茨城県内は風が強い場所?その「風事情」を考える

自然・気候

こちらのページでは、茨城県の気候について「風」というテーマから、茨城県内は風が強い地域なのか?それとも風が弱い(穏やか)な地域なのかなど、その「風事情」を解説していきます。なお、解説する内容は全て「過去の一般的な傾向」です。

こちらでは、一般的な状況で吹く「風」について解説しています。特殊な事例と言える「竜巻」については取り扱っていません。

全体的には「それほど風は強くない」地域?

竜ケ崎つくば北茨城下館水戸日立鹿嶋下妻鉾田土浦古河常陸大宮笠間大子
年間平均風速2.72.42.42.42.32.12.12.11.71.71.61.31.11.0
単位はm/s
気象庁の平年データ(2020年まで)による
千葉横浜東京宇都宮熊谷前橋銚子
年間平均風速3.93.52.92.92.52.45.7
単位はm/s
気象庁の平年データ(2020年まで)による

茨城県内で気象庁が「風速」を観測している全ての地点について、その年間の平均風速を見てみると、上記のような形になります。

最も風が強い数字となっている観測地点は、県南地域の竜ケ崎市に設置された「竜ケ崎」アメダスで、次いでつくば・北茨城・下館・水戸といった順になっています。

風速というものは、その観測地点の環境(建物が周辺に多い・山の位置など)、また海からの距離などによって一気に変化する場合があるため、一概には言えませんが、茨城県内の各地点は「年間平均」で見た場合、特段風速が強い地域とは言えません。

例えば東京の観測地点では年間平均2.9m/s、横浜は3.5m/s等となっている状況と比較しても、茨城県内にそれらを上回る地点はありませんし、海沿いであれば関東でも最も風が強い事で知られる千葉県の銚子では5.7m/sですので、そういった数字と比べても風速は弱い傾向がはっきりしています。

冬の季節風が印象的・但し風速のピークは春

茨城県内で吹く「風」として印象に残りやすいものとしては、一般に冬に吹く「季節風」が挙げられます。

冬に吹く季節風は県内の地域によっては「筑波颪(つくばおろし)」と呼ばれることもあり、主に北西方向から県内に乾いた冷たい風が吹き付けるため、体感的には実際の気温よりも「寒く」感じやすいともされます。

茨城県内に吹き付ける「冬の季節風」のイメージ
出典:地理院地図(一部当サイトにより作図)

風速としては、冬型の気圧配置が特に強まる際などに平均3~4m/s、最大瞬間風速で15m/s前後の風が吹きやすく、必ずしも何らかの被害をもたらすような風となることはほぼありませんが、寒さと乾燥を強める風として知られています。

なお、データ上では、必ずしも冬は1年で最も風が強い時期ではありません。茨城県内は基本的に全ての地域で、平均風速のピークは「春(3~4月頃)」となっています。

春の風の強さは、必ずしも茨城県に限らず日本国内の多くの地域で当てはまる傾向で、低気圧が頻繁に通過しやすいこと、寒暖差が大きいことで風が吹きやすい状況となり、時折荒れた天気となるケースも見られます。

なお、夏については海からの南寄りの季節風が吹き込む時期ですが、台風や低気圧などの影響を受ける場合を除いては、比較的穏やかな傾向です。

台風による風は?

茨城県内は、夏~秋にかけて「台風」の影響を受けることもある地域です。

台風は特に秋の9月~10月頃にはやや影響を受けやすく、まとまった雨が降ったり、時には暴風となるケースも見られます。

風速の記録を見た場合、茨城県内の気象庁の観測地点で観測される台風による風は、最大瞬間風速が30m/sを超える暴風もまれに観測されていますが、20~30m/s程度の強風・暴風となっている事例が大半で、例えば東京・千葉・横浜で観測されるような暴風と比べると、その程度が抑えられている傾向が見られます。

県内での過去最も強い「暴風」記録は、1939年に水戸で観測された44.2m/sという記録がありますが、これ以外で最大瞬間風速が40m/s以上となった記録はなく、東京周辺では平成以降にも同様の記録が複数回見られる状況と比べると、暴風の頻度・程度は抑えられていると言えます。

但し、先述の通り茨城県内の場合「海に直接面した気象庁の観測地点」がない点、また観測地点は県内の全てをくまなく網羅しているとは言い切れない点などを考慮する必要があります。

風が強い環境は?【筑波山頂など】

茨城県内で風が特に強い場所というのは、それほど多いとは言えませんが、観光も含め多くの人に関わる場所としては「筑波山」山頂付近が挙げられます。

一般に上空の高い所ほど風は強いため、筑波山頂で風が強く吹くことは「ごく当たり前」のことと言えばそれまでですが、平地とは吹く風の強さは比べ物にならないもので、かつて気象庁が観測していた時代のデータを参考にする限り(2001年まで観測)は、平均でも5m/s前後、風が強い日は10m/s以上の風が当たり前のように吹く状況となっており、山地以外で例えれば「銚子」のような強い風が見られる状況です。

この他、一般論として太平洋に直接面するような地域は、内陸側と比べ風が強い傾向があります。茨城県内の場合、千葉県内の銚子・勝浦のように、海にほぼ面したような場所に気象庁の観測地点が設置されている所は一つもない(日立や北茨城の観測地点は「海沿い」ではあっても「わずかに内陸側」で海の真横ではない)ため、風速がやや出にくい傾向にある可能性もあります。

まれに「冷夏」をもたらす風「やませ」

なお、茨城県の「風事情」を考える場合、単なる風の強さではなく、気候に影響を及ぼす「風」の存在も確認しておきたいポイントがあります。

一般に夏に「天候不順」と「低温」をもたらす存在としては、東北を中心に影響が大きい東寄りの湿った風「やませ」が有名ですが、「やませ」は頻度は少ないとは言え、関東にも影響を及ぼすケースがあり、特に茨城県内の県北地域・県央地域などは、まれに極端な天候不順に見舞われるケースがあります。

例えば日立市の1993年7月の合計日照時間はわずか35.9時間、2003年7月の合計日照時間はわずか39.7時間の記録があり(平年と比べると4分の1程度)、これ以外の年にも明らかに日照時間が少ない年が、6・7月を中心に見られます。

頻度としては少なく、特に近年は典型的な「やませ」のケースが見られにくい傾向がありますが、時には湿った冷たい「風」がもたらす極端な天候不順が見られる地域がある点は、茨城県の気候面での一つの特徴となっています。

【茨城県の風事情】ポイント・まとめ

・気象庁の観測データを参考にする限り、茨城県は特段風の強い地域とは言えません。
・印象的な「風」としては冬の冷たく乾燥した季節風が挙げられますが、単に風速が増す時期として見た場合、3~4月頃の春が最も風が出やすい時期となっています。
・台風による影響を受け「暴風」が吹いたケースもありますが、気象庁の観測データを参考にする限り、東京周辺ほどの暴風は観測されにくい傾向が見られます。
・県内では「筑波山」山頂付近は風が強いほか、太平洋に直接面した地域も風が吹きやすいと考えられます。但し、県内の観測地点で海に近い地点はあっても「海に直接面した(隣接する)」地点はありません。