福岡県は「日本海側」に含まれる地域なのか?

雪・気候
写真提供:福岡市

九州の拠点都市である福岡市・北九州市を有する「福岡県」。その「地理」を考えた際には、地図上で見ると「日本海」に面しているようにも、そうでないようにも見えてくる、やや判断が難しい地域とも言えます。

当ページでは、福岡県が「日本海側」に含まれるのか?という疑問について、事実を基になるべくシンプルに解説していきます。

日本海の公式的な「範囲」に含まれる(関門海峡以西)

日本海に面しているかどうかの判断は、最も基本的な方法としては、公的機関が日本海の範囲をどのようなエリアとしているか・みなしているかを確認することが重要です。

海洋の地理に関して最も基本的なデータを提供するものとしては、海図などに関する様々な施策を実施する「国際水路機関(International Hydrographic Organization)」が「大洋と海の境界 (S-23)」と呼ばれる、海洋の境界と名称を示すガイドラインを出版しています。

この定義では、福岡県は関門海峡より西側の地域は日本海の沿岸に含まれているばかりか、長崎県の五島列島一帯までがその範囲とされており、九州一帯に占める「日本海」沿岸はかなりの広範囲に及んでいます。

福岡県の場合、関門海峡を隔てて日本海と瀬戸内海がつながっていますので、全域が日本海側という訳ではありませんが、北九州市門司区~福岡市~糸島市という人口の大半が住む地域一帯は、日本海に面した地域となっています。

気象庁が津波予報を発令する際の区分でも「福岡県日本海沿岸」という区分があり、台風の進路などでも「福岡県沖の日本海」といった表現が使われるなど、福岡県が日本海側として扱われていることは議論を差し挟む余地がありません。

生活面・アイデンティティ面で「日本海」を意識するかは別問題

一方で、福岡県について取り扱う際に、「日本海」というイメージ・言葉をその地域を表す特徴として利用することは多くありません。

山陰・北陸・新潟のような日本海側の地域では、組織の名前に「日本海~」といった名称が使われることもよくあることで、観光キャンペーンでも「日本海の~」といった「ブランド」を強調することが多く、住んでいる生活者の視点としても「日本海側だから~」といったように、自らが「日本海側の住民」であることを強調するようなケースも珍しくありません。

しかしながら、例えば福岡市や北九州市が「日本海」というキーワードを強調した何かをやっているかと言えば、特にそういったことはありません。地域の象徴として「日本海」というキーワードが使われるようなケースもほぼなく、住んでいる人が「日本海側」ということを意識したり、強調したりすることもまずないと言ってよいでしょう。

福岡県の「日本海側」という存在は、地理的には確かに間違いはないのですが、地域のアイデンティティ・生活する上での存在感といった意味では、余り強い意味合いは持たない言葉と言えるでしょう。

「玄界灘」・「響灘」・「対馬海峡」の呼び名も一般的

出典:地理院地図(一部作図の上利用)

福岡県の日本海一帯の一部は、一般的な名称としては「玄界灘」と呼ばれています。

玄界灘は海図などでも表記される公式的な名称で、基本的には宗像市の鐘ノ岬より西側、佐賀県方面にもその範囲を広げています。なお、玄海島・志賀島より内側の地域は「福岡湾(博多湾)」と呼ばれています。

また、北九州方面の沖合いは、一般的な名称としては「響灘」と呼ばれています。

地域の魅力などをアピールする際などには、「日本海」よりも「玄界灘」・「響灘」の表現が圧倒的に多く見られます。

また、玄界灘・響灘よりもより広い範囲を含めた名称としては「対馬海峡」というものがあります。

対馬海峡とはその名の通り、長崎県の対馬をその中心とする海峡で、朝鮮半島と九州の間の日本海・東シナ海一帯を指す名称です。

名称については、より詳細に見て行くと日本側と韓国側で呼び方に違いがあるほか、地図(海図)上では対馬~朝鮮半島間が「対馬海峡西水道」、対馬~壱岐間が「対馬海峡東水道」とされる場合もあり、福岡沿岸は玄界灘・響灘の表記となっています。

気候面では「太平洋側」の扱い

地理的には、「日本海側」としての側面を持つ福岡県一帯ですが、生活上大きな影響を及ぼす「気候」という面から見ると、「日本海側気候」と呼ばれるような気候区分には必ずしも当てはまりません。

日本海側気候と呼ばれるものは、一般的にもイメージされる通り、冬に降水量が一気に増え、積雪・降雪も一般的な「雪国・北国」の気候的特徴を持つものであり、山陰・北陸・新潟・東北日本海側などはその典型的な特徴を持つ地域と言えます。

こういった気候は、シベリアから吹き出す寒気と、日本海の比較的温暖な海水の温度差で「雪雲(雨雲)」が発達して生じるもので、対岸となる陸地が遠い地域(特に山陰~新潟の日本海一帯)では雲が発達しやすく、梅雨のシーズンよりも降水量が多くなります。

一方で、福岡県については、確かに日本海(対馬海峡)に面するため、冬になると季節風が強く吹き、海で発生した雲の影響で曇り空や小雨、場合によっては雪がちらつくなど、晴れ間が少ない天気が続きやすい傾向(日本海側気候に似た特徴)はあります。

しかしながら、対馬海峡の幅は短く、雨雲や雪雲が十分に発達しきるほどの長さではありません。そのため、降っても弱い雨や雪が多く、そもそも「曇っているだけ」のケースの方が多いなど、「降水量」が一気に増えるような条件には一切ありません。

そのため、福岡県の気候の区分としては「日本海側でありながら」温暖多湿(夏に雨が多い)で雪がほとんど降らない「太平洋側気候」として扱われています。

ポイント・まとめ

福岡県は、関門海峡より西側の地域は公式的な意味合いで「日本海側」として扱われています。

但し、生活上または地域のアイデンティティとして見た場合、「日本海」というキーワードは余り存在感を持ちません。

福岡県沖の日本海は「玄界灘(宗像以西)」・「響灘(北九州周辺)」・「対馬海峡」としての呼び名も一般的です。

福岡県の気候区分は「太平洋側気候」に含まれます。冬場は「日本海側気候」の特徴の一部(晴れにくい)が見られますが、気温が高く雪も少ないため、いわゆる「雪国」とは全く違う気候です。

地理的にも特徴の大きい福岡のまちは、様々な文化が混ざり合った魅力ある大都市です。典型的な「日本海側」の気候ではないため、冬も観光に訪れやすい環境といえるでしょう。