沖縄の夏は、その「暑さ」という意味で見た場合、確かに「非常に蒸し暑い」一方で「猛暑」がほぼ見られない地域として知られ、単に「昼間の暑さ」の数字だけを見ると、それほど暑い地域とは言えません。
一方で、沖縄の夏は、1日の気温差が小さい傾向があるため、朝晩の気温が高く「熱帯夜」が多い地域でもあります。
こちらでは、沖縄県内における「熱帯夜」の状況について、気象庁のデータなどを参考にしながら考えていきたいと思います。
どうして熱帯夜が多いのか?
沖縄県は全国的に見ても極端に「熱帯夜」が多い地域となっています。
「熱帯夜」と呼ばれる状況は、「最低気温25度以上」となる場合をいうもので、要は朝晩の気温が下がりにくい結果として生じるものです。
沖縄県で、朝晩の気温が下がりにくい要因としては、例えば以下のような点が挙げられます。
海に囲まれている | ・流れ込む空気は「海から」の空気(海からの風が常に入り込む) ・海上の温度は変化が少ないため、「猛暑」が減る一方朝晩の気温は高くなる(1日の気温差が小さい) |
内陸部がない | ・海からの気流が入りにくい場所が存在せず、全ての地域が海から近い ・風が吹いているため、冷やされて熱が逃げるという現象が起きにくい |
海水温が高い | ・沖縄周辺の海水温は、場合によっては30℃以上となる環境 ・常に温かい海水の上にある空気は、1日を通して変化が少なく高い温度を保つ |
上記の図は、特に海水温が高かった2020年8月の状況ですが、沖縄県一帯が海面水温30度以上の領域に覆われており、沖縄本島周辺には31℃以上の領域も見られます。
これほどに海水温が高ければ、海の上から吹いて来る風は、夜間であっても30℃に近いような状況となりますので、結果として最低気温は非常に高くなります。
なお、ここまで高い海水温でない場合でも、海水温が28℃くらいあれば、各地で熱帯夜となる状況には十分な温度と言えますので、沖縄県では6~9月にかけては多くの日で熱帯夜を観測する形になっています。
沖縄県内各地の「熱帯夜日数」は?
那覇 | 名護 | 久米島 | 宮古島 | 石垣島 | 西表島 | 与那国島 | 南大東 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6月の熱帯夜日数 | 16.8 | 15.9 | 16.3 | 20.8 | 24.3 | 21.2 | 22.0 | 16.1 |
7月の熱帯夜日数 | 29.2 | 29.0 | 28.3 | 28.8 | 30.2 | 28.0 | 28.8 | 23.1 |
8月の熱帯夜日数 | 29.3 | 27.8 | 27.2 | 28.3 | 30.1 | 26.6 | 27.9 | 23.2 |
9月の熱帯夜日数 | 22.6 | 18.3 | 18.8 | 21.9 | 22.9 | 18.3 | 18.8 | 17.4 |
年間熱帯夜日数 | 107.3 | 96.0 | 98.2 | 112.0 | 128.6 | 106.3 | 111.9 | 88.5 |
東京 | 名古屋 | 大阪 | 神戸 | 福岡 | 鹿児島 | |
---|---|---|---|---|---|---|
年間熱帯夜日数 | 17.8 | 25.6 | 41.5 | 46.8 | 38.7 | 55.8 |
沖縄県内の主要な都市・島における「熱帯夜」の日数を、気象庁の平年データから見て行くと、上記のような形となっています。
熱帯夜の日数は、概ね各地で「100日前後」であり、特に多い石垣島では、平均すれば「1年の3分の1以上」が熱帯夜となっており、小笠原諸島の南鳥島という例外を除けば、全国で最も多い環境と言えます。
各地との比較でも、東京や名古屋とは比べ物にならない日数で、比較的多い大阪・神戸・福岡・鹿児島など西日本の温暖な都市と比べても、沖縄は倍程度・倍以上の数字であり、その差は明らかです。
沖縄で熱帯夜がこれほど多い状況となっていることは、熱帯夜が「真夏」だけの現象ではなく、それ以外の期間にも多く観測されることも大きな要因です。
上記の表からも分かる通り、沖縄県内各地では6月や9月でも半数以上の日で熱帯夜となる傾向が見られます。また、日数が少ないため表示していませんが、5月・10月にも熱帯夜が見られ、まれな現象としては4月・11月に熱帯夜が観測されたケースもあるため、国内の他地域とは状況は全く異なります。
沖縄で「熱帯夜になりにくい場所」はある?
熱帯夜が当たり前のように続く沖縄県内。主要な都市や島の中心部では、先述の通り「年間100日前後」の熱帯夜が当たり前の環境ですが、それ以外の場所も含めた場合、熱帯夜になりにくい場所は存在するのでしょうか?
奥 | 渡嘉敷 | 糸数 | |
---|---|---|---|
年間熱帯夜日数 | 33.9 | 57.3 | 52.9 |
標高 | 232m | 220m | 186m |
沖縄県内の気象庁の観測地点で、熱帯夜の日数が本州で特に多い場所を下回るような地点は、上記の3地点のみとなります。
いずれも標高が200m前後の環境であり、基本的にはただ単純に「高い場所」にあるため、気温もその分低くなるという構図が見られ、結果として熱帯夜の日数が少なくなっています。
県内では標高が200m前後の地域で人が住んでいるようなケースは極めてまれですが、標高が高ければ気温も低いという構図に従って考えれば、一般論として南城市内の丘陵地、中城村~西原町~那覇市などにかけての丘陵地には標高が100~150m程度の場所もありますので、海沿いの低い土地と比べれば、やや気温が低くなりやすいということが考えられます。
ポイント・まとめ
・沖縄県は猛暑にはなりにくい一方、最低気温25℃以上の「熱帯夜」が極めて多い地域です。
・熱帯夜となる要因は、海からの風が常に入りやすく1日の気温差が小さい点、海からの風を避ける内陸部がない点、海水温が非常に高い点などが挙げられます。
・県内の主要地点では、年間の熱帯夜日数が100日前後に達し、6月や9月でも熱帯夜が多い状況です。
・県内で熱帯夜が比較的少ない地点は、標高が高めの場所に限られます。