長崎県・長崎市の「雪事情」とは?

自然・気候

こちらでは、九州の西部に位置し離島も多い「長崎県」について、冬場の「雪」の状況(雪事情)を解説していきます。なお、解説する内容は全て「過去の一般的な傾向」です。

九州は全体的に雪が少ない地域であり、長崎県も例外ではありませんが、過去の事例を見て行くと、まれに大雪となるケースも見られ、全く雪が積もらない地域という訳ではありません。

長崎市の雪事情とは?【まれに雪が積もる地域】

長崎県の県庁所在地である長崎市は、その「雪事情」は単純ではありませんが、一般論として最も基本的なデータで見た場合、元々雪が少ない都市しかない「九州の県庁所在地」で見た場合、「少ない中」では「やや雪が多い」地域と言えます。

年間降雪量年間最深積雪年間降雪日数
長崎市の平年値4cm
(同率1位)
3cm
(同率1位)
18.7日
(2位)
気象庁の平年データ(2020年まで)による・順位は九州の8県庁所在地中

雪に関するデータで見た場合、降雪量・最深積雪は佐賀市と並んで九州の県庁所在地では同率1位、雪が降るだけも含めた降雪日数は佐賀市に次いで2位となっています。

但し、九州の県庁所在地は、どこでも積雪は「少な目」かつ「まれ」で、全国的に見れば雪が珍しい地域と言えます。

長崎市で積雪となる事例は、近年で見れば2年、3年連続で「積雪なし」の年もあるなど、必ずしも毎年雪が積もっている訳ではなく、積雪の頻度はあくまでもまれな地域です。

また、長崎市で雪が積もるケースは、「冬型の気圧配置」によるものが事実上すべてで、九州の内陸などで雪が積もるケースもある「南岸低気圧」による雪は、海に突き出した地理的条件が温暖な気流をもたらすため、まずありません。

なお、長崎市は観光でも有名なとおり「坂の町」です。田上方面の一部など、標高が200m前後の市街地もあるなど、市内でも一定の気温差が生じます。標高の高い地域では、積もる場合の量は観測されている数字より多い場合もあると言えます。

近年は「大雪」が見られる長崎市

雪が少ない傾向の長崎市ですが、近年は雪が全く積もらない年も多い一方で、九州の中でも突出した積雪を観測する場合があるなど、「大雪」となるケースが見られます。

2021年1月9日15cm(九州の観測地点では最大)
2016年1月24日17cm(九州の観測地点では最大)
2010年12月31日11cm(九州の観測地点では鹿児島に次ぐ2位)
2001年1月16日14cm(九州の観測地点では最大)

平成以降の時代で、長崎市で積雪が10cm以上となった事例を見てみると、4回あるうちの3回は2010年以降となっています。

また、大雪となった事例では、九州の観測地点(阿蘇方面なども含む)の中では最も多い積雪となった事例が3回あり、福岡や佐賀などでは10cm以上の積雪が近年ないことを考慮すると、大雪となる頻度は同じく積雪が突出しやすい鹿児島市と同等か、それより更に多いとも言えます。

一方で、より古い時代を見ると、長崎市では1968年から2000年までの30年以上に渡り、1度も10cm以上の積雪が観測されていません。この時代には、むしろ福岡などで10cm以上の大雪が見られるケースがあった時代ですので、長期的なデータで見ると、長崎は特段大雪が多い地域とは言えなくなります。

21世紀になってから、大雪が突然見られるようになった地域は、日本全国を見ても他に存在しないため、この傾向がなぜ生じたのかや、単なる偶然なのかも含めわからないことが多い状況です。

出典:地理院地図(一部作図の上利用)

但し、雪が降る「冬型の気圧配置」の一般論として考えた場合、雪雲が発生する対馬海峡一帯の「距離」は、例えば韓国側~福岡側の「海上距離」に比べ、韓国側~長崎側の「海上距離」の方が長くなり、本来雪雲は長崎の方が発達した状態で掛かりやすい環境と言えます。

県内各地の「雪事情」は?

長崎市のみならず、長崎県内全体で見た場合の「雪事情」は、非常に大まかにまとめると下記の通りです。なお、あくまでも過去の一般的な傾向となります。

長崎地域・前述の通り、雪は少ないものの積もるケースあり
・但し、全く積もらない年もあり
・「少ない」中でも「県内」や「九州」の中では積雪の頻度、量が多い地域
・近年大雪の頻度が数年おきと増えている状況
県北地域・長崎市と比べ雪雲が進む「海上距離」が短いため、積雪の頻度や量はより少ない傾向
県央地域・長崎市と比べ積雪の頻度、量はより少ない傾向
・発達した雪雲が掛かるケースはかなり少ない
島原地域・長崎市と比べ積雪の頻度、量はより少ない傾向
・雪雲が陸地(西彼杵半島など)を通るうちに更に弱まりやすく、積雪をもたらしにくい
五島地域・積雪は長崎市と比べても少ない傾向
・但し、海上で雲が発達する場合があるため、積雪が見られるケースはあり
・例外的に1963年の38豪雪では最大43cmと、九州の平地では最も多い積雪を観測
壱岐地域・朝鮮半島側からの距離が比較的近く、雪雲の発達が抑えられるため、積雪は九州の中でも少ない傾向
対馬地域・朝鮮半島側からの距離が近すぎるため、雪雲が発達できず、極めて雪は少ない(1cm以上の積雪がほぼない)

長崎県内は、平地で雪が積もる頻度・量として見た場合、平均すれば長崎市が最も雪が積もる頻度・量が多いと言えます。

もちろん、その長崎市も絶対的には「少ない」訳ですので、長崎県は全体的に雪が積もることは極めてまれな地域となっています。

特に、北側の地域(とりわけ対馬などの離島部)は、朝鮮半島側からの距離が比較的近いため、対馬海峡の海上で雪雲がしっかり発達できず、雲が掛かっても積もるほどの雪にはならない場合が大半となります。

県内でも「雲仙岳の山頂付近」などであれば状況は異なることも考えられますが、熊本・大分・宮崎県の山間部のように、「人が住む地域」も含め標高がかなり高いような地域は県内にはほぼありませんので、全体的に雪が少ない傾向は顕著になっています。

なお、現在のような温暖化時代とは言えない、1963年のいわゆる「38豪雪」では、五島列島の福江市で43cmという異常な積雪となったケースもありますが、その後の福江ではまとまった積雪となることは長崎市と比較しても極めてまれな状況で、この記録をもって五島列島=雪が多いとすることは出来ません。

【長崎県・長崎市の雪事情】ポイント・まとめ

長崎市は、積雪はまれな地域ですが、「雪が少ない」九州の県庁所在地の中で見た場合やや雪の多い地域と言えます。
・長崎市では、積雪が全く観測されない年もある一方、21世紀に入ってから逆に「大雪」の頻度が増えており、雪が積もった場合、九州で最も多い積雪を観測する場合が見られます。
・県内全体で見ると、長崎市以外の地域は更に雪が少ない傾向があり、特に朝鮮半島側からの距離が近い対馬などの離島部は、積雪の少なさは際立っています。