除雪費は全て市町村の負担?国の交付金・補助制度について知る

自然・気候

冬になると日本海側の地域を中心に「雪」が積もることが多い日本国内では、雪の影響を受ける自治体ではその「除雪費用」が予算の中で比較的重要な位置づけを持つ場合があります。

一方で、その「除雪費用」の「財源」については、「なんとなく」のイメージで捉えてしまいがちなテーマであり、「市町村」が全額負担していると思っている方も少なからず見られます。

こちらでは、市町村が除雪を行う場合の財源について、国による交付金・補助制度などの状況など、その基本的な構造を解説していきます。

なお、掲載している情報は2022年冬時点での確認情報です。国や地方自治体の制度が変更となるなどして、その後状況が変化している可能性もありますので、その点はあらかじめご留意下さい。

国費による「除雪費」支援の仕組み

日本各地で行われている除雪作業は、私有地ではなく一般の「道路」で見た場合、道府県・市町村といった除雪を実施する地方公共団体(自治体)が実施する場合が大半です。

厳密には、一部の国道や各高速道路会社が管理する高速道路などは、自治体の行う除雪の範疇ではありませんが、基本的に大半の道路は道府県・市町村が管理している以上、ほとんどの区間は地方自治体により行われます。

地方自治体による除雪事業は、その事業自体はあくまでも地方自治体の「予算・決算」の枠内で行われますが、その「財源」については、国の財政措置・補助制度などが設けられており、必ずしも全て「自治体持ち」という訳ではありません。

普通交付税による措置・自治体に一括で交付する普通交付税(地方交付税)の枠内で、「寒冷補正」として積雪の度合いに応じて「標準財政規模」が割り増しされて交付が実施
・あくまでも「除雪費」という名目で補助が行われる訳ではない
・除雪費は増大傾向にあり、基本的にこれだけで除雪費が賄える状況にはない
雪寒地域道路事業費補助(社会資本整備総合交付金)・雪寒道路法と呼ばれる法律に基づき、「雪寒指定道路」として特に重要な区間として指定された道路の除雪費用のうち「3分の2」を国庫支出金として補助
・基本的に「道府県」が管理する道路(一部国道含む)に適用
特別交付税による措置・豪雪となった場合など明らかに除雪費が増大する場合、市町村の負担が増える場合は「特別交付税」としてその費用を更に支援
・積雪量に一定の基準があり、その基準を満たす大雪となった自治体に交付
・近年特別交付税の交付額が増える傾向
幹線市町村道除雪費補助の
臨時特例措置
・特に豪雪となった年には、市町村が行う除雪に対し「地方財政」の枠内ではなく直接的に国費による支援が実施
・同時に道府県管理の道路への追加補助が実施されることが基本
※当サイト調べによる(制度の解釈・理解に誤認がある可能性もありますので、その点はご了承ください。)

国による財政的な支援としては、基本的に上記の4つの措置・補助制度が主に実施されています。

基本的には、市町村が行う除雪については「地方財政」の枠内において、普通交付税の中に除雪費用を織り込んだ形で一括交付を行う形となっており、道府県の場合は主要な道路の除雪費用の3分の2が「国庫支出金(社会資本整備総合交付金)」として交付される部分が最も大きな国費による補助となっています。

また、大雪・豪雪となり除雪費用が増える場合、特別交付税や臨時特例措置・臨時補助措置などによりその増加分を国費で補填する形となります。

近年増える「特別交付税」措置

豪雪によって除雪費用が特に増えるような場合、国から別途「特別交付税」が地方自治体に交付されますが、近年特別交付税の交付額は多くなる傾向で、2022年には特別交付税として交付された除排雪費用は過去最多となっています。

除雪費用の増加は、必ずしも「雪がよく降る」だけが理由ではなく、地方における建設業者の現象、建設業全般の衰退・人手不足、除雪を行う重機やトラックの不足といった構造的問題による部分が大きくなっています。

結果「労務単価」などが増加し、「過去の雪が多い年」よりも「近年の暖冬傾向の年」の方が除雪費が多いケースすら見られるなど、除雪費用を巡る環境はなかなか厳しいものがあります。

自治体の「負担状況」の把握はやや難しい

除雪費用については、「自治体が実施する」事業に対し、先述の通り「国から間接・直接的な補助」を行い実施する形となっており、一つ一つの自治体で行われている除雪の状況について、どのくらいの負担がどこに生じているのか。という点を個人レベルが把握することは必ずしも容易ではありません。

例えば、除雪費用が「不足」したとして問題視されるような場合、「国からの支援が少ない」とか「自治体の持ち出しが多い」といった議論がなされることがありますが、先述の通り「市町村」であれば「普通交付税(地方交付税)」が交付される際に、「寒冷補正」として既に除雪費用の一部が「織り込み済み」となっているため、このポイントを含めて考えるのか、抜きにして考えるのかによって状況は大きく異なっていきます。

例えば、「国の補助」を「特別交付税+国庫支出金」だけで捉える場合、各自治体が支出する毎年の除雪費用は賄えるはずもありませんが、「普通交付税」の寒冷補正分を考慮して考えた場合、100%賄えるとは限りませんが、かなりの部分を国費で充当出来ているケースも見られます。

特別交付税については、積雪の量に一定の基準が設けられているため、同じ地域でも受け取る自治体とそうでない自治体が生じるケースがあるほか、臨時特例措置も実施されない年の方が多くなっています。全体的にはかなりの部分を「国費」で充当している一方で、各年の気候・雪の量のわずかな差などが、その自治体における除雪費用の「実質負担」を大きく左右する可能性もあるのが、現行の制度と言えるでしょう。

ポイント・まとめ

・各自治体が行う「除雪」は、その「事業」自体はそれぞれの自治体が行うものですが、「財源」は全て自治体側の負担という訳ではありません。
・国による支援としては、市町村へは「普通交付税」によって除雪費用をある程度考慮した額が加算して交付され、道府県へは「国庫支出金」によって主要な道路の除雪費用が補助され、豪雪時には「特別交付税」などによる追加の支援が実施されます。
・各自治体の負担は、何をもって「国の支援」と捉えるのか、また制度上の区分などにより解釈、状況は異なるため、一概に判断するのはやや難しいと言えます。