こちらでは、鹿児島県内の離島にあたり、縄文杉を筆頭に世界自然遺産に指定された圧倒的な自然環境が広がる「屋久島」について、「雪」というテーマからその降る・積もる傾向などを解説していきます。
屋久島は、一般的に雪が積もる場所としては「日本最南端」にあたる一方で、山地では数十cm~(場合によってはメートル単位)といったかなりの積雪になるなど、その「雪事情」はかなり特徴的な地域となっています。
海沿いで雪が降る・積もるケースは極めて珍しい
屋久島は、九州最南端の地域から更に南側に離れた位置にある離島です。気温は鹿児島市・枕崎市などと比べても一層温暖な傾向があり、冬に海沿いの地域で「雪」が降る・積もるようなケースは極めて珍しく、特に積雪は一部の地区を除き「ほぼない」と言ってよい状況です。
2000年以降の主な雪の事例 | 降雪・積雪状況 | 要因 |
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2005年3月6日 | ・1cm(当時の屋久島測候所で観測) | ・東シナ海を回り込むような形で、非常に強い寒気が流れ込んだケース ・一般的な「冬型の気圧配置」とはやや異なる |
2010年12月31日~2011年1月1日 | ・基本的には雨やみぞれ ・船行地区などではまとまった積雪 | ・非常に強い冬型の気圧配置 |
2016年1月24日 | ・通常積もらないような場所でもうっすら積雪 | ・100年に1度レベルともされる強烈な寒波(非常に強い冬型の気圧配置) |
2018年2月6日 | ・基本的には雨やみぞれ ・船行地区などではまとまった積雪 | ・非常に強い冬型の気圧配置 |
過去に積雪となった事例を見ると、公式的な観測が行われていた時期も含め積雪を観測した事例は極めて少なく、宮之浦・屋久島空港・尾野間周辺など主要な地域で雪が積もることはほぼありません。
一方、島を一周するルート沿いで見た場合、少しだけ高台となっている船行地区などでは、過去にその周辺だけまとまった積雪に見舞われたケースがあります。これは、山から吹き下ろす冷たい空気が影響している(山の西側のため、風向きの関係上海からの暖かい気流が入りにくい)とも考えられ、頻度は極めて少ないものの、県道77号線を通る際などに道路状況が一変することもあります。
標高が高い山地では雪が一般的
屋久島は、地理的には平地と呼べるような場所はほぼない環境で、島全体のほとんどが険しい山地(八重岳とも)となっています。

黄色:標高500m以上 オレンジ:標高1,000m以上 赤:標高1,500m以上
山地の標高は高く、1,000m以上の地域も広く見られるため、温暖な島といっても標高差に応じ気温は劇的に変化します。
一般論として言われる「標高が100m上がるごとに0.6℃気温が下がる」を当てはめれば、屋久島の海沿いで気温が6℃でも標高1,000mの場所では0℃、更に標高が高い場所では氷点下の寒さとなり、雪が十分に降るような環境へと変わっていきます。
雪の降る頻度・積もる量は地点によりますが、白谷雲水峡など標高数百m程度からまとまった雪が降る・積もる機会が見られるようになり、縄文杉周辺など標高が上がるにつれて雪の頻度・量はどんどん増えていき、特に標高が高い場所ではかなりの積雪、または「根雪」となることもあります。
場所によっては1m以上の雪・4月の残雪も?【宮之浦岳】
屋久島の山地でも最も標高が高い山としては、標高1,936mの「宮之浦岳」があります。
こちらは鹿児島県のみならず「九州最高峰」であり、西日本でもトップクラスの標高の高さを誇る山です。
山頂付近の気温は海沿いと比べ10℃以上低い場合が多く、その気候は九州・南西諸島というイメージよりは、東北などの気温をイメージする方が実態に近い環境と言えます。
宮之浦岳・永田岳周辺など、島内でも特に標高が高い場所の場合、50cm以上、吹き溜まりなど状況によっては1mを越える積雪となるケースも珍しくなく、特に雪が多い年は4月まで残雪が見られることもあります。
このような積雪量は、九州各地の他の山地(標高が高い霧島山・阿蘇山・くじゅう連山など)と比べてもかなり多い傾向があり、「雪が積もる国内最南端」でありながら「豪雪」にもなるという特徴を持つという点で、かなりユニークな環境となっています。
山地の積雪が増えやすい理由は?
屋久島の山地は、これまで解説した通り雪は多くなる場合があり、同じ標高で比べた場合、九州側の標高が高い山(霧島山・阿蘇山・くじゅう連山など)と比べ、気温は屋久島の方が高いと推定される一方で、積雪は増えやすい環境です。
なぜ屋久島の山地で雪が増えやすいのか。その要因は、基本的に「海」と「山」の両方が大きく関わっています。
雪をもたらす「冬型の気圧配置」の際に屋久島に流れ込む雲は、東シナ海周辺を「長距離・長時間に渡り進んできた雲」であり、福岡などに掛かる雲(海上を進む距離が短い)と比べ大量の水蒸気を得て発達している傾向があります。

雲の動きに関するイメージ図(あくまでもイメージであり、実際の状況を表すものではありません。)
また、その発達した雲は、すぐそばの海から「大量の水蒸気」を供給されつつ、そのまま屋久島の「険しい山地(斜面)」にぶつかり、強い上昇気流が生じ一層雲を発達させます。
結果として、屋久島の山地ではまとまった降水量が冬場にも見られる形となり、気温が低い高い場所ほど雪で降る頻度も増え、「まとまった積雪」につながっています。