こちらでは、九州の拠点地域とも言える福岡県・福岡市の気候について、冬の雪の降る・積もる頻度や量など、その「雪事情」を解説していきます。
福岡県は、一般に温暖で雪が少ない傾向がある地域ですが、日本海(対馬海峡)に面していることもあり、冬には雪が舞うケース、ごくまれに積もるケースも見られます。
雪は少ない福岡市・但し積雪は多くの年で観測
福岡県の県庁所在地であり、九州経済の拠点である福岡市は、その「雪事情」を見た場合、雪は少ない地域と言えますが、積雪自体は多くの年で観測されており、全く雪が積もらない地域という訳ではありません。
雪が積もらなかった年 | 6回/34年間 |
雪が1回積もった年 | 5回/34年間 |
雪が複数回積もった年 | 23回/34年間 |
平成以降~2022年までの気象庁データに基づく
上記の区分は、1cm以上の積雪に加え、ごくうっすら(気象庁の観測方法では「積雪0cm(但し積雪あり)」の状態も含む)積もった場合もすべて含めた上で、各年ごとの積雪状況を分けたものですが、福岡市では多くの年で雪が少なくともごくうっすら積もっているケースが多い上、積雪は1回だけではなく、一冬で複数回見られるケースが過半数を占めています。
朝だけ一瞬白くなった、とか1~2時間だけ道路が凍っていた。といったような意味での「わずかな積雪」を考慮すれば、福岡市は積雪自体は少ないとは言え、積雪が極めて珍しい地域とまでは言えません。
福岡 | 佐賀 | 長崎 | 熊本 | 大分 | 宮崎 | 鹿児島 | 大阪 | 神戸 | 松山 | |
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年間平年積雪日数 | 2.8 | 3.3 | 2.3 | 1.4 | 1.1 | 0.1 | 1.1 | 1.0 | 1.8 | 1.2 |
九州各地との比較で見た場合、積雪の頻度は概ね佐賀などに次ぐ水準で、大分・熊本・宮崎といった雪が少ない地域と比べると、積雪となる頻度は明らかに多い地域と言えます。また、その他地域との比較でも、大阪・神戸・松山といった雪が少ない地域よりは、積雪頻度は明らかに多い地域です。
福岡市の場合、北側は玄界灘・対馬海峡一帯(広い意味での「日本海)」になっており、強い冬型の気圧配置となった場合は、海上で発生した雪雲が流れ込むことがあり、「寒い冬」となった場合には、雪が降ること自体は珍しい地域ではありません。そのため、わずかな積雪を含めた場合、少ないながらもある程度の頻度で観測される状況となっています。
なお、市内各地の状況で見た場合、山の方へ行くほど積雪の頻度・量はやや増える傾向があると言え、例えば人が住む地域で見た場合、早良区の内野方面などが、雪がより見られやすい環境となっています。
福岡市は「大雪」が少ない地域
雪が積もること自体は、毎年のようにある福岡市ですが、積雪の量で見た場合、積雪が10cm以上となる大雪はかなり少なく(21世紀以降なし)、5cm以上のややまとまった雪も含め見られにくい地域でもあります。
福岡市は、確かに海に面しているため、「冬型の気圧配置」となった際に雲が真っ先に入って来る地域で、雪が降ることもあります。
但し、福岡に流れ込む雲は、その「強さ」は弱い場合が目立ちます。
雲は福岡から概ね200km程度離れた朝鮮半島沿岸付近で発生し、その後対馬周辺を通って福岡へと入るルートを辿りますが、大まかに言えばこの「200km程度」という距離は、雲をしっかり発達させるにはやや短すぎる距離(時間)となります。
例えばより温暖な鹿児島では、雲は400km以上も海上を進んだ上で到達するため、雪の頻度は少なくても、降る時にはかなりの大雪(2018年には14cm、2011年には25cmも)となるケースがありますが、福岡ではそのような状況にはなりにくくなっています。
また、福岡は平成以降の発展が凄まじく、気温もそれに伴い上昇しているとされます(ヒートアイランド現象)。過去の事例を見ると、20世紀の段階では比較的少ない降水量で、福岡でも15cm程度の積雪となる事例がまれに見られましたので、そういった要因が関係している可能性もゼロとは言えません。
なお、弱い雲であっても山地にぶつかる際にはある程度発達するため、市内でも山間部や、周辺地域では佐賀市の山沿い、朝倉市などで10cm以上の大雪となるケースは近年でも見られます。
福岡県内各地の「雪事情」は?
福岡市のみならず、福岡県内全体についてその「雪事情」を見た場合、大まかには以下のような形にまとめられます。なお、あくまでも「過去の一般的傾向」となります。
福岡地域 | ・前述の通り福岡市の雪は少ない一方、積雪自体は多くの年で見られる ・まれに雪が積もる際には、内陸側ほど積雪が多い傾向(大宰府など) ・朝倉市などの一部は平地でも雪がやや積もりやすく、10cm以上の大雪も時折見られる ・福岡市周辺でも早良区や糸島市の山沿いなどでは、まれに積雪が多くなるケースも |
北九州地域 | ・雪事情は福岡市に比較的似た状況 ・山沿いではまれに雪が多くなるケースも |
筑後地域 | ・雪はそれほど多くなく、平地は福岡市並み程度かそれ以上に少ない傾向 ・一部山間部ではまれに雪が多くなるケースも |
筑豊地域 | ・福岡県内の平地としては雪が最も多い地域(絶対量としては多くない) ・内陸側、山沿いほど雪が多い傾向で、南北によって雪の量が異なる場合あり ・飯塚市ではごくまれに20cm以上の大雪となるケースも ・寒い年は何度も繰り返し積雪することも |
福岡県内全体で見た場合、飯塚市など筑豊地域の内陸側は、特別に雪が多い訳ではないものの、県内では雪が比較的積もりやすい環境となっています。
また、朝倉市なども福岡市と比べ雪が積もりやすい傾向があり、全体的には海沿いよりも内陸側・山に近い場所で雪がやや積もりやすい傾向となっており、自動車の運転などには一定の注意が必要な場合があります。
雪の多さはあくまでも県内で見た場合の比較であり、九州地方全体として雪は少ない傾向があるため、山沿いであっても暖冬の年はほとんど積もらないケースもあるほか、山沿いも含め、人が住む地域で根雪となるようなことは基本的にありません。
【福岡市・福岡県の雪事情】ポイント・まとめ
・福岡市は雪は少ない地域ですが、うっすらも含めた積雪は多くの年で観測されるなど、積もることが極端に珍しいとまでは言えません。
・福岡市では積雪となっても5cm未満の場合がほとんどで、10cm以上の大雪は21世紀以降観測されていません(2022年冬現在)。
・県内で見た場合、内陸側や山沿いでは積雪の頻度や量がやや多くなる傾向があり、平地でも飯塚市などは福岡市と比べ積雪の頻度、積雪した場合の量がより多い傾向があります。