沖縄県は、日本国内では唯一全域が亜熱帯または熱帯の気候に位置づけられる、非常に気温が高い(温暖)な地域です。
一方で、沖縄へ旅行などをする方であれば既にご存じの内容かもしれませんが、沖縄は夏の日中(昼間)の気温は本州・四国・九州の多くの地域より「低い(涼しい)」傾向が見られる地域で、「猛暑」と呼ばれるような状況になるケースは極めて限定的です。
緯度的には大幅に南寄りで、「夏の空気」に最も長期間影響を受けるはずの沖縄で、どうして猛暑が少ないのか?どうして昼間の気温がやや低めなのか?こちらでは、その疑問について、考えられる一般的な要因を解説していきます。
沖縄の猛暑日は極めて少ない
那覇 | 名護 | 久米島 | 宮古島 | 石垣島 | 南大東 | 東京 | 大阪 | 福岡 | |
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猛暑日日数 | 0.2 | 0.1 | 0.0 | 0.0 | 0.1 | 0.0 | 4.8 | 14.5 | 8.1 |
熱帯夜日数 | 107.3 | 96.0 | 98.2 | 112.0 | 128.6 | 88.5 | 17.8 | 41.5 | 38.7 |
気象庁の平年データ(2020年まで)による
沖縄県は、例外なく全域で「猛暑」は極めて少ない地域です。
気象庁の平年データで見た場合、沖縄県ではほぼ猛暑日(最高気温35度以上)は観測されない状況で、仮にあっても数年~10年に1回程度の頻度でしかなく、事実上「ない」状況に近いと言ってもよいくらいです。
大阪では年平均15日程度、東京でも毎年のように複数回猛暑日となっている状況から考えると、沖縄の猛暑がいかに珍しいか。ということがよく分かります。
一方で、最低気温が25℃以上となる「熱帯夜」の日数で見ると、沖縄県内は年平均100日を上回る場所も多く、本州・四国・九州と比べ極端に多くなっており、朝晩の気温の高さは突出しています。
「熱帯夜が極めて多く、猛暑日はほとんどない」これが沖縄県における「夏の気温」の基本的特徴であり、決して「暑くない」のではなく、「暑さの内容」が本州などとは大きく違う点にポイントがあるという状況です。
海からの風がほほ常時入り込む環境
沖縄県で猛暑日が少ない理由は、最も大きな理由は「海からの風」がほぼ常に入り込み続ける環境である点が挙げられます。
沖縄県は東シナ海・太平洋(フィリピン海)の中に浮かぶような離島地域であり、近くに大陸がある訳でも、本州や九州・四国のような大きな島がある訳でもありません。
広い海の中に比較的小さな島々が浮かんでいる以上、天気の変化・大気の動きは常に「海からの影響」を受けることになります。
海の温度(海水温)というものは、基本的に「陸地の気温」と比べその変化がゆるやかな特徴を持ち、太陽が照り付けたからといって、昼間に温度が急に上がるようなものではありません。海上の空気は海水温の影響を強く受けますので、結果として朝は気温が高めで、昼間は気温が低めという特徴を持つことになります。
沖縄県には、そのような特徴を持つ海からの空気が風に乗って常時流れ込み、結果として「熱帯夜が極めて多く、猛暑日はほとんどない」状況、すなわち「気温差が小さい」状況を生み出しています。
なお、風を直接受けやすい場所では、風によって「体感気温」も下がる場合もあり、昼間は暑いとは言え、その影響による「涼しさ」を感じられる場合があります。
「内陸部」と呼べる地域がない
海からの風が常に入り込む沖縄県は、小さな離島が点在する環境ということで、その地理的条件は日本の他地域とは全く異なります。
端的に言えば、「海沿い」の地域しかなく「内陸部」と呼べるほどの環境がないという特徴を持っており、これが海からの風が常に入り込む要因となっています。
例えば、本州周辺でも海沿いの地域は涼しいと言われる通り、広く見れば沖縄のような気温の傾向を持つ地域もありますが、「内陸側」に位置する地域も多く、京都・岐阜・熊谷・前橋など気温がかなり上がりやすい地域が多く見られます。
内陸側の地域は、海からの風が届きにくいため、地上付近がひたすら強く熱せられ、結果として40℃前後の猛暑・酷暑となるケースすら見られる特徴があります。
沖縄県内は「どんなに山奥」へ行っても、海からの距離は遠くても10km以内、ほとんどは5km未満の地域です。山の中にぽっかり広がるような「盆地・平野」などは一切なく、少し見晴らしのよい場所であれば、海が良く見える場所しかありません。
このような環境では、地上付近が強く熱せられることはほぼなく、そういった状況になる前に、海からの風によりやや冷やされることがほとんどです。
地形による気温変化の影響を受けにくい
海からの風や内陸部の有無のみならず、地形上の影響というものもの猛暑の少なさには大きく関わっています。
本州・四国・九州のみならず、北海道でも見られる現象としては「フェーン現象」というものがあり、これは山の斜面を空気が上って下る間に、空気の温度が一気に上がって「風下側」の地域に猛暑をもたらすものです。
この現象は、比較的高い山地がある場合に発生し、本州では越後山脈などを越えて新潟県内で猛暑となるケースなどが特に目立ちます。
一方で、沖縄県の場合はそもそも高い山がなく、山が分厚く連なるような「山地」は存在しません。仮に山を越えた風が吹き下ろしたとしても、山のスケールが小さいためその影響はかなり限定的で、本州などのように「フェーン現象」がはっきり発生した状況は過去見られたことがありません。
「海からの風」に加え、「内陸部がない」・「フェーン現象が起きない」という状況、要は「本州で猛暑となる際の各種条件が沖縄には何もない」ことが、沖縄の「猛暑の少なさ」を特徴づける要因となっているのです。
ポイント・まとめ
・沖縄県は「猛暑日」がほぼ観測されないような地域です。
・要因としては「海からの風が常に吹く」、「内陸部と呼べる環境がない」、「地形による『フェーン現象』が見られない」といった点が挙げられます。
・なお、熱帯夜の日数は極めて多く、あくまでも「猛暑日」のみ少ないという特徴を持つということですので、沖縄=「暑くない・涼しい」と言い切ることは出来ません。