宮崎県・宮崎市の「雪事情」とは?

自然・気候

こちらでは、九州の南東側に位置する「宮崎県」について、冬場の「雪」に関する基本的な状況(雪事情)」を解説していきます。なお、解説する内容は全て「過去の一般的な傾向」です。

宮崎県は一般に雪が非常に少ない場所として知られていますが、一部山間部などは例外も見られます。当ページでは、基本的に「宮崎市」の状況について述べていきますが、一部でその他の地域の状況も加えて解説していきます。

沖縄を除く全都道府県庁所在地で「最も雪が珍しい・少ない」宮崎市

宮崎県の県庁所在地であり、多くの人口が住む宮崎市は「雪」というテーマで見た場合、日本国内の沖縄県那覇市を除く「全都道府県庁所在地」の中で、最も降る・積もる頻度・量が少ない地域です。

降雪日数積雪回数(平成以降)
宮崎3.6日1回
静岡4.1日3回
高知10.3日13回
気象庁の平年データ(2020年まで)・観測データによる
積雪記録の多い順
1位3cm(1945年1月24日)
2位2cm(1987年2月3日)
3位2cm(1906年2月11日)
4位1cm(2005年12月22日)
5位1cm(1975年2月22日)
宮崎市の歴代積雪ランキング(上位5位まで)
気象庁の観測データによる

例えば、上記のように雪が国内でも特に少ない静岡市・高知市と比較した場合においても、宮崎市の雪の少なさははっきりしています。

宮崎市では2005年12月に1回だけ積もった雪を除き、平成以降積雪の記録が存在しません。静岡でも3回、南国と呼ばれる高知では13回、大阪・福岡などは雪は非常に少ないものの、高知を大幅に上回る回数雪が積もっている地域ですので、宮崎市だけがいかに「雪がまれ・少ない」かが良く分かります。

なお、積もるのではなく「わずかに舞う・みぞれが降る」といった状況も含んだ「降雪日数」で見ても、宮崎は年間平均3.6日と静岡を下回り、沖縄の那覇を除いては最下位です。

宮崎市は「雪が降る可能性がある」場所として見た場合、日本の都道府県庁所在地では、断トツの「雪の少なさ」であり、一般的に雪が少ないとされる太平洋側の地域の中でも、比べ物にならないような少なさを有する地域なのです。

宮崎市の属する九州地方は、雪が少ないと言われながらも、鹿児島や長崎では平成以降に15cm以上の大雪を観測しているほか、福岡も寒い年には比較的雪が舞いやすいなど、九州全体として見た場合「雪が降らない」地域とまでは言い切れませんが、その中でも宮崎市はかなり異色の存在となっています。

雪の少なさは「温暖化」が特に議論されるようになる前の「気温が低い時代」を含めてみても、傾向は変わらず「極めてまれ」で、明治の観測開始以来3cmを上回る積雪の記録はなく、1cm以上積もった記録は130年以上の観測の歴史の中でわずか「7回」となっています。

どうして宮崎市は雪がほぼ降らないのか

沖縄以外の都道府県庁所在地の中では圧倒的な「雪の少なさ」である宮崎市。

宮崎市で雪が少なくなる理由は比較的シンプルで、その地理的な条件が要因となっています。

九州に雪をもたらす要因(気圧配置)としては、そのほとんどを占める「冬型の気圧配置」、また一部地域でまれに雪をもたらす「南岸低気圧」の基本的に2つの要因がありますが、下記の通り、宮崎市ではその2つの要因のいずれの場合も、雪が基本的にほぼ降らない条件を満たしています。

冬型の気圧配置・雪雲があっても、九州山地の西側や山地一帯のみで雪を降らせる
・山を越えて宮崎市側では「雲が消え」晴れ間が続く
・雪雲の「切れ端」が宮崎市街地に届くようなケースは「強烈な寒波」に限られる
・仮に雪雲が入っても、ほとんどのケースで一瞬降るだけ
南岸低気圧・宮崎市は気温が高く、海からの気流の影響もありまず雪にならない

