賃は割引なし)
第2種障害者の方が単独で利用普通乗車券(100kmを超える区間のみ)運賃の50%

上記の表では「回数乗車券」や「普通急行券」も制度の枠組みに入っていますが、回数券は各社で廃止の流れであり、急行列車も現在定期的に運行されている訳ではないため、実質的には「普通のきっぷ(運賃)」と「定期券」のみが割引の対象となっています。

JR線とその他の会社線(私鉄・第3セクター)などを直通してご利用頂く場合は、連絡きっぷが発売可能な範囲である場合、割引の連絡きっぷをお買い求め頂くことが可能です。

精神障害者保健福祉手帳は割引の対象外

2022年現在、障害者手帳をお持ちの方であっても「精神障害者保健福祉手帳」については、割引の対象外となっています。

JRの全ての会社で対応は同じであり、介護者がおられるケースも含め、きっぷの種類を問わず対象外となっています。

精神障害者割引を行っている鉄道会社は少なく、大手では西鉄・近鉄(2023年以降)、その他は公営地下鉄・第3セクターの鉄道会社など一部に留まります。

特急料金・グリーン料金などは割引の対象外

障害者割引については、特急列車の自由席・指定席・グリーン席を利用する際の特急料金・グリーン料金には適用されません。グランクラスやその他座席指定サービスを利用する場合も同様です。

また、特急列車については各種の「お得なきっぷ」類が発売されている場合がありますが、お得なきっぷに障害者割引は一切ありません。「障害者割引運賃+通常の特急料金」と「お得なきっぷ」の価格のどちらが安くなるかによって、障害者割引を使うのがお得になるケース・そうでないケースがあります。

料金の例・新幹線を使う場合はどうなる?

新幹線をご利用の場合は、これまで解説した通り「運賃」は障害者割引が適用されますが、「特急料金(グリーン料金・グランクラス料金)」にあたる部分は割り引かれず、通常の特急料金などが必要となります。

また、100kmを超えない比較的短い区間をご利用の場合、介護者がおられる第1種障害者の方以外は運賃割引の対象外となり、全額通常の運賃・料金が必要です。

料金の例(第1種障害者の方・介護者あり)

【東京~新大阪(新幹線)】
・通常運賃、料金14,720円から運賃のみ半額で10,270円
・2名で合計20,540円
【東京~小田原(在来線)】
・通常運賃1,520円、運賃半額で760円
・2名で合計1,520円

料金の例(第2種障害者の方・単独で利用)

【東京~新大阪(新幹線)】
・通常運賃、料金14,720円から運賃のみ半額で10,270円
【東京~小田原(在来線)】
・100kmを超えない区間かつ介護者なしのため割引の対象外
・1名で通常運賃1,520円

障害者割引きっぷの購入方法

障害者割引のきっぷをお買い求め頂く方法は、大まかには下記の通りです。

購入時には「身体障害者手帳」または「療育手帳」本体をお持ちの上、手帳を駅係員の方へお見せ下さい。

なお、障害者向けスマホアプリ「ミライロID」を手帳の代わりとすることも可能ですが、マイナポータルとの連携が取れている場合に限られます。

紙のきっぷ原則的に駅の窓口で障害者手帳を呈示の上購入
※JR西日本など100kmを超えない区間の場合券売機のきっぷを「子供運賃」で購入の上、改札口で手帳呈示で対応可能なケースあり
ICカード会社・障害種別により対応が異なるため注意
障害者向け割引ICカードが導入の場合あり(第1種のみ)
定期券駅の窓口で障害者手帳を呈示の上購入

JR「障害者割引」の基礎知識【まとめ】

JR各社の障害者割引は「身体障害者手帳」及び「療育手帳」をお持ちの方に適用されます。

割引は手帳に記されている区分(1種・2種)、また「介護者」の同伴があるかどうかにより適用範囲が変わります。例えば通常の割引きっぷは100kmを超える区間の場合上記手帳をお持ちの方全てに、100kmを超えない区間の場合同伴者のいる1種障害者の方に発売されます。

「精神障害者保健福祉手帳」は割引の対象となりません。

特急券・グリーン券などの料金は障害者割引の対象ではありません。原則的に運賃の部分のみ割り引かれます。在来線特急・新幹線をご利用の場合いずれも同様です。

きっぷをお買い求め頂く場合、基本は駅の窓口などで直接購入(手帳を呈示またはマイナポータル連携済みのミライロIDを呈示)する形となりますが、第1種障害者の方向けの割引ICカードの導入も進んできています。また、一部100kmを超えない区間では券売機で「子供運賃」のきっぷを購入・改札で手帳を呈示することで対応可能な場合(JR西日本など)もあります。