筑波颪(つくばおろし)とはどんな風?

自然・気候

日本各地には、その地域で吹く風に対し様々な名称が付けられている場合があります。

関東地方にも様々な「風の名前」がありますが、こちらでは茨城県の南部~千葉県の北部の一部にかけて吹く風に対し呼ばれることがある「筑波颪(つくばおろし)」について、ごく基本的な内容を解説していきます。

筑波颪とは冬に吹く「主に北西からの季節風」

読みつくばおろし
地域茨城県南部の一部(主につくば市・土浦市・石岡市など)
千葉県北部の一部
吹く季節冬が基本・「冬型の気圧配置」となった際に吹く季節風に対する名称
風向き概ね北西の風(北北西、西北西など異なる場合もあり)
強さ・特徴強い乾燥と体感的な寒さをもたらす存在
やや強く吹く場合もある一方、一般に被害をもたらすような意味合いで呼ばれるものではない

筑波颪と呼ばれる風は、基本的に茨城県南部から千葉県北部の一部、大まかに言えばその名の通り「筑波山」から比較的近い範囲、筑波山がよく見えるような地域において、冬に吹く季節風(北西の風など)を指す名称です。

具体的に、どこからどこまでの範囲で呼ぶのかについては、必ずしも決まり・定義がある訳ではないため、なかなか判断は難しいと言えますが、筑波大学の一部学生さんなど、筑波山のあるつくば市に住んでいる人を中心にそう呼ばれることがある傾向があることには違いありません。また、筑波山から近い土浦市や、風下にあたる霞ヶ浦周辺でも用いられるケースがあると言えるでしょう。

また、必ずしも一般的とまでは言えませんが、千葉県の野田・柏・我孫子方面でもまれに「筑波颪」の名称が使われるケースもあるようです。

筑波颪は一般に、冬によく晴れた日に比較的強い風として吹き、既に乾燥している時により一層の乾燥を、また風が当たることで体感気温の低下を引き起こすような存在として扱われています。これは、名前が付いているかどうかの違いだけで、その特質は東京などで吹く冬の季節風と大きな違いはありません。

実際に筑波山から風が吹き下ろしているの?

筑波颪と呼ばれる風は、風の性質として見た場合、その名に用いられている「颪(おろし)」としての性質を持っているかと言えば、必ずしもそうは言い切れない側面があります。

おろし風とは、冬の時期に「山」から吹き下ろす形で吹いて来る風のことを指す名称ですが、「筑波山」はそもそも山のスケールとして見た場合、決して関東平野周辺の中で大きな山地とは言えず、実際に「筑波山から吹き下ろす」風があったとしても、そのエリアは限定されることになります。

出典:地理院地図(当サイトにより一部作図)<海域部は海上保安庁海洋情報部の資料を使用して作成>

主な風向きと言える北西方向からの風をイメージ図として描いて見ると、石岡市・土浦市・かすみがうら市へ入る風は、一応筑波山方面を越えて来る風と言えますが、つくば市内やつくばみらい市・牛久市方面の場合、北西の風の場合「筑波山」の存在は余り大きく関わっていないように見えます。千葉県内の場合はなおさらで、筑波山は最早関係しているとは言えません。

つくば市の中心部で北西の風が単に吹くケースを考えた場合、複合的な要因の中に、もしかすると筑波山の影響もあるかもしれませんが、単に直線的に見る限りは、最寄りの「山地」は栃木~群馬県内にかけての「足尾山地」となると言えますので、「筑波颪=筑波山から吹き下ろす風」とは言い難い状況です。

関東に他にもある「おろし風」の名称

関東地方には、筑波颪の他にも「颪(おろし)」を冠する「風の名前(局地風)」があります。

最も有名なものとしては、群馬県の赤城山一帯から吹き下ろす冬の季節風「赤城颪(あかぎおろし)」で、こちらは正真正銘赤城山一帯から吹き下ろす、わかりやすい「おろし風」となっています。

また、栃木県では山を吹き下ろす季節風が「那須颪(なすおろし)」・「男体颪(なんたいおろし)」・「日光颪(にっこうおろし)」などと呼ばれる場合があり、県内では総称して「二荒颪(ふららおろし・ふらあらおろし)」と呼ばれる形になっています。こちらも筑波颪と比べると山と風の関係がはっきりしています。

関東地方以外も含めると「おろし風」は多種多様な名称で見られ、決して珍しい存在ではありません。

ポイント・まとめ

筑波颪(つくばおろし)は、冬場に「冬型の気圧配置」に伴い吹く主に北西の季節風に対し、茨城県南部や千葉県北部で呼ばれる名称です。
・「おろし風」は一般論としては「山から吹き下ろす風」に対する名称ですが、「筑波颪」は実際に筑波山から風が吹き下ろすような範囲は限られています。