沖縄では「スコール」が降る?夏のにわか雨・雷・夕立の傾向を解説

自然・気候

沖縄県の夏と言えば、よく晴れて蒸し暑く、マリンスポーツ・レジャーにはもってこいの時期とされる一方、「スコール」が降る・「夕立」が多いから注意が必要。と指摘される方もおられます。

こちらでは、沖縄における夏の「スコール」と呼ばれうる現象、要するに「にわか雨(雷雨・夕立)」の状況について、過去の一般的・全体的な傾向を解説していきます(一部地域における局地的な天候を解説するものではありません)。

沖縄は雷が多い場所なのか?

沖縄県は「亜熱帯・熱帯」に含まれ、イメージとしては「東南アジア」に似通った気候を想像される方も多い地域です。そのため、「夏=スコール」という印象を持たれる方も少なくありませんが、実際の状況はどうなっているのでしょうか。

全ての事例が「にわか雨」によるものではありませんが、「雷の観測日数」のデータによって、突発的な雷雨が降る大まかな頻度(過去のデータに基づく)を把握することが可能です。

那覇宮古島石垣島与那国島南大東福岡大阪東京宇都宮
夏の雷日数9.710.512.67.06.313.28.56.916.0
気象庁の平年データ(2020年まで)による
雷日数は平年データの6・7・8月の数字を単純に足し合わせて算出
沖縄県内の日数については、那覇以外は「参考値」であり正式な平年データではない点に注意

このように見ると、沖縄県内の「雷日数」は地域差がある上、特段他の地域と比べ多いとまでは言えないことが分かります。

数字は「参考値」が含まれるためそのまま解釈することは出来ませんが、特に太平洋高気圧の影響を強く受けやすい大東島地方は天気が安定しやすく、雷の頻度は比較的少なくなっていることが分かります。また、最も多い石垣島であっても、宇都宮・福岡といった沖縄以外で雷が多い地域と比べた場合、その日数はやや少なくなっています。

そもそも、雷日数というものは、前線に伴う発達した雨雲で「雷雨」となる場合、台風本体の発達した雨雲で「雷雨」となる場合なども含め、とにかく雷を観測すればカウントされるものです。

その意味では、沖縄の夏は毎日激しい雷雨=スコールが降るというのはかなり無理のある解釈となります。確かにそういった気象現象が生じることもありますが、それが「雷銀座」と呼ばれる北関東よりも多い傾向という訳ではなく、平均的には夏の間に概ね数日~10日前後そういったケースが見られる状況となります。

なお、特にマリンスポーツなどの場合、雷雨は非常に恐ろしいものであり、発生する可能性がある場合には、速やかな退避が望まれることは言うまでもありません。

本州の「夕立」とは仕組みが違う?

沖縄で夏に降る「突発的な雨=にわか雨」の事例を見て行くと、その構図は本州などで夏によく見られる「夕立」とは発生の仕組みが異なることが分かります。

どのようなケースでも、にわか雨・雷雨をもたらす「積乱雲」が発生するには、「暖かく湿った空気」が必要で、例えば関東平野の北部・中国山地・紀伊山地などで夏によく見られる「夕立」は、暖かく湿った空気が山の斜面の影響で急激な「上昇気流」を発生させることで、積乱雲を発生させるものとなっています。

一方で、沖縄の場合は海に囲まれた地形であり、強い上昇気流を発生させるほどの急峻な「山地」は存在しません。

但し、沖縄の場合夏になると「太平洋高気圧」を周りこむような形で、海から直接水蒸気の供給を受けた「暖かく湿った空気」が次々に流れ込みます。海水温が非常に高い環境では、斜面などがなくても次々に海上で上昇気流が生じ、結果としてにわか雨・雷雨をもたらす雲が点在するような形で発生し、風に乗って沖縄一帯へ流れ込む形となります。

出典:地理院地図(一部作図の上利用)

海上で発生した雲は、しっかり雷雨をもたらす程度に発達したものもあれば、発達途中で少しだけ雨を降らせるもの、雲が掛かっても雨にはならないもの、すぐに消えてしまうものなど様々です。また、降る時間は「午後・夕方」に留まらず、1日の様々な時間帯で見られることも大きな特徴です。

沖縄の気象データを見ると、「雷」の観測日数に比べ、雷を伴わない単なる「にわか雨」の日数はかなり多くなっています。また、雨量と呼べないくらいの一瞬の雨を含めれば、時期によっては毎日のように観測されており、「スコール」と呼ぶようなものではないものの、夏の「にわか雨」自体は本州と比べても多い地域といえるでしょう。

なお、湿った気流の流れ込みで発生する雲は、風向きの状況・気圧の谷の存在などによって、時に大きな塊となってまとまる場合があり、条件次第では沖縄付近で「熱帯低気圧」が発生する場合もあります。こうなると、天気は単なる「にわか雨」ではなく、長時間続く雨、場合によっては大雨・豪雨となるため、一層の注意警戒が必要です。

7月よりは8月ににわか雨が多い?

沖縄県における過去の夏の雷雨・にわか雨の状況を非常にざっくりと見て行くと、傾向としては7月よりも8月に少し多い状況が見て取れます。

降水量1.0mm以上の日数那覇名護久米島宮古島石垣島西表島与那国島南大東
7月9.410.47.99.38.69.18.48.1
8月12.312.49.812.211.612.010.410.5
気象庁の平年データ(2020年まで)による
上記の日数は「にわか雨」だけではなく台風・前線などによる雨も含む点に注意

7月の場合、梅雨明け後すぐの環境で、太平洋高気圧が張り出す影響などで南~南西の風が吹き、晴れ渡りやすい傾向が見られますが、8月に入ると太平洋高気圧の縁を周りこむ形で吹き込む南東からの風が増え、湿った空気が入りやすくなります。

但し、上記の数字で見ても分かる通り、違いがあるとは言っても倍になるといった訳ではなく、その差は極端なものではありません。7月であってもにわか雨・雷雨となるケースは十分に考えられる点は留意が必要です。

ポイント・まとめ

・沖縄の夏は「よく晴れる」一方、「スコール」のような雨が降るというイメージを持つ方も多くなっていますが、必ず毎日そういった現象が起こる訳ではありません。
・気象データから見た場合、「雷」となる日も見られますが、各地との比較で沖縄だけが突出して多いとまでは言えません。また、県内では石垣島などで多く、大東島地方でやや少ないなど差が見られます。
・沖縄の場合、本州で降るような「夕立」とは構図が異なり、湿った空気が海上で直接雲を発生させるため「にわか雨」自体の頻度は多く雨の強さ、雷の有無、降る時間帯などは様々です。
・頻度としては7月よりも8月にわか雨、雷雨がやや多い傾向が見られます。