沖縄県の「冬」はどうして天気が悪い・晴れ間が少ないのか?

自然・気候

沖縄県と言えば、日本で最も温暖な環境を持つ地域で、冬も過ごしやすい気温というイメージが強くなっています。

一方で、お住まいの方・旅行で訪れる方にはごく一般的な常識と言えますが、沖縄の「冬の天気」はかなりの「天候不順」傾向で、晴れにくい・晴れる日が少ないという特徴を持っています。

沖縄の気候というと、温暖=晴れ・強い日差しというイメージをなんとなく持ってしまう場合も少なくありませんが、冬の天候がそういった特徴とは大きくかけ離れたものです。

こちらでは、沖縄県の冬はどうして「天気が悪い」のか?「晴れ間が少ない」のか?というテーマについて、なるべくわかりやすく解説していきたいと思います。

沖縄の天候不順は「日本海側の雪」に似たメカニズム

沖縄県の広い範囲で冬に「天候不順」となり、「晴れ間」が大幅に減る要因は「寒気」と「東シナ海」の存在によるところが大きくなっています。

冬の天候は、日本全体でシベリア(大陸)から流れ込む寒気、それに伴う「冬型の気圧配置」の影響を受け、日本海側では多くの雪、関東地方など太平洋側では晴れ間と乾燥をもたらしますが、亜熱帯・熱帯の気候である沖縄県であっても、その影響から逃れる訳ではありません。

出典:地理院地図(当サイトにより一部作図)
上記の図はあくまでも「イメージ」であり、実際の雲の状況などを具体的に示すものではありません。

「冬型の気圧配置」に伴いある程度の寒気が流れ込むと、沖縄周辺の場合周辺に目立った陸地がなく「東シナ海」のみが広がっていることもあり、寒気と温暖な「海水温」の温度差によって「雲」が発生し、それが継続的に流れ込む状況が続きます。

寒気は「雪をもたらさない」程度の寒気であったとしても、「雲」自体を発生させることは可能であり、沖縄県一帯では「曇り」や「雨」が冬のよくある天気となっています。また、雲は黄海周辺から東シナ海を1,500程度に渡って南下するような形で進むため、雲はしっかりまとまった形で流れ込み続け、日照時間が短くなる状況となっています。

なお、この「寒気」と「海」の存在により雲が発生、発達するメカニズムは、冬の日本海で雲が発生し、それが陸地に入って雪を降らせるメカニズムと、全体的には大きな違いはありません。

細かい点を見れば、日本海側の場合「山地」にぶつかった雲がより多くの降水量(雪)をもたらす一方、沖縄の場合は特に沖縄本島などでは、「冬型の気圧配置」で多くの降水量を観測する傾向にはない。といった違いはあります。

しかし、雲が発生する仕組みは大きな違いはないため、亜熱帯・熱帯である沖縄の冬は、むしろ北からの寒気の影響を強く受けた気候である。という点において、赤道周辺のような「常夏」の地域とは全く違う気候を持つ形になっています。

県内の「冬の日照時間」はどのくらい?

那覇名護久米島宮古島石垣島西表島与那国島南大東東京大阪
冬の日照時間(h)296.3296.8247.9271.2268.3226.9172.6364.3538.4438.3
冬の降水量(mm)320.7309.1408.0395.1411.6483.0549.0273.6174.9163.1
気象庁の平年データ(2020年まで)による
「冬」は12~2月

沖縄県内の冬の「日照時間」・「降水量」を気象庁の平年データで見ると、上記のような形となります。

東京・大阪といった冬に比較的晴れやすい地域と比べ、県内は「どこであっても」全体的に日照時間が少なく、雨が多い傾向が見られます。

冬の日照時間は、3か月間で概ね200時間台の地点が多く、1か月あたり100時間を下回っており、これはその他国内では一部を除き日本海側の地域以外では見られない傾向です。

一方で、沖縄県内の地域差も少なからず見られ、基本的に県の西側(宮古・八重山地方)では雨がより多く日照時間も少ない傾向で、逆に最も東側にあたる大東島地方では、日照時間がやや多く、降水量はやや少な目の数字となっています。

とりわけ与那国島など台湾に近い場所は、日照時間の少なさ、雨量の多さが際立っており、寒気が流れ込み続けた2011年1月には月間日照時間がわずか「8.3時間」を観測するなど、年によっては北海道日本海側よりも晴れ間が少ないケースが散見されます。

「年ごとの差」がかなり大きいことも特徴

沖縄県の冬は、「天候不順・晴れ間が少ない」傾向が強い時期ですが、各年ごとの状況を見ると「寒気」の流れ込み具合によって天候にはかなり差があることも事実です。

上記のグラフは那覇・与那国島と、日本海側の典型的な気候を持つ石川県金沢市の「1月の日照時間」について、「平成以降」の変化を見たものですが、金沢の日照時間は変動が少ないのに対し、那覇・与那国島は各年ごとの差が大きく、グラフの「ギザギザ」が大きくなっています。

那覇の場合、全体的な日照時間は金沢より多い一方で、60時間台の年もあれば、140時間を超える年もあるなど大きな差が見られます。

与那国島については、全体的に金沢より日照時間が少ない傾向を持つ一方、最も少ない場合はほぼ晴れがない10時間台、多い年は金沢より多い120時間程度となるなど、極端なくらいの違いが見られます。

このような差は、緯度が高い地域の方が「寒気」の影響を受けやすいため、緯度が低い沖縄では寒気の影響が小さい年と、南西諸島まで寒気が入りやすい年の差が特に大きくなることが一つの要因で、熱帯寄りの気候・大陸からの寒気がせめぎ合う結果として、このような差が生じる形になっています。

ポイント・まとめ

沖縄県内は、冬になると日照時間が少なく曇りや雨が多くなり、晴れにくい傾向が見られます。
・晴れが減る要因は、大陸から流れ込む「寒気」「東シナ海」一帯の温暖な海水温との温度差で雲を発生させ、沖縄付近に掛かりやすくなることが大きな要因です。
・このメカニズムは、日本海側で冬に雪が降る場合のものと大きな違いはありません。
・実際の天候は年ごとの差がかなり大きく、寒気が入りやすい年は極度の天候不順となる場合もあれば、影響が比較的少ない年も見られます。