長野県の気候というと、よく言われるイメージとして「寒い・涼しい」がありますが、これに加え「雨が少ない」というイメージも比較的強く持たれています。
こちらでは、「長野県は雨が少ない」というイメージは事実なのか?というテーマについて、気象庁の観測したデータなどを参考にしながら、具体的になるべく簡単に考察・解説していきたいと思います。
長野県の「雨の少なさ」は長野市など一部で「事実」
長野県では「雨が少ない」というイメージ。これについて、結論から述べてしまうと「少ない」イメージは、県の一部地域(基本的に「北半分」に含まれる地域の一部)では「概ね事実」と言えます。
地点 | 上田 | 佐久 | 長野 | 松本 | 軽井沢 | 諏訪 | 大阪 | 大町 | 伊那 | 名古屋 | 東京 | 飯田 |
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年間降水量 | 906.2 | 964.0 | 965.1 | 1045.1 | 1246.2 | 1301.5 | 1338.3 | 1405.9 | 1454.0 | 1578.9 | 1598.2 | 1688.1 |
上記のデータは、長野県の主要都市などの「年間降水量(平年値)」ですが、長野市・松本市・上田市・佐久市(長野盆地・松本盆地・上田盆地・佐久盆地周辺、一部山地を除く)は東京などと比べ降水量が大幅に少ない傾向があり、年間1,000mm未満となっている所もあるなど「雨の少なさ」がはっきりしています。
全国的に見ても、1,000mmを下回る地域は北海道道東などごく一部に限られており、これらの地域はかなり雨が少ない地域であることは間違いありません。
一方で、これらの地域は全てが県内の「北半分」に含まれる地域で、飯田市のように南側では、むしろ雨量がやや多い数字となっており、必ずしも「雨が少ない」という表現は正しくありません。
また、「北半分」にあたる地域でも、後述するように山間部など一部では、雨量がそれほど少なくならない場所があります。
なお、ほぼ中央に位置する諏訪市については、東京などと比べると少ないものの、1,300mm程度と「やや少ない」程度の降水量となっています。
なぜ一部で雨が少ないのか?
長野市・上田市・佐久市・松本市など長野県を代表する主要都市では、観測される雨量がかなり少ない傾向があります。なぜ、こういった地域では雨が少なくなるのか?その要因は、基本的にその「位置」によるものです。
地理的に雨が少なくなるポイントは、一般論として考えた場合、特に大きな要因としては以下の3点が挙げられます。
ポイント1 | 内陸部に位置すること |
ポイント2 | 「湿った気流をもたらす」海からの距離が離れていること |
ポイント3 | 周囲を山脈・山地に「囲まれている」こと |
雨が少なくなる上で海から離れた「内陸」にあるという点は基本ですが、単に内陸であるだけであれば、岐阜県の山間部や秋田県の山間部などでかなり雨量が多くなる理由は説明出来ません。
一般に雨が多くなる春から秋にかけてのシーズンは、雨雲・または雨雲を発達させる湿った気流は西寄りの方向、または南寄りの方向から流れ込みます。また、雨雲は山の斜面にぶつかって発達する傾向があるため、険しい山間部で「かつ」雨雲・湿った気流が入りやすい地域ではかなりの雨量が観測されることがあります。
すなわち、西側に日本海があったり、南側に太平洋があったりする地域で、かつ山地である場合は、雨が多くなる可能性があるのです。
長野市・松本市・上田市・佐久市などの条件を見ると、湿った気流をもたらす海からの距離はかなり離れています。北側に日本海がありますが、通常夏などに「北側」から雨雲・湿った気流が入り込むことは多くありません。
また、周囲を山に囲まれており、湿った気流が入る場合もその山の斜面の「反対側」で雨がまとまり、長野側では雨の量が増えにくい(雨雲がブロックされる)状況にあります。
結果として、雨が降っても極端な雨量が観測されるケースはほぼなく、日本国内で見ても屈指の「雨の少なさ」となっているのです。
「雨がかなり多い場所」もあることに注意
長野市・松本市・上田市・佐久市といった県の北半分の主要都市では雨量がかなり少な目となる長野県ですが、「雨がかなり多い場所」も少なからず存在します。
地点 | 御嶽山 | 上高地 | 浪合 | 宮田高原 | 南木曽 | 須原 | 開田高原 | 飯島 | 東京 | 名古屋 | 大阪 |
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年間降水量 | 3717.1 | 2721.3 | 2644.2 | 2389.3 | 2381.2 | 2174.9 | 2109.9 | 2014.1 | 1598.2 | 1578.9 | 1338.3 |
例えば、年間平年降水量が東京などを大幅に上回る2,000mm以上の地点をまとめただけでも、上記のように多くの地点が挙げられます。
基本的に「雨が多い場所」は、岐阜県寄りの地域(県の西側)に集中しており、特に険しい山の斜面が多い木曽地域や南信州地域の一部では、2,500mmを超えるかなりの「多雨地域」が見られ、1日の雨量が200mm以上に達したこともあるなど、長野市では過去の観測史上見られないような「大雨」が頻繁に発生している地域です。
これらの地域は、太平洋側からの湿った気流が直接入りやすく、長野市のように「山地で雨雲がブロック」される側ではなく、「山地で雨雲が発達」する側となるため、雨の量は増加しやすくなります。
「長野県」全てを「雨が少ない」イメージで捉えることは地域の気候に対する誤った認識ですので、その点は十分に注意が必要です。
ポイント・まとめ
・長野県の「雨が少ない」イメージは、長野、松本、上田、佐久盆地周辺など一部では概ね「事実」です。
・長野市などの降水量は平均年間1,000mm未満で、全国的に見てもかなり少ない水準です。
・これらの地域で雨が少なくなる理由は、「内陸」でかつ「海からの湿った気流が入りにくく」、「山地に囲まれ雨雲をブロックしている」ことが大きな要因です。
・飯田など県の南側へ行くと、雨が少ない傾向は見られなくなります。
・木曽、南信州地域の一部などは年間降水量が2,000mmを超える「多雨地域」です。
・県内全域を「雨が少ない」イメージで捉えないよう注意が必要です。