こちらでは、茨城県の「夏」について、気温が「涼しい」地域はどこか?また涼しい地域はなぜ涼しい環境なのか?といったテーマを解説していきます。
茨城県内は、関東地方の中では夏の気温の高さが抑えられる地域であり、県内の各地を見て行くと「しっかりした夏」がないとも言えるほど、昼間の気温が涼しい地域も存在します。
そもそも暑さは限定的な茨城県
茨城県の夏。その「暑さ」を最もわかりやすく示すデータは、最高気温の平均値ですが、気象庁が各都市で観測したデータを見ていくと、茨城県は一部を除き関東の中ではそもそも夏の気温が低めの地域と言えます。
水戸 | 日立 | 鹿嶋 | つくば | 古河 | 千葉 | 東京 | 横浜 | 熊谷 | 前橋 | 宇都宮 | |
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7月平均最高気温 | 28.5 | 26.9 | 28.3 | 29.1 | 30.6 | 29.4 | 29.9 | 29.4 | 30.9 | 30.5 | 29.5 |
8月平均最高気温 | 30.0 | 28.5 | 29.9 | 30.6 | 32.0 | 31.0 | 31.3 | 31.0 | 32.3 | 31.7 | 30.9 |
気象庁の平年データ(2020年まで)による
主要な都市の平均最高気温を比べると、茨城県内では「古河市」はかなり暑い傾向がある一方、他の都市は関東のその他県庁所在地などと比べ、最高気温が低い傾向が見られます。
特に、鹿嶋市と日立市は平均30℃を切る気温となっており、水戸も関東内陸と比べ2℃程度低いなど、茨城県自体が一部を除き、「関東の中ではやや涼しい地域」となっているのです。
なお、気温が例外的に高い古河市は、JR東北本線沿線であることからも分かる通り、水戸など茨城県内の海沿いの地域よりも、熊谷・舘林など関東平野内陸部の「猛暑」で有名な地域と近く、県内では例外的な環境と言えます。
特に涼しい地域は県北地域の沿岸部など
茨城県内の中で「特に涼しい地域」はどこか?という観点で気象庁のデータを見て行くと、極端に涼しい地点として北茨城市の「北茨城」アメダスのデータが突出する形となっています。
北茨城アメダス | 平均気温 (℃) | 平均最高気温 (℃) | 平均最低気温 (℃) | 真夏日日数 | 猛暑日日数 | 熱帯夜日数 | 夏日日数 |
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7月 | 22.1 | 25.7 | 19.4 | 2.1 | 0.0 | 0.0 | 19.3 |
8月 | 23.8 | 27.4 | 20.9 | 4.5 | 0.1 | 0.0 | 25.4 |
平均気温は22~23℃台、最高気温の平均は30℃を大きく下回り7月は25℃台、最低気温の平均も20℃前後と、まさしく「涼しい」地域と言える北茨城市。
この数字は、仙台よりも涼しく、「青森・札幌」と余り変わらない気温となっており、関東で北茨城市より涼しい「平地・沿岸部」は一切存在しないばかりか、周辺では河口湖のような標高がかなり高い地域と比べても、昼間の気温が低いなど、かなり特殊な気候となっています。
過去の平均としては最高気温が30℃以上となる「真夏日」は7~8月の間でわずか7日程度、35℃以上の「猛暑日」に至ってはほぼゼロ、最低気温が25℃以上の「熱帯夜」も事実上ゼロ、最高気温が25℃以上となる「夏日」も19~25日程度で最高気温が「25℃を下回る日」も少なからず見られる状況は、東京やその周辺とは比較にならないような環境と言えます。
なお、周辺の観測地点では「日立」の観測地点の気温も先述の通り比較的低く、北茨城には及ばないものの、やはり最高気温の平均は30℃を大きく下回っています。
涼しい理由は「海からの風」+「一部天候不順」
北茨城など茨城県内の海沿いでは晴れた日も含め夏の昼間の気温が比較的低く、最高気温が30℃を上回るケースがかなりまれな地域もありますが、このような涼しさは一体どういった理由で生じるのでしょうか。
その要因は、それほど難しいことではなく、そのほとんどは「海からの風」の影響によるものです。
関東では冬になると北西方向(陸地の側)から季節風が吹きますが、夏は南寄り・東寄りからの風となり、基本的に「海から」風が吹き込む形となります。
海からの風は内陸側では影響を受けにくいため、関東内陸では全国的に見ても異常な暑さ(40℃以上)となるようなケースも見られますが、茨城県内の海沿いの地域は、海からの風が直接入る地域のため、気温上昇は抑えられます。
なお、「海からの風」が涼しい理由としては、一般論としては「気温」と「海水温」を比べれば「海水温」の方が1年間での変化は小さい点が最も大きな要因であるほか、茨城県内北部の場合温暖な「黒潮(日本海流)」ではなく、寒冷な「親潮(千島海流)」の影響を受ける点も一つの要因と言えます。
これに加え、茨城県内の特に北部は、特に7月に「極端な天候不順」となる年が時折見られます。
各年の天候を見て行くと「良く晴れる年」もある一方で、東北に農業被害をもたらすことで有名な冷たい東寄りの風「やませ」が吹く場合、東北だけではなく茨城県内でも曇りや雨が続きやすい天気となり(例えば2020年7月の北茨城の日照時間は月合計でわずか29.4時間)、気温は20℃前後の状態となります。
この天候不順の傾向になった場合、特に7月の平均気温は大きく下がるため、結果としてデータ上「涼しい」傾向は特に強くなります。
ポイント・まとめ
・茨城県内は、古河など一部を除き、関東地方の中では夏の暑さが抑えられる地域です。
・とりわけ太平洋沿岸部は昼間の気温が低い傾向で、北茨城市はその中でも突出した「涼しさ」で札幌などと大差ない気温と言えます。
・涼しくなる要因は「海からの風」が直接吹き込むことが大きな要因であるほか、7月を中心にまれに「かなりの天候不順」となり、その影響でより平均気温がより下がることも要因と言えます。