こちらのページでは、中部地方の最も南側に位置し太平洋に面する「静岡県」について、その「雪事情(雪の降る・積もる傾向など)」というテーマから詳しく解説していきます。
静岡県は、「雪」というイメージとのつながりが非常に薄い地域とされることが多く、実際に都市部・平地で雪が降ることは極めてまれですが、「南アルプス」・「富士山」を有する地域でもあるため、場所によっては雪がかなり多い状況も見られます。
掲載情報は2022年時点のものです。その後状況が変化していく可能性もありますので、その点はご留意下さい。
静岡県内「雪に関する基本データ」
観測地点名 | 年間降雪量 (cm) | 年間最深積雪 (cm) | 積雪5cm≧ 年間平年日数 | 年間降雪日数 | 過去最大の積雪深 (cm) |
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静岡(静岡市) | 0 | 0 | 0.0 | 4.1 | 26(1945/2/25) |
【参考】東京 | 8 | 6 | 1.2 | 8.5 | 46(1883/2/8) |
静岡県内で、気象庁が雪の観測を行っている地点は「静岡(静岡地方気象台)」ただ一つです。
降雪量の平年値は「ゼロ」であり、一瞬舞うだけ・みぞれも含めた降雪日数もごくわずかと、事実上「雪とは無縁」な環境に近いデータとなっています。
なお、かつては静岡県内の各地(三島・網代・石廊崎・御前崎・浜松・富士山)で雪に関する観測が実施されていましたが、それらのデータも含め昭和にさかのぼって見た場合も、特殊な環境である富士山を除く全ての観測地点で雪が非常に少ない状況が見られます。
静岡県内「地域ごとの雪の傾向・降る要因」
静岡県内の雪事情について、「地域ごと」の大まかな傾向・「降る要因」をまとめると、下記のような形となります。
西部・中部の平地
雪の量 | ・雪はほぼ積もらない ・極めてまれな積雪時も概ね5cmに満たない |
雪の頻度 | ・雪が舞うことも含め極めてまれ |
雪の時期 | ・極めてまれに降る場合12~2月が基本 |
雪の要因 | ・強い「冬型の気圧配置」 ・過去の積雪事例は県内特有の「局地前線」が要因となった特殊な事例あり ・「南岸低気圧」による雪は非常に少ない(ごくまれにみぞれ程度) |
西部・中部の山地
雪の量 | ・井川など標高が高い地域では20cm以上の積雪も一般的 ・過去には井川で1m近い積雪(2014年2月)も ・森町の山沿い、川根本町中心部など標高500mに満たない場合、積雪は増えにくい ・人が住まない「南アルプス」の山岳地帯は「メートル単位・夏まで残る」雪が見られる |
雪の頻度 | ・標高が上がるほど増加 ・井川など標高が高い地域の場合、年によって何度も「積もる雪」となる場合あり |
雪の時期 | ・2月は特に多い傾向 ・12~3月にかけて降る場合あり |
雪の要因 | ・大雪のケースは原則全て「南岸低気圧」 ・降雪自体は「冬型の気圧配置」によるケースも西側、標高が高い場所ほど多め |
東部・伊豆
雪の量 | ・御殿場などは時に20cm~のまとまった積雪となる場合あり ・伊豆半島の標高が高い山地も雪が増えやすい ・三島や沼津など海沿い(平地)の場合雪はほぼ積もらない(ごくまれに積もってもうっすら程度) |
雪の頻度 | ・標高が高い地域では何度も「積もる雪」が降る場合あり ・海沿いや平地の雪は「降るだけ」も含めかなりまれ |
雪の時期 | ・1~2月が中心 ・12月以前の雪は少ない ・標高が高い場所では3月以降にまとまった雪となる場合も |
雪の要因 | ・「南岸低気圧」がほぼ全てを占める |
静岡県の雪事情「ここがポイント」
