長野県の「気候の特徴」とは?【寒冷な地域・天候は地域差大】

自然・気候

海に一切面していない「内陸県」としては最も面積が大きい中部地方の「長野県」。

こちらでは、長野県の「気候の特徴」について、全体的特徴・各季節ごとの傾向など「基本的な知識」を解説していきます。

長野県は、全体的に「標高が高い」環境ということで、海に面した地域と比べ気温が低い「寒冷な気候」が特徴となっている一方、冬の雪などを中心に「天候」には大きな差が見られる地域でもあります。

長野県の気候「全体的特徴」

長野地方気象台の雨温図
松本特別地域気象観測所の雨温図
寒冷な気候

長野県は、県内の大半が標高500m前後より高い地域で、1,000mを越える地域も広く見られます。標高が高ければ気温は低くなるため、長野県は「緯度」の割には寒冷な気候が特徴で、内陸部のため「朝晩冷え込みやすい」ことも加わって、冬場はかなり寒い地域として知られています。

雨量の地域差大

長野県内は、地理的条件によって「雨」や「雪」が降る量は大きく異なります。大まかに言えば、東信地方・北信地方では雨がかなり少ない傾向があり、場所によっては年間平均1,000mmを下回るなど日本屈指の「雨の少なさ」となっていますが、中信地方・南信地方では松本など一部を除き比較的雨が多い傾向で、場所によっては年間2,000mm以上の場所もあるなど、同じ県内でもかなりの差が見られます。

雪国は一部のみ

長野県は「寒い」イメージから「雪が多い」イメージを同時に持たれやすい地域です。しかしながら、メートル級の積雪が一般的な「豪雪地」と言えるのは北信地方・中信地方のうち一部地域に留まり、多くの人口が住む大半の地域は、積雪自体は珍しくないものの、雪が特段多い訳ではありません。

長野県「春の気候」

平均気温(℃)3月4月5月
長野4.310.616.4
松本4.610.816.5
飯田6.111.816.9
軽井沢1.17.012.3
平年値(気象庁)
降水量(mm)3月4月5月
長野60.156.969.3
松本78.081.194.5
飯田139.1141.0153.8
軽井沢68.381.0108.8
平年値(気象庁)

長野県の春は、海沿いなど温暖な地域と比べるとその訪れはやや遅い地域です。

気温は3月の時点ではまだ低めで、4月以降にも霜・氷が見られるような冷え込みが都市部でも見られます。5月以降は気温が高めとなりますが、標高が高いこともあり、朝晩は冷えやすく、東京などと比べるとやはり気温の低さは目立ちます。

天候は周期的に変わる傾向を持つ一方で全体的には晴れる日が多く、「1年で最も日照時間が多い時期」となります。降水量は少ない時期ですが、低気圧通過時に雨がまとまりやすい中信地方・南信地方の山地では既に雨が比較的多い時期となります。

雪については、豪雪地である北信地方・中信地方の一部などは3月の時点で1m以上の積雪が残ることが一般的で、標高が特に高い地域では4月以降も残雪が見られます。但し、都市部など雪が少ない平地で積雪が長期間見られることはありません。なお、気温が低いため太平洋側を通る「南岸低気圧」によるケースを含め、3月中に雪が降る機会は都市部でも県の北側ほど一般的で、4月以降も一時的に積雪を観測する場合があります。

長野県「夏の気候」

平均気温(℃)6月7月8月
長野20.424.325.4
松本20.224.225.1
飯田20.624.425.4
軽井沢16.020.120.8
平年値(気象庁)
降水量(mm)6月7月8月
長野106.1137.7111.8
松本114.9131.3101.6
飯田192.0240.1149.4
軽井沢154.6191.8141.6
平年値(気象庁)

長野県の夏は、一般的に「避暑地」としての知名度が高いため、気温の低さがクローズアップされがちですが、気温・天気ともに地域差が目立つ時期でもあります。

気温については、確かに首都圏・京阪神など気温が非常に高い地域と比較した場合、長野県内の全ての地域で気温は低めで、標高が高い地域は「避暑地」として大変有名な場所も多くなっています。但し、長野市・松本市など一部の都市部や南信地方など「昼間の気温」は思いのほか上がりやすく、最高気温30℃以上の「真夏日」は当たり前のように見られ、最高気温35℃以上の「猛暑日」も時折見られます。

標高の割に気温が上がりやすい要因は、四方を山地に囲まれた場所が多いため、南寄りなどの風が山の斜面を温度を上げながら吹き抜ける「フェーン現象」が起きやすい点や、海からの風が入らないため熱が溜まりやすいといった要因が推定されます。

なお、朝晩は昼間とは異なり熱が逃げやすい環境となるため気温が下がりやすく、都市部でも「熱帯夜(最低気温25℃以上)」は極めてまれな現象です。

天気については、本州中部ということで「梅雨」のシーズンなどは一般的に見られる地域ですが、雨量は山の斜面の位置関係などで大きく変わるため、県内では中信地方・南信地方の山地で雨がかなり多い一方、北信地方・東信地方では雨が少ない傾向がはっきり見られます。