宮崎市は、九州の中では南東側、日向灘(太平洋)に面した位置にあり、東シナ海側ではありません。「冬型の気圧配置」の際には、雪雲は日本海(対馬海峡)や東シナ海側から九州へ流れ込みます。

雪雲が流れ込む方角から「最も遠い」場所の一つにあたる宮崎市は、雪雲は九州山地周辺で消えてしまうためほぼ流れ込まず、結果として冬は「良い天気」が長期間続いてかなり乾燥する形になります。

この構図は、決して宮崎だけではなく「関東地方」にも典型的に見られるもので、上越国境付近まで流れ込んだ雪雲が、群馬県内で急速に消え、関東平野一帯は「晴れ続ける」冬の天気をイメージして頂くとわかりやすいかもしれません。

但し、関東の場合「南岸低気圧」による大雪がまれに見られる一方、かなり温暖な宮崎では、平地で南岸低気圧による雪はおろか、みぞれすら基本的にない状況ですので、その差が「雪の極端な少なさ」をもたらしていると言えます。

地域ごとの傾向で見た場合は?

宮崎県内の「雪事情」について、宮崎市だけではなく全体の地域ごとの傾向をごく簡単にまとめると、下記のような形になります(過去の一般的傾向)。

県北・延岡市や日向市など海沿いは宮崎市に近いくらいの雪の少なさ
・基本的に「西(山の方角)」へ向かって雪の頻度が増えるわかりやすい環境
・高千穂町、椎葉村、五ヶ瀬町をはじめ標高の高い九州山地沿いは「雪が珍しくない」地域で、九州全体でも雪が多い地域
・九州山地沿いの標高の高い地域では「南岸低気圧」による大雪も見られ、まれに20cm以上のケースも
県央・宮崎市周辺など「海から近い地域」は全国的に見ても(沖縄を除く)最も雪が少ない環境
・西米良村など九州山地沿いの標高の高い地域は雪の頻度が増える
県西・都城などの雪はかなり少ない、但し最も少ない宮崎市と比べると「極めてまれ」の頻度は増える地域
・えびの市など西側へ行くと「鹿児島県内」に近い環境となり、10年間で少なくとも数回程度は積雪があるような環境
県南・かなり温暖な環境のため、宮崎市と同様に雪はほぼ降らない
・串間市側は鹿児島方面からの雲が宮崎市よりは入りやすいものの、ほぼ積もらないという点で大きな差はない

一くくりに宮崎県と言っても、雪の降る頻度にはかなりの地域差があります。

最も重要な点としては、九州山地沿いは標高が高い上に、雪雲が宮崎市と比べるとかなり入り込みやすい環境ですので、特に県北地域の一部(高千穂・椎葉・五ヶ瀬など)は、雪が積もることは決して珍しくないという点が挙げられます。

むしろ、これらの地域は九州の中でもよく雪が積もる地域と言えるほどで、宮崎市とは根本的に環境が異なります。冬に自動車で移動する際などに、宮崎市では考えられないような路面状態となっていることもありますので、スタッドレスタイヤなどの装備が求められる地域と言えるでしょう。

ポイント・まとめ

「宮崎市」は、沖縄を除く全都道府県庁所在地の中で「最も雪が少ない」地域です。
・宮崎市の積雪記録は、130年の歴史で1cm以上の積雪がわずか7回など、他の「少ない」都市との比較にもならないほどの「少なさ」です。
宮崎市で雪が降らない理由「冬型の気圧配置」の際に雪雲が九州山地で消える点が大きな要因で、「関東平野」の冬と構図は似ています。
・県内全体で見た場合、県北地域の九州山地沿いなど「雪が珍しくない・大雪もある」地域が存在し、地域によって大きく異なる特徴も見られます。