平地・海沿いは「日本で最も雪が少ない場所」の一つ
静岡県は、平地・海沿いの雪は「極めて少ない」地域です。
さすがに沖縄・奄美のように「雪と事実上無縁」の地域というのは言い過ぎかもしれませんが、南西諸島などを除く全国各地の中では「宮崎県」の平地とほぼ同等の雪の少なさで、日本で最も雪が少ない地域の一つとなっています。
静岡の気象台で雪が積もるケースは2005年を最後に記録されておらず、浜松市は静岡市よりわずかに頻度が増えるものの、積もっても数字に残らないほどの「ごくうっすら」が大半を占めます。
東部の三島・沼津方面、伊豆半島一帯でも雪が少ない傾向は同様で、平地・海沿いの全域で雪が積もらない年が多くを占め、降った場合も一瞬舞う程度やみぞれで降る場合が多いなど、遠目に見る富士山の雪を除き、雪は身近に感じる機会はないと言えます。
県内には「豪雪地帯」もある
全国トップレベルの「雪の少なさ」が特徴の静岡県の平地ですが、山地に目を向けると日本最高峰の「富士山」に加え、日本で最も山深い環境を持つともされる「南アルプス」という「3000m級」の山岳地帯があることも静岡県の特徴です。
山地では標高が高いほど雪の頻度・量が増える傾向で、例えば静岡市内でも標高800m程度の「井川」地域では、「南岸低気圧」の通過によって大雪となることも珍しくなく、過去には50cm以上~と推定される積雪に何度も見舞われるなど、国の制度上の「豪雪地帯」に指定される地域となっています。
登山でしかアクセスできないような高山地帯については、平地とは全く異なる環境で、数mの雪が積もり、夏まで残雪が見られる場所もあり、単に「静岡県」といってもその「雪事情」は実に多様な状況です。
富士山の雪は?
人が住む地域ではなく、日本最高峰である「富士山」に関して見た場合、雪事情は非常に特殊なものとなります。
富士山は高い場所ではメートル単位の雪が積もる環境で、夏にかけて残雪が見られることがあるなど、雪は非常に多くなっています。
また、秋~春にかけては「何かが降る」ことが「雪」に直結する場合が多いため、降水量が少ない秋~冬と比べ、むしろ春先になってからの雪の量が多い場合もあり、3~4月にかけて最も分厚い「雪景色」が見られる場合があります。
都市部で雪が多い場所は「御殿場」
平地・海沿いでは雪がほぼ降らない静岡県ですが、「市」であっても平地・海沿いではなく標高が比較的高い場所にある「御殿場市」については、他地域とは全く環境が異なります。
御殿場市は、標高が高く気温が下がりやすい点・地理的には関東地方や富士五湖周辺に近く「寒気」の影響を受けやすい点・低気圧通過時に「降水量」がまとまりやすい点が影響し、「南岸低気圧」が通過する際に「雪」で降るケースも少なからず見られます。
積雪は年によっては20cm以上、過去には50cm前後の「ドカ雪」となったケースもあり、三島方面から車で移動すると、雨から急激に雪景色へ変化することもしばしば見られます。
イレギュラーな積雪要因?
通常余り意識する必要はありませんが、過去に県内の「雪がほぼ降らない」場所で極めて珍しい「積雪」となった事例を見ると、国内の他地域で見られるような「冬型の気圧配置」・「南岸低気圧」によるケースではない「局地前線」・「寒冷前線の通過」という特殊要因で雪が積もっている場合があります。
局地前線とは、濃尾平野方面・関東平野方面から流れ込む異なる向きの風が、静岡県付近でぶつかって上昇気流を発生させ「雪」をもたらすケースであり、寒冷前線の通過の場合は、冷え込みが強い日に一時的に前線が通過し「雪」をもたらすケースとなっており、いずれもかなりイレギュラーな事例と言え、予測はかなり難しい存在です。