夏の天気はメリハリが大きい傾向で、8月は春と並んで最も日照時間が多い(晴れやすい時期となっており、梅雨明け後は天候不順には見舞われにくい環境と言えます。

長野県「秋の気候」

気温(℃)9月10月11月
長野21.014.47.9
松本20.413.97.8
飯田21.515.08.6
軽井沢16.710.54.8
平年値(気象庁)
降水量(mm)9月10月11月
長野125.5100.344.4
松本148.0128.356.3
飯田208.3163.393.4
軽井沢193.5151.152.5
平年値(気象庁)

長野県の秋は、標高が高い地域か北側の地域ほど、どんどん気温が下がっていく季節です。

気温は9月には都市部などで30℃以上の「真夏日」となる日も一般的に見られ、まだ「残暑」が感じられやすい季節ですが、朝晩は比較的早い時期からひんやりした空気を感じやすく、季節が進むにつれ肌寒さを感じる日も見られるようになります。11月の平均気温は都市部でも「九州の真冬並み」に近い気温となり、特に朝は冷え込みやすく、最低気温は氷点下の「冬日」が時折見られるようになります。

天候は、「日が差す時間」が短くなる中で日照時間が減る傾向が見られず、後半ほど「晴れやすい」傾向が強く見られます。雨については、9月から10月の特に前半頃にかけては、秋雨前線や時に台風の影響を受け、雨の量がまとまる場合があり、中信地方・南信地方の山地を中心に雨の量は多めの傾向となっています。

台風については、内陸県ということで影響を受ける頻度が多いとは言えませんが、2019年の「令和元年東日本台風」では大規模な洪水被害が発生したように、台風のルート・台風による前線の活発化など状況によっては特に「大雨による被害」が生じることがあり、油断することは出来ません。

雪は日本アルプスなどの高山地帯では10月中から積もる場合があり、11月にはすっかり冬景色に変化する場所も少なくありませんが、県内の都市部・平野部では秋の間には積雪しない年が多く、降る場合も初雪を観測する程度のケースが目立ちます。

長野県「冬の気候」

気温(℃)12月1月2月
長野2.3-0.40.4
松本2.5-0.30.6
飯田3.41.02.3
軽井沢-0.5-3.3-2.6
平年値(気象庁)
降水量(mm)12月1月2月
長野49.454.649.1
松本32.739.838.5
飯田65.463.478.7
軽井沢29.636.836.8
平年値(気象庁)
観測地点名年間降雪量
(cm)
年間最深積雪
(cm)
積雪5cm≧
年間平年日数
長野1633336.4
松本762614.6
軽井沢1413545.8
飯田61209.6
野沢温泉1087205119.5
白馬65510094.0
大町4545972.7
菅平648104120.1
【参考】東京861.2
平年値(気象庁)

長野県の冬は、一般的なイメージ通り大変「寒冷」な季節である一方、雪の量は地域差が極端に大きいため、一概に「雪国」とは言えません。

気温は概ね北側の地域・標高が高い地域ほど低く、開田高原・菅平など標高が高い地域北海道並みの極寒となり、場合によっては-20℃台の気温を観測することがあります。また、長野市・松本市といった地域でも平均気温は0℃前後まで下がり、-10℃近い冷え込みや、昼間も0℃前後の気温となるケースが見られることもあります。南信地方は県内では比較的温暖な気候ですが、静岡県境に近く標高が低いごく一部を除き比較的冷え込みが厳しく、東京・名古屋などと比べると「寒さ」が際立つ環境です。

雪は「冬型の気圧配置」の際に雪雲が日本海側から入り込みやすい、新潟県境沿いの北信地方・中信地方の一部地域がかなりの豪雪地であり、野沢温泉といった地域では積雪が2m以上となることも少なくなりません。一方で、「冬型の気圧配置」による影響は内陸側へ行くほど小さくなるため、長野市・大町市以南は雪の頻度が目立って減り、松本市や上田市周辺まで行くと雪がまとまって降る機会はまれになり、伊那谷方面などは特に雪が降りにくい環境となっています(気温が低いため、冬の間雪が全く降らない・積もらないケースは基本的になし)。

雪が少ない地域については、冬の天気は「晴れ」が長期間続きやすい「関東平野」のような気候となり、昼間の時間は短めとは言え「晴れる頻度」は1年で最も多い季節となります。

なお、長野県内は「雪が少ない地域」も含め、東京などに雪をもたらす主な要因である「南岸低気圧」が通過する際に雪が降りやすく、気温が低い影響で「東京が雨」でも「長野県内は雪」で降ることも少なくありません。南岸低気圧による雪は特に東信地方で多く、軽井沢で積もる雪は大半が南岸低気圧に由来するものとなっています。