こちらでは、九州の東側に位置する「大分県・大分市」について、冬の「雪」というテーマから、その降る・積もる傾向(雪事情)を解説していきます。なお、解説する内容は全て「過去の一般的な傾向」です。
大分県内は大分市では雪が積もることがかなり少ない一方、地域による標高差などが大きいため、少し離れただけでも雪の頻度がやや増えるケースも見られます。
雪がかなり少ない「大分市」
大分県の県庁所在地である大分市(市街地)は、日本国内では沖縄を除いた場合、屈指の「雪の少なさ」が特徴の地域です。
大分市 | 福岡市 | |
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年降雪量 | 1cm | 2cm |
年間最深積雪 | 1cm | 2cm |
年降雪日数 | 17.3日 | 15.6日 |
大分市は、九州最大の都市であり、こちらも決して雪が多いとは言えない福岡市と比べても「積雪」は明らかに少ない傾向があります。
単に「降る(一瞬舞うだけ・みぞれも含む)」だけで見た場合、大分はわずかに福岡よりも多いのですが、グラフからも分かる通り、例外的な大雪となった1997年を除き、大分で1cm以上の雪が積もった頻度(青色の棒)は明らかに少なく、福岡が平均2年に1回以上のペースで1cm以上の積雪となっているのに対し、大分は2000年以降で1cm以上の雪が積もったのはわずか5回だけとなっており、特に近年はその差が大きくなっています。
なお、1cmにすら満たないような「ごくごくうっすら」の積雪を含めて見た場合でも、福岡の方が積雪頻度が多いことに変わりはありません。
この雪の少なさは、沖縄を除いた都道府県庁所在地の中では、最も少ない宮崎、次いで少ない静岡に次いで3番目に少ない地域と言え、同じくかなり少ない「熊本市」と同じくらいの「積雪の少なさ」と言える状況です。
大分市で雪が少なくなる要因
大分市で積雪が少なくなる要因は、その地理的環境にあり、比較的「熊本市」と似たような構図が見られます。
冬型の気圧配置 | ・大分市は雪雲が入った場合でも「途切れ途切れ」かつ「弱い」場合が大半(降るだけが多い) ・雪雲が入る側に福岡県があり、雪雲が湧く「対馬海峡沿い」からの距離が離れていることが要因 |
南岸低気圧 | ・九州の平地は気温が高く、雪となるケースは極めてまれ |
大分市で雪が降る可能性がある要因としては、通常「冬型の気圧配置」・「南岸低気圧」の2つがありますが、大分市の少なくとも平地では、このいずれの状況でも雪は非常に積もりにくい環境です。
冬型の気圧配置のパターンでは、流れ込む寒気・季節風に沿って「対馬海峡」周辺などで雪雲が発生し、それが流れ込む形になりますが、大分市は雪雲が入って来る北西側には「福岡県」があり、雲は筑豊地方や筑紫山地一帯を通って大分市方面へと進みます。大分市の場合、雪雲が入る側の「海」からの距離は概ね100km程度も離れています。
雪雲は陸地に入ると次第に弱まる傾向がありますので、大分市には「雪雲」自体は入ったとしても、雲が途切れ途切れで、かつ弱い状態が多いため、「降る(舞う)」だけで終わるケースが大半となります。
例外的に過去最高となる15cmの積雪となった1997年1月22日のように、寒気・季節風ともに非常に強いようなパターンでは、雪雲が消えずに大分市まで入り込むケースもありますが、そういった事例はかなりまれです。
また、東京などで時に大雪をもたらす「南岸低気圧」は、九州の平地では気温が高く、寒気が溜まりにくいため、雪になることは滅多にありません。2014年2月13~14日のようにまれに大分市街地でも雪が降ったケースもありますが、南岸低気圧による雪は、冬型の気圧配置による雪以上に圧倒的に少ないため、過去の記録を見ても「ほぼない」と言って差し支えない水準です。
地域ごとの状況は?(かなり差が大きい)
大分県内について、大分市街地のみならず県内各地の「雪事情」の大まかな傾向をまとめた場合、下記のような形となります(あくまでも過去の一般的傾向です)。
中部地域 | ・大分市街地などは先述の通り積雪は極めてまれ ・臼杵、津久見方面も大分市とほぼ同様 ・由布市は状況が全く異なり、多い年は何度も雪が積もり「大雪」のケースも |
東部地域 | ・別府市の平地では積雪は極めてまれ ・別府市内でも城島高原など標高が高い山間部は積雪が珍しくない環境 ・国東半島一帯は、北側に突き出た地域を中心に時折積雪(頻度は少ない一方、大分県の海沿いでは最も積もりやすい) |
北部地域 | ・平地の雪はまれ、但し大分市のような極端な少なさではない |
西部地域 | ・玖珠、九重方面は標高が高いこともあり、多い年は何度も雪が積もるような環境で「大雪」のケースも ・日田市街地は標高が低めのため、積雪は比較的少ない(大分市よりは多い) |
南部地域 | ・雪は極めてまれで、「降るだけ」の頻度も含め大分市よりも更に少ない ・気候は「宮崎県」の特徴に近い |
豊肥地域 | ・内陸側としてはそれほど雪が多くない地域、但し大分市よりは雪の頻度は多い ・竹田市などを中心に、ごくまれに大雪のケースも |
大分県といっても、雪の状況は様々で、例えば大分市から近い場所でも由布市・別府市の山間部などは、標高が高いため雪が珍しくない地域であり、冬場にはスタッドレスタイヤがあった方が無難な地域となっています。
一方で、南部地域にあたる佐伯市のように、宮崎県側に近い気候的特徴を持つ地域は、積雪が極めて少ない大分市よりも、更に雪の頻度が少ない地域となっています。
冬の「雪事情」については、県内全体に「大分市」のイメージを当てはまることは出来ません。
【大分県・大分市の雪事情】ポイント・まとめ
・大分市は、全国的に見ても極めて積雪が少ない
・大分市で雪が少ない理由は、雪雲が発生する対馬海峡側から離れているため
・県内には由布、玖珠、九重方面など「積雪が珍しくない地域」もあり